高知で、8月10日と11日に「よさこい祭り」の本番が開催された。宮崎・日向灘の地震に伴い、初の南海トラフ地震臨時情報が2日前に発表された中でも対策を講じながら、約1万7000人の踊り子が高知のおまちを舞台に乱舞した。

避難所や防災の確認 安全第一で開催

2024年で71回目の「よさこい祭り」。普段、高知県民が普通に生活している高知市の街が踊りのステージに様変わりする。17の競演場・演舞場で、チームそれぞれが個性を輝かせた。

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コロナ禍の中止を経て2023年にやっと通常開催に戻り、2024年は参加人数も増えて晴れ晴れと踊れるはずだったが、8月8日に、気象庁から初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された。

“臨時情報”を受け、8月9日の前夜祭当日によさこい祭振興会の臨時会議が開かれ、避難所の確認など防災の対策をとった上で、よさこい祭りは予定通り開催された。

追手筋本部競演場では、「まずは揺れからご自身の身を守る行動をとってください。慌てると落下物によるけがや、群衆事故が起こる可能性があります」などのアナウンスが流れていた。

競演場スタッフは、「今、僕らがここにいるので地震発生したら、オーテピアか追手前高校に安全確保で避難をお願いします」と、観客に避難所を説明するなどの対応を行った。

岡山から来た観客は、「万が一があってもいいように、携帯トイレとかそういうのも全部準備して来てます」と話した。

学校法人やまもも学園の芸術学園幼稚園チームの子どもたちは「がんばーりまーす!」と元気いっぱいの様子。

そんな中、幼稚園の先生は「避難場所に誘導してもらえるそうなので、何かあった時には自分たちと保護者と連携をとりながら、子どもの安全第一に動きたいと思います」と話し、地震が起こった場合の心構えをしていた。

184チーム約1万7000人が舞い踊る

踊り子もスタッフも観客も対策をして、ついに本番1日目を迎えた。参加を取りやめたチームもあったが、184チーム約1万7000人の踊り子が真夏の土佐路で乱舞した。

10日は、地震だけでなく暑さ対策も行われた。高知市の最高気温は35.9度で、天気は快晴。旭演舞場の給水所ではお茶が配られ、踊り子たちが気持ちよさそうに飲む場面も見られた。

赤い衣装をまとった「り組(高知県理容生活衛生同業組合)」や、「南溟寮」のコスプレ一行など、個性豊かな踊り子たちが観客を楽しませる。
太陽が照りつける中、踊り子たちは笑顔を絶やさなかった。

丸ノ内緑地ではミストが設置されていて、子どもたちが涼む様子もあった。高知市にある「オーテピア」は、クーリングシェルターになっていて暑いよさこい祭りの中、たくさんの人が涼みながら休憩していた。

高知にゆかりある芸能人らも盛り上げ

そんな暑さの中、「よさこい親善大使」の高知県出身の演歌歌手・三山ひろしさんは、ねじりはちまきを巻いて、高知城演舞場で「特捜戦隊デカレンジャー」の2人と共演。現高知市長・桑名龍吾氏と前高知市長・岡崎誠也氏も、笑顔で仲良く演舞の様子を観覧した。

「特捜戦隊デカレンジャー」と共演した三山さんは、「かっこいいですね。隣で暑そうでした。やっぱりスーツがね」と話した。

「特捜戦隊デカレンジャー」は、上町演舞場で観客に笑顔で手を振るなど、ヒーローは暑くても大活躍!

デカブレイク・吉田友一さんは「本当に盛り上がっていて、やっぱりこれがないと高知じゃない。よさこい祭り最高です」と笑顔で話し、デカピンク・菊地美香さんは高知に移住して初めてよさこいを踊るということで、「皆さんと一緒に盛り上げていきまーす!」と楽しんでいる様子だった。

暑い日にはやっぱりビール!ということで、高知市中央公園北口の演舞場入り口で生ビール販売をしていたのは、高知県出身の元プロ野球選手・藤川球児さんと元阪神タイガースで高知ファイティングドッグスのラファエル・ドリス投手。

藤川さんは「今後、50年100年と(よさこい祭りを)つないでいかなきゃいけないので。そこには外国の方も来て文化を知って続けてくれるんで、そこも受け入れてくれる高知の良さ」と話し、ドリス選手と「レッツゴーよさこい!がんばって」と声をあわせ、よさこい祭りを盛り上げていた。

