トランプ前大統領が暗殺未遂事件の際に「ファイト(戦え)!」と不屈の姿勢を示したのを讃える歌が作曲されるや、オンラインの音楽チャートでトップヒットとなり、終盤の大統領選挙への影響が注目されている。
MVにはトランプ氏暗殺未遂事件も…
その名も「ファイター」という歌は、ロサンゼルスを中心に映画やテレビ関係の作曲で知られるシンガーソング・ライターのジョン・カーン氏が9月16日にリリースしたが、たちまち人気を集め、経済誌フォーブスの電子版20日によると、オンラインの楽曲配布サイト「iTunes(アイチューンズ)」のヒットチャートで1位を記録してしまった。
ちなみに歌詞は次の通り。
倒れた ノックアウトだ 口の中で血を味わいながら微笑んでいる
アザができた 骨も折れた
でも分からないだろうが、オレはこのリングの上で一人じゃない
オレはファイターだ オレは逃げも隠れもしない
生まれつき、なんでも命がけでやってきているのだ
正すべきことを正すために まだタオルを投げるな 最後の賭けを諦めるな
疲れた時こそ、オレはもっと強く打って出るのだ
オレはまた立ち上がる それがオレのやり方だ
ここまで戦ってきたのは、負けるためじゃない
だから撃ってみな それしかできないのか?
(※一部を抜粋)
スローなカントリーロック調のメロディで、そのミュージックビデオはトランプ前大統領の活動や支持者たちとの触れ合いなどを見せていき、最後は7月13日のペンシルベニア州バトラー市での集会で、狙撃されたトランプ前大統領がシークレットサービスの係官たちに抱えられながらも血だらけの顔で拳を振り上げ「ファイト!」と叫んでいる映像で盛り上げている。それがモノクロなので余計に迫力があるように思える。
What other candidate could withstand what @realDonaldTrump has? My latest release "Fighter" is for him and everyone who fights alongside him. pic.twitter.com/9KuQzZV86j
— Jon Kahn (@mrjondavid) September 18, 2024
作詞作曲をしたカーン氏は、X(旧ツイッター)に楽曲と次のようなメッセージをアップしてその意図を述べている。
「他にどの候補者がドナルド・トランプのように耐え抜くことができるだろうか? 私の最新リリース『ファイター』は彼と、彼と共に戦うすべての人たちのためのものなのだ」
選挙戦終盤の情勢に影響は?
フォーブスの記事によれば、カーン氏は音楽の著作の他に、保守派のニュースサイト「ブライトバート」にも寄稿しており、同サイトに「トランプが自分や家族に向けられた攻撃にどうやって毎日立ち向かっているのか、いつも不思議に思っていた」と言い、「トランプが2回の弾劾、ソーシャルメディアからの追放、全ての民主党メディアが協力して彼を破壊しようとする戦い、前例のない法的攻撃、そして2回の暗殺未遂を乗り越えてきたことについて、この曲を書いた」と語っている。
この記事の画像(3枚)つまり、前大統領のファンが作った応援歌のようなものなのだが、そのヒットにトランプ陣営も驚きを隠せず、前大統領も自身のSNSでカーン氏にこう謝意を述べている。
「なんと予期せぬ名誉か!私のことを歌ったこの歌は、あらゆるチャートで第1位を占めている」
ここへ来て、ブライトバートをはじめFOXニュースなど保守派のマスコミも総出でこの歌をめぐるニュースを伝え始めたので、この楽曲はしばらくはチャートの上位を占めることになるだろうが、その「しばらく」が米国の大統領選挙では最も大事な期間なのだ。
その大事な期間を前にしてトランプ前大統領は、テレビ討論の不出来もあってカマラ・ハリス副大統領の後塵を拝していると言われる。そこでトランプ陣営がこの歌の集票力に期待することは十分考えられることだ。
前回の暗殺未遂事件の後、トランプ前大統領の支持率は2%アップした(CBSニュース)。前大統領が血みどろの顔で「ファイト!」と叫ぶ映像が米国人の胸を打ったと言われた。今回の歌はその光景を彷彿させるもので、選挙戦に及ぼす影響力があることは十分考えられる。
果たして「オレはまた立ち上がる」のか?
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】