暑い。暑すぎる。9月後半だというのに、残暑というよりむしろ真夏のような気温が続いている。9月16日、広島・安芸太田町加計では9月の観測史上初めて38℃を超え、県内各地で最も遅い猛暑日の記録を更新した。
最も遅い猛暑日、2年前の記録更新
連休中の広島県内は強い日差しが照りつける真夏並みの気候で、猛暑日の記録更新が続出。
この記事の画像(13枚)9月16日、県内各地の最高気温は安芸太田町加計で38.5℃、広島市中区で36.6℃を観測するなど、県内8つの観測地点で35℃を超える猛暑日になった。県内全体としては2022年9月15日に尾道市生口島で観測された35.0℃が最も遅い猛暑日だったが、その記録を更新。安芸太田町加計は9月の観測史上初めて38℃を超え、全国で最も気温が高い1日だった。
広島市中区の広場で子どもと水遊びをしていた人は「暑いです…。本当にくたくたです」と苦笑い。
また、家族でバーベキューを楽しんでいた人は「連休最終日なので子どもを遊ばせようと思って。ずっと夏みたいですね。しんどいです」と話していた。
「クーラーを買う日が来るとは…」
この先も気温の高い日が続く予想で、秋を感じられる日はまだまだ先になりそうだ。県内では、避暑地として知られる山あいでも生活に変化が起きている。
島根県との県境に位置する町・北広島町八幡地区。標高約800メートル、県内屈指の豪雪地帯でもある。この地で民宿「あるぺん屋」を営む杉原幸成さんは「涼しい高原で知られているところだし、この集落でエアコンがある家はほとんどない」と話す。約30年に渡って営業してきた民宿。夏でもエアコンいらずの生活が続いていたが、2024年の記録的な猛暑によってこれまでの暮らしが変わった。
「今年は特に暑い気がする。これでは暑さに耐えられない可能性があるということで、今年の夏からスポットクーラーだけ入れてみた。今までにないことだね」と2024年8月、ついにクーラーを導入。
宿泊客の体調を気遣い、スポットクーラーを各部屋に設置した。杉原さんは「クーラーを買う日が来るとは20~30年前は想像もしなかった」と言う。
10月にかけても高温傾向
実は、八幡地区のアメダスの観測項目は「積雪」と「降水量」の2つのみ。
気象庁のサイトで確認しても八幡の気温は表示がない。猛暑によってどのような変化が生じたのか気になるところだが、地域の気温に関する公式記録はなく、地元の人は自分たちで経過を観察してきた。
杉原さんは民宿の室内に置かれた温度計を手に取り、「この温度計が30℃を超えることはほとんどなかった。自分の体のこともあるが、いろんなお客さんが出入りするから温度管理はしておかないとね」と、気温の変化を実感している。
これまでの常識が通用しない暑さ。連日の暑さをもたらしている原因は、日本の東西からそれぞれ広がる「太平洋高気圧」と「チベット高気圧」。本来なら秋に向かって勢力を弱めていくが、2024年は勢力が維持され、日本付近から退く動きが鈍くなる見込みだ。
これらの高気圧が居座ることで、影響を受けるのが「偏西風」。張り出しを強める高気圧によって、偏西風が北に押し上げられる。偏西風は北側の冷たい空気と南側の暖かい空気の間を流れるので、偏西風の南側にある日本は暖かい空気に覆われて、10月にかけても平年より高温傾向が予想される。
残暑対策にクーリングシェルター
このような状況のもと、真夏を過ぎた今も熱中症対策は続いている。
広島市中区のアスト薬局を訪れた。ここは広島市が指定したクーリングシェルター、いわゆる「暑さからの避難場所」だ。広島市薬剤師会が大塚製薬と連携し、市内の薬局の冷房を活用。10月23日までクーリングシェルターとして利用できる。
アスト薬局の野津和良薬剤師は「暑い日が続くと思うので、処方箋がなくても気軽に立ち寄っていただける場所だということを知ってほしい」と、周知に努める。消防庁のまとめでは、2023年9月に広島県内で1カ月間に166人が熱中症で救急搬送され、うち1人が命を落とした。
薬局内には水分補給に関するパンフレットを配置。薬局だからこそ、熱中症への注意喚起を心がけているという。野津薬剤師は「利尿剤など水分を出すお薬を飲まれる方もいらっしゃいますので、脱水症状に気を付けてくださいとか、水分はしっかりとるようにしてくださいという指導を行っています」と話す。
厳しい暑さの長期化…。辛抱の日々は続きそうだ。
(テレビ新広島)