受賞常連や5年ぶりに復活のチームも

「十人十彩」や「旭食品」など、各会場で受賞常連チームが続々登場し、観客も踊りから目が離せない。

コロナ禍があけ2024年、復活したチームもいた。

梅ノ辻競演場では、5年ぶりに登場した「梅乃連(梅ノ辻町内会踊り子連)」がトップバッターを務めた。よさこい祭り唯一の“町内会チーム”だ。

同じく5年ぶりの出場となった「高知高専 学生会」。コロナ禍を経て再び立ち上がった高専生たちの2024年のテーマは「再起渙発(かんぱつ)」。

高知高専学生会の副代表は、「5年ぶりに復活したんですけど高知高専、もう楽しすぎて。私、来年(代表を)引き継ぐんですけど、頑張ります!」と興奮した様子で話した。

日が落ちると踊り子のボルテージは最高潮に。
太陽が照りつける時間のよさこいもいいが、夜の追手筋には光る高知城があり、暗くなっても「よさこい祭り」を楽しむことができる。

5年ぶりに復活した「ちかもり」の踊り子の多くは、医療従事者や看護学生だ。「ちかもり」の踊り子の女性は「みんな医療従事者なので自粛してるんですけど、そんな中、けっこう頑張って5年ぶりなので、みんなはじけてます」と演舞を楽しんだ様子だった。

競演場のスタッフもよさこいを楽しみ、お城下がダンスフロアになった夜を迎えて1日目が終わった。

個性豊かな衣装や“バリアフリー”

2日目の11日も“よさこい日和”で、大人も子ども楽しむ様子が見られた。
2年目を迎えた高知大学演舞場では、2024年もキャンパス内は踊り子たちの熱気であふれていた。

兵庫から来た観客は「楽しみにしてたかいがあって、みんなキラキラしててこっちまで元気になります。地面が熱いです。でも負けないくらいみなさんの熱気が伝わってきます」と話した。

「京町・新京橋『ゑびすしばてん連』」は、トリコロールカラーにエッフェル塔があしらわれた衣装で、熱気をパリまで届ける。高知市の最高気温が34.2度の中、「いなん」や「高知信用金庫」など多くのチームが炎天下で乱舞した。

2024年は高知県内12、県外9のあわせて21チームがよさこいに初めて参加した。初出場の「千紫万紅 with 高知けいば」は、騎手の衣装を着た踊り子や馬(着ぐるみ)が駆けつけた。

同じく初出場の「空跳~くどう~」は、カリスマ振付師による“華の乱”を舞い、「四万十市踊り子隊」は、障害者も健常者も“よさこい”を踊った。

その一方で、16回出場の「茶蔵 -chakura-」は、高齢化などの理由から2024年で“おひらき”になり、最後の演舞を行った。

10回以上出場しているチームはほかにもいて、嶺北地域で最後のチームである「おおとよ」は17回出場。23回出場した「てんてこ舞」は、よさこいを“バリアフリーに”ということで、車椅子の利用者もよさこいを楽しんだ。

来られなかった人の思いを胸に乱舞

そんな中、2024年は新たな取り組みが始まった。

はりまや橋競演場の受付の隣には給水所が設けられていて、岡豊高校のサッカー部員55人が運営ボランティアとして参加し、7つの競演場・演舞場で踊り子を激励した。

踊り子の女性は「優しく声掛けしてくれて、パワーが出るのでとてもうれしかったです」と高校生からパワーをもらった様子。岡豊高校サッカー部・徳弘悠人主将は「自分たちが盛り上げる勢いでこれからもやっていきます」と話した。

東京から参加した「中央大学 一期一笑(いちごいちえ)」は思わぬ事態に見舞われた。よさこい祭り前日に発表された南海トラフ地震臨時情報を受けて、出発直前に踊り子の約半数が高知に来るのを取りやめ、本来115人だったはずが66人になった。

山崎さんは「涙のお別れで。バスで来たんですけど、みんな泣いてて名前を鳴子に書いてるんですけど、出られなかった子たちの鳴子も持ってきて踊ってあげたりしてます」と話し、「来られなかった子の気持ちも背負って、みんなで楽しく踊り切って無事に帰ることが大事かなって思っています」と、来られなかった人への思いも忘れない。

臨時情報を受けて「よんでんグループ」など、4チームが参加を取り消し。高知市内でも宿泊施設でキャンセルが相次いだ。

「よさこい祭り」のフィナーレには、タレント・島崎和歌子さんや土佐町出身の俳優・和田正人さんなど、高知県出身の有名人も駆けつけ、ボルテージは最高潮に。

最後は、沖縄出身バンド「ジャアバーボンズ」が総踊りを盛り上げ、約1万7000人の踊り子が高知のお城下を埋め尽くし、第71回「よさこい祭り」が幕を閉じた。

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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