暑さ寒さも彼岸まで?

「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざがある。通常、彼岸(春分・秋分の日を中心に7日間)を過ぎると、夏の暑さが和らぎ、涼しさが感じられるようになると言われている。

2024年の秋の彼岸入りは9月19日だが、特に2024年は9月に入っても日本各地で気温が高く、真夏のような暑さが続いている。特に、日中は35度を超える日が多く、夜も蒸し暑さが残る日が少なくない。

真夏のような残暑続く今年の9月
真夏のような残暑続く今年の9月
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ただ、3連休を境に「彼岸を過ぎれば涼しくなる」ということわざ通りになりそうだ。その役割を果たしてくれるのが「秋雨前線」だ。

夏と秋を分ける「秋雨前線」

夏から秋へと季節が移ろう際に、天気図に姿を現してくるのが「秋雨前線」である。秋雨前線とは、主に9月から10月にかけて、日本付近に停滞する前線で、夏から秋へと空気の入れ替えをしてくれる。

この夏と秋を分ける前線は、北から冷たい空気が南下し、南から暖かい空気が北上し、ぶつかることで作られる。特に、東日本や西日本ではこの秋雨前線が停滞することによって長雨となる。

秋雨前線の停滞で長雨となる恐れも
秋雨前線の停滞で長雨となる恐れも

日本付近は、夏から太平洋気団の蒸し暑い空気に包まれていたが、秋雨をきっかけに、比較的カラッとして涼しい秋の大陸気団に次第に覆われるようになってくる。

9月は依然として暑いものの、天気図には秋雨前線が現れており、3連休の天気にも大きな影響を及ぼしそうだ。

3連休は「秋雨前線」で天気や気温に変化

9月21日(土)〜23日(月・振替休日)の3連休は、秋雨前線の影響で、ぐずついた天気になる見込み。日本の南の海上からの暖かく湿った空気の影響で、秋雨前線の活動が活発になり、広い範囲で雨が降りそうだ。

特に22日(日・秋分の日)は西日本や東日本を中心に、局地的に強い雨が降り、大雨の可能性もある。最新の気象情報をこまめに確認しよう。

3連休の行楽には気象情報の確認を
3連休の行楽には気象情報の確認を

また、この雨に伴って気温にも変化が現れそうだ。西日本や東日本を中心に広い範囲で猛暑日が続いていたが、最高気温が30度に届かないところも出てくる見込み。蒸し暑さは残るものの、これまでの極端な暑さが和らぎそうだ。

特に朝晩を中心に涼しく感じることもありそうで、気温差による体調管理に気をつけたい。

秋雨前線の影響は3連休明けも続きそうだ。すっきりしない天気の日が多くなりそうで、雨の降り方にも注意が必要になってくる。

秋雨前線による雨は、短時間で強く降ることがあり、予想以上の降水量を記録することもある。特に、都市部では排水設備が一時的に機能しない場合があり、道路の冠水や交通機関の乱れなどが発生する可能性も考えられる。また、山間部や河川の近くでは、土砂崩れや河川の氾濫に対する警戒が必要だ。

秋雨前線と梅雨前線の違い

秋雨前線と梅雨前線は似ているが、はっきりとした違いがある。梅雨前線は主に6月から7月にかけて発生し、日本全体に広範囲で長雨をもたらす。梅雨前線は、前線の北側にある春の空気と、南からの暖かく湿った夏の空気がぶつかることで形成され、蒸し暑い気候が続く。

西日本で大雨になりやすい梅雨前線
西日本で大雨になりやすい梅雨前線

梅雨の時期は南西の季節風と太平洋高気圧の縁を回る暖湿気が入る西日本を中心に大雨になりやすい。そして、夏が近づくにつれて太平洋高気圧の勢力が強まると、梅雨前線は南側の暖かな空気に押されて次第に北上するケースが目立つ。

一方で、秋雨前線は9月から10月にかけて、太平洋高気圧が南へ後退し、北からの乾いた空気を持つ高気圧が勢力を広げていくときに発生。秋雨の時期は北東からの冷涼な空気が入る東日本や北日本を中心に雨が降りやすく、特に東日本を中心に雨量が多くなる傾向がある。

秋雨前線がもたらす雨は、梅雨とは異なり、雨が降ることで冷たい空気が入り、気温が少し下がるという流れを繰り返し、秋が深まっていく。

東日本で雨量が多くなる秋雨前線
東日本で雨量が多くなる秋雨前線

秋雨の時期は雨が降ることで、やや涼しさを感じることが多くなってきそうだ。また、秋の訪れを感じさせてくれる秋雨前線は、梅雨前線よりも雨の期間が短いが、局地的に強い雨が降ることがあり、油断はできない。

南の海上に台風があると、台風からの湿った空気が補給され、長時間にわたって雨が降る。さらに、台風が北上してくることで秋雨前線の活動が活発になり、集中豪雨となるおそれもあるため、秋雨と台風シーズンである9月と10月は大雨に気をつけよう。

この先の気温傾向は?

最新の1か月予報によると(9月19日気象庁発表)、9月下旬から10月中旬にかけて、日本付近は暖かい空気に覆われやすいため、全国的に気温が高くなる予想。

また、東日本や西日本は9月下旬から10月中旬にかけて、秋雨前線の影響を受けやすい時期がありそうだ。天気や気温が変わりやすい時期のため、最新の気象情報を確認したい。

秋雨前線が日本付近にのび秋の様相に
秋雨前線が日本付近にのび秋の様相に

2024年の秋は例年とは異なり、彼岸入りしても暑さが続いている。しかし、秋雨前線が日本付近にのびてくるなど、天気図の上では秋の様相を示してきている。

その秋雨前線は、前線に向かって湿った空気が入ることをきっかけに活動が活発化すると、特に東日本を中心に強い雨が降り、気温の変化が大きくなる可能性もある。大雨による災害にも十分な注意が必要だ。

【執筆:日本気象協会】

日本気象協会
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