今季のリーグ戦の黒星はすべてアウェーの地で喫している清水エスパルスがまたしても“内弁慶”ぶりを露呈してしまった。第25節の仙台戦を2対1で落とすと、横浜FCが白星をあげたため、首位陥落。J1昇格に向けて、立て直しが求められている。

仙台相手に痛い1敗

どんなにいい攻撃を組み立てても、ゴールが決まらなければ優位な状況に立つことはできない。

反対に、放ったシュートが守備陣に当たって軌道が変わり、偶発的にゴールが決まることもある。

そして、ゲームに懸ける思いが強いチームほど、そうした偶然を手にする可能性が高まるのかもしれない。この日は駆け付けた1万5000人以上のサポーターが仙台イレブンの背中を押していたかのようだった。

この試合でJリーグ通算200試合出場を果たした宮本は「試合に負けたことは悔しいが、いつもはアイスタで相手の選手が感じている空気感を経験できたのは貴重」と話す。

こうした中、今の時期にどのチームにとってもさらなる敵となるのが暑さだ。疲労により体が動きにくくなることはもちろんのこと、同時に頭の働きも鈍る。

ただ、指揮官は「頭と体を休ませないこと」がポイントと選手に気合を入れる。

次節の相手は最下位に沈む群馬だが、5月に監督が解任されて以降に選手5人を補強し、直近3試合は1勝1敗1分と徐々に調子を上げつつある。

上位に位置するエスパルスには、いい意味で“開き直って”向かってくるだろう。

だからこそ、強いメンタリティを持ち続けることが大切だと指揮官は説く。

ホームでの無敗記録が続く中、選手のメンタルをどのようにコントロールできるのか。秋葉監督の手腕が注目されている。

秋葉監督「目の前のゲームに集中」

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-パリ五輪で興味のある種目は見ているのか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
なんだかんだで見てしまう(笑)普段、団体競技をやっているせいか、個人競技、柔道やレスリングやフェンシングだとか、ルールはわからないがおもしろい。個人で渡り合える選手がいるので、やはり日本人はすごいなと。「日本は組織で」などと言われるが、そうした個人がちゃんといる。改めて日本人を誇らしく思うし、我々も個をまとめて強い組織を作りたいと思う。

また、サニブラウン選手が100mで9秒台を出しながら予選落ちしてしまうとは驚いた。今の世界記録はボルトの9秒58だからなのかとも思うが、私の時はカール・ルイスの時代(当時の記録は9秒86)。進歩・進化しているのだなと思う。

-この1週間はどんな準備を
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
ホームでもう一度、どれだけ勝ち切れる姿を見せられるかを目指している。

その中で、頭も体も休まずに動かし続けられるかがポイント。気温が高く、暑くなる中で選手はしんどくなる。それでも休まずにプレーし続けたり、パスをした後の走りや奪われた瞬間に取り返しに行けるだとか、もう1つ動けることと頭と体を休めずにということを選手に伝えた。

連動・連携・継続といった要素で選手が取り組んでくれてとても嬉しい。

-ケガなどから多く選手がチームに帰ってきた
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
また嬉しい悩みが増えそう(笑)正しくハイレベルな競争が続けられるようにしたい。

ピッチで出してくれた結果を見極めることとチームの中での他の戦力との組み合わせや相手チームとの相性の問題、90分でのマネジメント戦術などの要素があり、スタートの11人に加えて交代5人を含めた戦力16人で試合を作るということで、スタッフ・メディカルと話し合いながら最善の人選をしたいし、イレギュラーな事象にも対応できるメンバーを選びたいと思う。

-群馬との戦い方の狙い
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
苦しんでいる面もあるが、短いパスが基調だったところからロングボールを入れるようにもなってきた。監督が代わって多少色が変わったが、ヘッドコーチがそのまま上がっていて引き継がれている点も多い。

また、残留争いの必死さを抱えているし、5人の補強をして、クラブでも「なんとか残留するんだ」という思いや願いがあると思う。そういう必死さで来る相手にホームで勝ち切れるかどうか。群馬以上のメンタリティや走力を出せるか。球際のインテンシティを出した上で、我々のアイデアと技術と判断力を披露できればと思う。

