世界的な建築家・隈研吾氏が設計した、栃木・那珂川町の「那珂川町馬頭広重美術館」の老朽化が進んでいる。改修工事には3億円がかかるとされていて、町は、ふるさと納税やクラウドファンディングなどで資金集めを始めている。

4~5年で劣化激しく…改修工事に3億円

4日、取材班が向かったのは栃木・那珂川町。豊かな自然に溶け込むように建てられた「那珂川町馬頭広重美術館」は、県外からも多くの人が訪れる人気の観光スポットだ。

屋根の部分の木材は激しく傷んでいた
屋根の部分の木材は激しく傷んでいた
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しかし、近づいてみるとある異変を発見。黒ずんで腐食した屋根……ところどころ木材が折れ曲がり、激しく傷んでいるのが分かる。完成して24年の美術館は、老朽化が進み、3億円にも及ぶ大規模改修工事の必要に迫られている。

多額の費用に、町民からは「無駄ですね。撤去してもらいたい」「えー!?3億円!?大丈夫ですかね…」などと困惑する声も聞かれた。

隈研吾氏が設計した那珂川町馬頭広重美術館
隈研吾氏が設計した那珂川町馬頭広重美術館

那珂川町馬頭広重美術館を設計したのは、世界的に有名な建築家・隈研吾氏。木材を使った日本的な建築を手掛けることで知られ、国立競技場のデザインも担当した。

老朽化が進む那珂川町馬頭広重美術館では、地元産の八溝杉(やみぞすぎ)を細く加工し、格子状に並べていた。屋根や壁に使われる杉の木は、もともと美術館の内部のように黄金色に輝いていたが、雨や風にさらされたためか、この4~5年で劣化が激しくなったという。

町民は、「ちょっとじゃないです。かなりボロボロになってきている感じはしますよね。前はきれいだったが、今は真っ黒になって曲がったり、破損したり……」と話す。

ふるさと納税やクラファンで資金集め

改修費用3億円を調達するため、町は、あの手この手で資金集めを始めている。

ふるさと納税の資金も美術館の改修費に充てるほか、クラウドファンディングでも資金を募集。その資料の中で、美術館の設計を手がけた隈研吾氏は老朽化の原因について、木を守るための保護塗料が今と比べて性能が低かったことを挙げている。

建築エコノミストの森山高至氏は、老朽化が早まった原因について、「屋根の上に棒のように並べてデザインとして取り付けている杉なので、どうしても屋根の下にあるわけではないので傷みやすい。そこまでの予算がかけられなかったのでは」と指摘する。

那珂川町は美術館がオープン25周年を迎える2025年には、大規模改修を行いたいと考えている。那珂川町教育委員会生涯学習課・課長補佐の川上浩さんは、「オープン当時の輝きを取り戻したい。那珂川町のシンボル的な建物なので、みなさんのご協力をお願いできれば」と話している。
(「イット!」9月4日放送より)

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