2018年に“紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家である野﨑幸助さん(当時77歳)が殺害された事件。

野﨑さんに覚醒剤を摂取させ殺害した疑いで、3年後に逮捕されたのは、妻・須藤早貴被告でした。

この記事の画像(10枚)

事件発生から6年、9月12日に事件の初公判が行われました。

須藤早貴被告:
私は社長を殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません。
私は無罪です。

黒のノースリーブのワンピース姿で法廷に現れた須藤被告は、野﨑さんのことを社長と呼び、声は小さいながらも、はっきりと「無罪」を主張しました。

検察は「検索履歴」など状況証拠を提示

目撃証言や物的証拠がなく、決定的な証拠に欠ける中、検察側は「動機」「事件当日自宅に2人しかいなかったこと」「被告が覚醒剤を入手していたこと」「犯罪に関する検索履歴」などの、状況証拠の積み重ねを提示しています。

さらに、須藤被告が事件の前後に検索していたとされる言葉を公開。
須藤被告は、2人が結婚した2018年の2月8日から20日後に、まず「完全犯罪」と検索。

3月下旬、野﨑さんが須藤被告に離婚届を渡していたとのことですが、その時期には「トリカブト殺人事件」といったようなサイトの閲覧、「完全犯罪」「薬物」「老人 死亡」等といった犯行を匂わせる検索履歴。

その後4月7日に須藤被告が密売人に電話で注文をして、その翌日に覚醒剤とみられるものを和歌山県内で受け取っているとのこと。その付近では「覚醒剤 過剰摂取」「覚醒剤 死亡」「殺す」等といった覚醒剤に関する検索履歴。

野﨑さんが死亡する1カ月前から「遺産相続 専門家」「妻に全財産を残したい場合の遺言書の文例」「相続税、海外口座」等、事件前から遺産について検索し始め、

事件のあった5月24日のその後、6月に入って「覚醒剤 入手ルート」「覚醒剤 検挙率」「昔の携帯 通話履歴 警察」・「薬物 入手ルート」など捜査に関する検索履歴。

翌年2019年3月には「自白剤」「殺人罪 時効」「殺人 自白なし」といった検索をしていたとのことです。

清原博弁護士に聞く…裁判の注目ポイント

無罪を主張する須藤被告と検察の“状況証拠”。今後、裁判はどのような方向に進むのか?
国際弁護士で裁判官や検察官の経験もある清原博弁護士に話を聞きました。

清原博弁護士:
弁護側の主張の通り、無罪のある可能性のある事案ではあります。ただ、きのう検察側が「検索履歴」というものを出してきたわけですね。
この事件については、須藤被告の供述がないので、供述に代わるものとして、検索履歴というのは大変重要だと、有罪立証になるのではと思います。

――検索履歴は被告自身が行ったものだと特定できるのですか?
清原博弁護士:

重要なポイントですね。おそらく弁護側はそこを主張すると思います。
他人が打ったんじゃないか、と。確かにその可能性は否定できなくて、本人が実際に履歴を打ち込んだということを立証するは難しいと思うのですが…。
ただ、これだけの検索履歴の数があるんですね。これだけの数が本人のスマホで検索されていて、しかも異なる期間、長期間にわたってとなると、他人が打ち込むというより本人でないとできないだろうと、ほぼほぼ本人が打ち込んだと考えていいのではという主張を、検察はしてくると思います。

カズレーザー氏:
これ、キレイな履歴の流れができているんですけど、これは検察側が抽出した、単語履歴ですよね。弁護側は、全く違う他の単語、めちゃくちゃ検索しているわけですから、それを抽出して違うストーリーを多分提示してくるとは思うんですよ。
検索履歴っていうよりも、直接的な証拠は見つかんないのですかね。

清原博弁護士:
直接証拠ですね。要するに口から覚醒剤を飲ませたというような…。これを目撃した人とかいないんです。直接証拠はない。だからこそ、間接証拠を積み上げるしかなくて、状況証拠を積み上げるしかないんです。その状況証拠の1つとして、この検索履歴というのは動機とか、殺意とか、あるいは犯行手口とか、そういうのを立証するための状況証拠になりますよということですよね。

弁護側の主張のポイント「裁判員裁判の有罪ハードル」

弁護側は冒頭陳述で以下のような主張を行いました。

・そもそも事件なのか?
・事件だとして、須藤被告が犯人なのか?
・殺害するのにその手段として覚醒剤を選ぶのか?
・野﨑さんが自分で飲んだという可能性は?
・無理やり被告が飲ませることがそもそもできるのか?

弁護側の主張ポイント
弁護側の主張ポイント

MC谷原章介:
今回は状況証拠しかない、直接的な物証はない。そんな中、メインとなってくるのはこの検索履歴。検索履歴だけで有罪にまで持っていった例ってあるんですか?

清原博弁護士:
過去に有罪までというのは、私は知らないんですけども、やっぱり起訴に至った事例はあります。例えば、京都タリウム殺人事件というのが最近ありましてタリウムという劇物を使って殺害したと。その時に容疑者は犯行の前後で、「タリウム」というワードを検索していたということですね。それが起訴に至ったという理由になっておりますので、やっぱり最近では、こういう検索履歴を基にした状況証拠で起訴したという、逮捕したという事案が増えてきていますよね。

MC谷原章介:
今後、どうなっていくでしょうか?

清原博弁護士:
皆さん気にしているのは、どうやって野﨑さんに覚醒剤を飲ませたのかということですよね。この点はおそらく裁判では明らかにできないし、実は明らかにしなくても有罪立証可能なんですね。おそらくカプセルで飲ませたとか飲食物混入したとかいうことは考えられるんですけども、いずれにしても死亡推定時刻から逆算したら、この時間帯でなきゃいけない。
いずれの方法であっても、この時間帯野﨑さんと一緒にいたのは、須藤被告だけだということで犯行方法が特定されなくても有罪立証できる。そういう意味では、検察側のハードルは若干下がったので、検察側は有罪立証の自信があると思いますよね。

今後の予定では、最大予備分を含め25回の審理、28人の証人尋問を予定していて、11月からは被告人本人質問、そして12月12日判決公判の予定となっています。
(「めざまし8」9月13日放送より)