「アフリカ系女性の夢」“完璧”なハリス氏に弱点はあるのか

「初の黒人女性副大統領候補」として、一躍時の人となったカマラ・ハリス上院議員。ハリス氏が滞在するホテルには、米メディアや支持者が集結し、その言動に大きな注目が集まっている。支持者からは「副大統領候補への起用はアフリカ系女性の夢だった。近い将来、彼女が変化を起こしてくれる」と熱い期待が寄せられる。

副大統領候補としての初演説に多くの支持者が集結 (8月12日デラウエア州)
副大統領候補としての初演説に多くの支持者が集結 (8月12日デラウエア州)
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検事、カリフォルニア州司法長官、上院議員…非の打ち所がない輝かしいキャリアを重ねてきたハリス氏。しかし、大統領選に向けて、厳しい見方もある。“完璧”なハリス氏の弱点とは、一体何か。

米メディアが主に指摘するのは、民主党指名候補争いでの「失敗」だ。

世論調査で一時は上位に着け、注目の女性候補として有望視されたものの、その後は伸び悩み、2019年12月、予備選挙開始前に撤退を表明。アフリカ系からの支持は、黒人のハリス氏よりもバイデン氏が圧倒していたことなどから、ハリス氏がきたる大統領選でアフリカ系の支持を押し上げる効果は薄い、と言われている。

検事流の舌鋒の鋭さ“口撃力”が「諸刃の剣」に!?

また、ハリス氏の武器でもある「舌鋒の鋭さ」が、「諸刃の剣」になりうるとも指摘されている。

過去の指名候補争いの討論会では、ハリス氏が他候補に対し“口撃”を駆使する場面が目立った。特に、バイデン氏に対し「過去に人種差別を肯定した議員らと協力をした」として、痛烈に批判。「検事そのもの」の追及姿勢を見せる一方、自身の目玉政策や社会問題への考えについては、うまくアピールすることができなかった。

 “攻撃重視”とも言える討論スタイルに、バイデン氏の支持者からは「他人の批判ばかりで、彼女自身が何をやりたいのかが全く見えてこない」との反発もあがった。「舌鋒の鋭さ」がいわば悪目立ちしてしまった形となった。

初の黒人女性副大統領候補としての初演説 (8月12日)
初の黒人女性副大統領候補としての初演説 (8月12日)

手作りの“カリフォルニア流”ツナサンドでイメージ一新

しかし、この印象とは一線を画すハリス氏の“素顔”にも注目が集まり始めている。

新型コロナウイルスによる自粛生活が続く中、ハリス氏の同僚、マーク・ワーナー上院議員(東部バージニア州選出)が自宅でツナメルト・サンドイッチを作る動画を公開した。

「ツナメルト」を作るバージニア州選出マーク・ワーナー上院議員
「ツナメルト」を作るバージニア州選出マーク・ワーナー上院議員

「ツナメルト」は、ツナ缶にタマネギ、マヨネーズを混ぜ、チーズとともに食パンに挟んで焼いたアメリカ定番のサンドイッチ。

しかし、ツナの油を切らず、大量のマヨネーズとともにパンにのせ、電子レンジで温めるワーナー氏のレシピは「不味そう」と話題に。他の議員からは「作り方を変えないと、バージニア州でマヨネーズ不足が起こる」と揶揄された。

ワーナー氏が作る「ツナメルト」にはマヨネーズがたっぷり
ワーナー氏が作る「ツナメルト」にはマヨネーズがたっぷり

これに対し、ハリス氏は自宅のキッチンから「正しいツナメルト」の作り方を伝授する動画を公開。出身校・ハワード大学のエプロンを身につけ、「油はしっかり切るのがコツなのよ!」と大笑いしながら、鮮やかな腕前で赤タマネギのみじん切りのコツを実演。“カリフォルニア流”のオリジナルレシピを披露した。ちなみに、撮影していたのは、弁護士として活躍するハリス氏の夫だそう。

自宅のキッチンで「ツナメルト」作りを披露するハリス氏
自宅のキッチンで「ツナメルト」作りを披露するハリス氏
「ボウルの中でよく混ぜるのよ!」と教えるハリス氏にワーナー氏が驚く場面も
「ボウルの中でよく混ぜるのよ!」と教えるハリス氏にワーナー氏が驚く場面も

動画にはこれまで国民がほとんど目にすることのなかったハリス氏の素顔が捉えられていた。“強い”ハリス氏のイメージを一新するこの動画は注目を集め、全国ニュースでも取り上げられた。

ちなみに、ハリス氏の「ツナメルト」レシピは下記の通り。

■ハリス氏オリジナル「ツナメルト」のレシピ
・ツナ缶の油を“しっかり”切って、ボウルに入れる。
・セロリが隠し味。赤タマネギとともにみじん切りにする。
・上記をレモン汁、パセリ、塩コショウ、マスタード、マヨネーズとともによく混ぜる。
・人気スーパー「ホールフーズ」のマヨネーズがお気に入り。
・パンに、チーズとともに具材を挟んで焼いたらできあがり。

ハリス氏の自宅マンション 全面ガラス張りの高級物件 ワシントン市内
ハリス氏の自宅マンション 全面ガラス張りの高級物件 ワシントン市内

ハリス氏の弱点については他にも、サンダース上院議員ら党内の急進左派から人気がないこと、地盤が「民主党の牙城」カリフォルニア州であることから、トランプ大統領に競り勝つ選挙戦略上のメリットがないこと、なども指摘されている。

大注目の副大統領候補として、課題を克服し「勝利の女神」となれるのか、今後の動向に注目だ。

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】

瀬島 隆太郎
瀬島 隆太郎

フジテレビ報道局政治部 元FNNワシントン支局