日本人にも外国人にも大人気のマグロ。先週、国際会議で今後の価格に影響しそうな動きがあった。

一方でマグロの町を取材すると、漁師が置かれる悲痛な現状も見えてきた。

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鮮やかな赤身。濃厚なトロ。すしネタの王様「本マグロ」。その味はもちろん…

【記者リポート】「すぐとろける感じで、甘くてとてもおいしいです」

通称「本マグロ」の名で知られる「クロマグロ」は、他の種類と比べて価格も一段と高いそうです。

【株式会社小松商店 草木憲一郎社長】「安い時はキハダとかメバチとそう変わらない、ちょっと高いぐらいの時もあるんですけど。冬のしける時なんかは10倍の値段することもある。うまみ成分のグルタミン酸とかイノシン酸、脂質の甘さとうま味の酸味。このバランスがとてもいい」

すしネタの王様「クロマグロ」をめぐり、いま異変が起きています。

■「とれても赤字になる。目の前で切って捨てる」という漁師

生マグロの水揚げ日本一を誇る勝浦漁港。

冬が旬のクロマグロはこの日入っていなかったが、さまざまな種類のマグロが水揚げされていた。

マグロ漁師に漁の状況について聞くと…

【マグロ漁師 黒木光孝さん】「去年、おととしくらいから異常に増えて。今まで1本~2本の漁場でも、10本~20本。食えば食うほど漁師にとっては赤字になる感じ。目の前で切って捨てる。おそらくマグロは全部死にますよ」

高級魚のクロマグロを海に捨てる?なぜそんなことが起きるのかというと、資源保護の取り組みと密接な関係がある。

実はクロマグロは過去、乱獲によって急激にその数が減った時期があった。

そこで国際的な枠組みの中でとってもいい量を制限してきたのだ。

取り組みが功を奏し、クロマグロの数は急回復。

しかしとってもいい量は変わっていないため、たくさんとれても泣く泣く海に捨てざるを得ない状況なのだ。

■大型クロマグロの漁獲枠 国際会議で1.5倍に増加することで合意

この状況にはマグロの町、那智勝浦町も頭を悩ませてきた。

【那智勝浦町 堀順一郎町長】「もう(漁獲枠)いっぱいなんや、これからとれたらどうしようとかいう話は、心配の声として(漁師から)はずいぶん聞いてました。以前、クロマグロ規制始めた時に、和歌山県知事も水産庁行くっていうことだったので、一緒に行って実情を訴えて、『今後資源が回復すればすぐに元通りに』というようなことで要望をしました」

このような状況を受け、日本は先週開かれた国際会議で、30キロ以上の大型のクロマグロは、従来の漁獲枠から2.3倍に拡大するよう提案した。

その結果、自治体の地道な働きかけのかいもあってか、求めには届かなかったものの、大型クロマグロの漁獲枠が1.5倍に増加することで合意。

これでクロマグロも手が届きやすい価格になるかと思いきや、一概にそうも言えないと教えてくれたのは、ベテラン仲買人だ。

【木下水産物株式会社 木下勝之社長】「(クロマグロは)相場ものなんですね。単純なそういう話ではない。とにかく下がることは下がると思います」

(Q.良いものは下がらない?)

【木下社長】「良い物っていうか、はえなわの(漁法でとれた)特上ものはなかなか下げないと思います」

漁獲枠の拡大で今後私たちが食べるマグロの価格はどう変化していくのだろうか。

■「クロマグロは価格が下がる可能性あり」ただ懸念も…

クロマグロの漁獲枠拡大ということで、高級食材が今後安く食べられるのかどうか、近畿大学 世界経済研究所の有路昌彦教授に聞いてみた。

「短期的には高級な“生”のクロマグロは価格が下がる可能性もある」。

一方で懸念もあり、 「漁業者とって、価格が下がり続けると、もうけが減り厳しい状況にもなりうる」 ということだ。

価格が下がると消費者にとってはうれしいことだが、漁業関係者の生活にとっては問題もある。

また漁師さんの中には、針にかかったマグロを、漁獲枠があるので泣く泣く海に返さざるを得ないと、大変やるせない思いをされているという方もいるということだ。

【関西テレビ 神崎博・報道デスク】「今、物価高の影響を受けて当然マグロの値段も上がっている。でも我々の給料が増えない中で、なかなかクロマグロは手が届きにくいという状況です。そこがうまくいってないですね。本当は我々のお給料が上がっていって、『余裕あるから、きょうはクロマグロ食べようか』と需要も増えたら、漁獲量が増えても値段はキープできると思います。我々の給料が上がっていけばいいですね」

給料がなかなか上がらないと「クロマグロ、本マグロ食べよう」という空気感にならないものでだろうか。

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「今インバウンドでものすごいマグロの人気があるので、ちゃんと流通ルールを作ってキャンペーンをすれば、食べてくれる人も結構いると思います。やっぱり海外からのお客さんはマグロ好きなので。水産資源の管理と、漁師の方の生活保障と、需要拡大といったことがうまく回っていくといいですね」

クロマグロの漁獲枠は12月に正式決定されるということだ。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年7月26日放送)

関西テレビ
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