残り13試合には持っているものを100%出す必死さが重要になる。暑かろうが何だろうが出し惜しみなく全員で気を引き締めながらやりきりたい。

-次節は横浜FCと長崎が直接対決となる
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
意識すると良いことはない(笑)目の前のゲームに集中するだけ。

アウェーの仙台戦で良かったことは、いつも相手チームがアイスタで感じるアウェー感を体験できたこと。2万人の会場で1万8000人が仙台の応援をする環境で「アウェーだな」という空気を感じた。

ああいう難しいゲームの中で勝ち切れる監督にもなりたいし、クラブにもなりたい。J1に上がれば浦和やガンバや柏など、そういったクラブと対戦することになる。そうした中でも勝てる力が必要。必死になって知恵を絞って精進しながら勝利を手繰り寄せられるようにしたい。

-仙台戦は相手の方が運を引き寄せた感があった
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
森山監督は「気持ちには引力がある」と表現したが、最後の勝ちに対する意欲が大事になるシーンが出てくる。その前の予測や準備も重要だが、最後の最後、相手より一歩出るか、ねじ込めるか、防ぎ切るか、メンタルの部分が大きくなる。

「自分たちは何が何でも優勝する」「昇格する」という気持ちが大事。去年の背景が我々にはある。気持ちを人一倍出さなければならない。

宮本選手「今年を一番いい年に」

清水エスパルス・宮本航汰 選手:
あまり考えずにやってきたが10年目なので早い方ではない。ただ、自分が歩んできた道。感謝したいし嬉しく思う。300試合、400試合の時もエスパルスで記録したい。

長崎では昇格、清水と岐阜で降格を経験した。そうした経験をしながら、いま清水で試合に出られているのは幸せ。今年を一番いい年にしたい。

試合の出られているのは過去のチームでの経験、いろんな監督の下でやった経験、出会った先輩たちとの経験、すべてがつながっている。

再開明けはパワー上げたかった試合。やりたかったことはできたが、勝てなかったことがすべて。獲りたいときに獲れず、守りたいときに守れなかった。次の試合、先制点、無失点、追加点にこだわりたい。

宇野選手とのコンビは特に大きく変えることなくできた。彼はボールを奪うことに長けているし、シンプルにボールを動かせる選手なので、その特長やプレースタイルがわかり信頼感も持てたので、次の試合ではよりパスの数がより増えると思う。楽しみ。

仙台戦、アウェー満員でプレッシャーはなかったが、ああいう経験がここ2年なかったので、J1になれば常に待っていると思うと負けてしまったのは悔しいが、そういうアウェーで勝てるようにという意味でいい経験になった。

群馬戦、応援にたくさんのサポーターが来てくれると思う。その声援を背に力を出すだけ。前節負けているので、群馬戦でしっかり勝って連勝のペースを作っていければ。残り13試合に集中して行きたい。

山原選手「連敗が許されない立場」

清水エスパルス・山原怜音 選手:
体の方はもう大丈夫。自分のやるべきことは試合に出る準備をすること。

その中で仙台戦を見て、この中断明けからどのチームも我々に死に物狂いでやってくる。100%以上の力をぶつけてくることを再認識した。それを自分たちがどうはねのけられるか試されていると感じた。

ブレイク期間中の準備について、この尋常ではない暑さに対して気持ちがネガティブに向きやすいし、正直きついと思う。その中で、パスの技術にこだわるかこだわらないか、それが試合に出ると思った。「この1本のシュート」というところで、疲れている状況で質の低いプレーに慣れてしまってはいけない。しんどい時にも高い技術を発揮することに力を入れてきた。

前半の群馬戦には出ていないので、ピッチでの肌感感覚はつかめていない。だが、群馬はチームとして何かやってやろうという気持ちで来る。失うものはない強いメンタリティで我々に勝つ気持ちで来る。選手の中でボールを扱う技術の高い選手はいるので、厳しい試合になると思う。

ホーム無敗が続いているし、連敗が許されない立場であり、その上で静岡・清水の街で夏休み中にいろんなサポーターがアイスタに来てくれる、ホームでの勝利の価値は大きい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

テレビ静岡
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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。