7月27日、Mr.サンデーのカメラが捉えていたのは、立川市で予定されていた花火大会の舞台裏だ。無事に開催できるのか、それとも中止か。突然のゲリラ雷雨に翻弄される人々の決断の瞬間を追った。

多発する「ゲリラ雷雨」

27日、「立川まつり 国営昭和記念公園花火大会」の実行委員が戦々恐々としていたのは、突然襲いかかる「ゲリラ雷雨」だ。

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今年の夏は、厳しい猛暑が続く中、ゲリラ雷雨が多発。24日、埼玉県では激しい雨や雷だけでなく、風速約40m/sと見られるすさまじい風が吹き荒れた。

戸田市の自動車販売店では、無人のキッチンカーが軽々とあおられるほどの突風が吹いた。

同じ戸田市の美谷本小学校に設置された防犯カメラ映像には、画面右奥に突然、黒い影が現れた。その現場を見てみると、校庭の大木が折れていた。

美谷本小学校 黒田龍正主幹教諭:
空が暗くなり始めて10分、15分で(倒れた)。一瞬ですね、本当に。

埼玉県内で発生した突風を伴うゲリラ雷雨。熊谷地方気象台によると原因の1つはダウンバーストだという。

気象予報士・芦原瑞文氏:
上空と地面付近の気温差が大きければ大きいほど、積乱雲は発達しやすくなります。さすがにもう耐えきれないってなると爆発して、雨粒と氷の粒と一緒に空気もどーんと落ちてきて、それが地面にぶつかって、四方八方にバッと広がる。これがダウンバーストです。

開催か?中止か?黙々と情報収集

27日、花火大会の実行委員会は早朝6時半から、開催か中止かを検討し始めていた。その重責を担った1人が立川商工会議所事業課の星野智哉さん(39)。そもそも、どう判断するのか?

立川商工会議所事業課の星野智哉さん
立川商工会議所事業課の星野智哉さん

立川商工会議所事業課 星野智哉さん:
気象予報士さんが天気の情報を集めていて、その情報を持って我々は「花火やります」という情報を公開する。

実行委員会にいる専属の気象予報士が、逐一気象情報を共有。朝の段階では、悪天候になる可能性が低いとして開催へ動き出した。

すでに、メイン会場となる公園には、5000脚もの椅子が用意され、テントやシートを並べて花火を待ちわびる人たちもいた。

立川市の花火大会は、東京では珍しい大玉の花火など約5000発が夜空を彩り、例年70万人もの人が見届ける。開催を願うのは、見物客だけではなく…。

露天商:
影響でかいですね。もし、そう(中止に)なった場合、食材とかも今日はけないと腐っちゃうんで。

ホソヤエンタープライズ 細谷一寿さん:
(花火作りは)去年の大会が終わってからスタートするっていう形で。
――1年がかり?
そうですね。1人1人に感動してもらえるように気持ちを込めて作らせていただいています。

開催への期待を感じながら、黙々と気象情報をチェックする星野さん。開催か中止か、その判断は重い。

星野さん:
半年以上前からのプロジェクト。この(花火大会)1時間のために。例年まれにみるヒリヒリした展開になってますね。(中止を)考えるのも恐ろしいですけど、そうならないことを本当に祈るのみですね。

迫るゲリラ雷雨 開始15分前に最終決断

しかし、星野さんの思いとは裏腹に、打ち上げまで約4時間となった午後3時前、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。

雷鳴とともに、強くなる風。積乱雲から吹き下ろすダウンバーストの予兆なのか。雨雲レーダーを見てみると、立川市の西側に発達した雨雲が発生し、徐々に迫ってきていた。

そして、午後3時20分ごろ、大粒の雨が降り出した。同じころ、立川市の西に隣接する昭島市は豪雨に見舞われ、落雷の影響で一時、停電も発生していた。

星野さん:
ちょっと心配ですね。どうかな…。頼むぞ…。

すると、雨の降りはじめから約20分後、晴れ間が見えてきた。ゲリラ雷雨が通過し、ほっと一息。会場は大勢の人で埋め尽くされていく。しかし安心も束の間、今度は立川市の西側に、さきほどよりも大きな雨雲が発生。

星野さん:
あ、雷が!今、雷が光った!大丈夫かな。うわ、こっちも!

打ち上げまで約2時間となった午後5時ごろには、再び空が荒れ始め、稲妻が走った。

立川商工会議所事業課 田中光德さん:
すごいなこれ。変な雲が出てきましたね。ちょっと初めて見る感じです。

すると、星野さんの元に気象予報士から「奥多摩から秩父にかけての雨雲が南下しており、17時30分時頃から18時30分時にかけて、再び雷雨になる可能性が高い」という内容のメールが届いた。

午後6時半にかけて、雷雨の予想。花火の開始時刻は午後7時15分。雷雨が6時半までにおさまれば開催は可能だが、そこまでにやむのか?刻一刻と打ち上げ時刻が近づく中、たまらず、星野さんが動いた。

星野さん:
すみません、お忙しいところ。星野でございます。このあと雷雨が来るだろうという情報なんですけど…。

気象予報士に連絡して詳細を確認。すると、雷雨の予想でも、落雷の可能性は低いという。その後も、星野さんはギリギリまで雨雲の確認を続けた。

星野さん:
立川がここなんで。1時間後(午後7時)の空がこれか。ああ~、(雨雲)通過してるか。

打ち上げまで15分となった午後7時。

星野さん:
ちょっと今、雨軽く降り出してるんですけど、予定通り進めます。

無事に打ち上げられた花火
無事に打ち上げられた花火

そして午後7時15分、花火は無事に打ち上げられた。今年の夏は、花火大会を開催するのも一筋縄ではいかない。

星野さん:
うーん、すごい。いやー、よかったー!お客さんのこの反応をやっぱり感じると、頑張って良かったなって思いますね。
(「Mr.サンデー」7月28日放送より)

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