日本のコーヒー消費量は世界4位だが、気象の関係から国内でのコーヒー栽培は沖縄県や鹿児島県など限られた地域だけとなっている。こうした中、コーヒー栽培で山間地の活性化を目指す試みが静岡市で動き出した。温泉の熱を利用するという。

地域活性化へ向けた挑戦

静岡市梅ケ島地区
静岡市梅ケ島地区
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JR静岡駅から北に車で約1時間半。ここは静岡市の山間部、通称・オクシズと言われる梅ケ島地区だ。

標高約1000mのこの地区でコーヒーの栽培に挑戦するのは、6年前から梅ヶ島で紅茶づくりを行っている“梅ヶ島くらぶ”のメンバーたち。

「お茶やワサビに次ぐ新たなブランド品を生み出し地域の活性化を図るのが狙い」と話す。

梅ヶ島くらぶ・辻 美陽子 代表:
梅ケ島には温泉だってあるし素敵な民宿や旅館もいっぱいある。そこにいろいろな人たちが楽しい体験や美味しい体験をしながら来てくれて、移住者が増えるような展開になってほしくてやってきましたが、扉が少し開いたかなという気がしてワクワクしています

コーヒーの栽培はブラジルやコロンビアなど赤道に近い熱帯・亜熱帯の地域が中心だ。

栽培には適度な雨量と日照時間、15℃~25℃の安定した気温、それに昼と夜の寒暖差などの条件がそろわないと難しいという。

温泉熱で最適な栽培条件を作り出す

梅ヶ島でのコーヒー栽培には静岡大学農学部が技術指導で協力していて、松本和浩 教授は「簡単にはいかないと思います。しかし、いろいろな資材を使って環境をコントロールすることで最適な栽培条件を作りだすことができる」と述べる。

松本教授によれば、梅ヶ島は日照時間や昼と夜の寒暖差に問題はないものの「真冬の厳しい寒さが課題」とのことだ。

梅ケ島温泉(静岡市葵区)
梅ケ島温泉(静岡市葵区)

そこで、その寒さ対策として利用するのが梅ケ島温泉の熱だ。

ミニハウスの中のコーヒーについて説明する土屋宏斗さん
ミニハウスの中のコーヒーについて説明する土屋宏斗さん

“梅ヶ島くらぶ”のコーヒー開発担当で、静岡大学の大学院生・土屋宏斗さんは「ここにコーヒーの実ができています。これが11月か12月くらいには赤くなってコーヒーチェリーになる」と説明してくれた。

2024年1月。ミニハウスに温泉の熱を引き込み、高さ1.5mほどのコーヒーの木の苗を育てたところ、中の保温状態や苗の成長を確認することができたという。

コーヒー栽培用のハウス
コーヒー栽培用のハウス

この越冬実験の成功をもとに、今後、近くの温泉旅館の敷地を借りて専用の栽培ハウスを建設し、使い終わった温泉水を利用したコーヒーの木の栽培を本格的に始める予定となっている。

観光体験やお土産にも

土屋宏斗さん
土屋宏斗さん

コーヒーのブランド名は、梅ケ島の地名から「プラムアイランドコーヒー」に決まり、これからの展開に夢も膨らんでいる。

梅ヶ島くらぶ・土屋宏斗さん
皆さんに来てもらって、この場で収穫して自分たちで焙煎して飲む観光体験に使っていきたい。また、コーヒー自体を加工して、新しい梅ヶ島の商品やお土産になったらいいなと

コーヒーの実(静岡市葵区梅ケ島)
コーヒーの実(静岡市葵区梅ケ島)

農家の高齢化や後継者不足で茶園や畑の耕作放棄地が増える中、オクシズの新たなブランドが生まれるのか。

今後の取り組みと成果が注目される。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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永井学
永井学

テレビ静岡 特別解説委員
1986年テレビ静岡入社
1986年~1996年(主に静岡市政担当や沼津支社駐在)
1996年~2001年(ニュースデスク)
2001年~2005年(FNNロンドン特派員)
2005年~2008年(ニュース編集長)
2008年~2009年(報道部長)
2014年~2023年(報道制作局長)
2023年7月~  (特別解説委員)
海洋調査船「ヘリオス」沈没事故や伊東市沖海底噴火などの長期取材に従事したほか、地方選挙や国政選挙の取材に長らく関わる。