25日に山形県と秋田県を襲った記録的な大雨について、川の氾濫などにくわしい中央大学・山田正名誉教授と見ていく。
最上川ならではの特徴と日本中の川に共通する特徴が
川の氾濫や被害の情報を見ていく。

黒色に塗られた川が、氾濫発生情報が出された川で、山形県を流れる最上川など3つの河川と秋田を流れる2つの河川。
被害としては、山形・新庄市で救助要請を受けて現場に向かっていたパトカーが流され、警察官が2人行方不明になっていたが、1人が26日午後、心肺停止の状態で見つかった。
ほかにも大雨の影響による被害が相次いでいる。

ーーこのように氾濫が各地で起きているという状況だが、 全体の状況を見てどう見ている?
中央大学・山田正名誉教授:
少なくとも最上川に関しましては、日本のいろんな川の共通のパターンと最上川ならではの特徴が両方出ていますね。

ーーそれはどういったことで?
中央大学・山田正名誉教授:
最上川は結構長い川なんですけど、調べてみますと4カ所ぐらい非常に川幅が狭いところがあります。狭いところ、狭いところの間に盆地があって、狭いと水が流れにくいですから、盆地の水位が上がってしまう。そうすると、そこに入ってくる支線も、本線の水位が高いですから、“バックウォーター”が効いてしまって、支線の方に水が行っちゃうとか、あるいは支線の水が流れてくれない。それで支線も氾濫する。だから最上川らしいとも言えるし、日本中そういうところがいっぱいあるんですよね。
ーーバックウォーターというのは、支流の方に流れが来てしまったり戻ってしまったりということ?
中央大学・山田正名誉教授:
そういうことですね。
東北地方はそもそもそれほど雨が降らない?
フジテレビ・川原浩揮気象予報士:
秋田や山形の両県は、1日ごとに地元の1カ月分の雨が降るようなまとまった雨になりました。

ここまでの48時間の積算の雨量、紫の棒が立っているところは、まさにそういった雨の降り方をしたような場所になります。

ーーただ東北地方は、雨がそもそもこんなにも降らないのでは?
フジテレビ・川原浩揮気象予報士:
そうですね。平年でだいたい1カ月ぐらいで200mmぐらいの雨が降るエリアということになりますから、 やはり雨がよく降る、例えば西日本であったりとか、西日本の太平洋側と比べると、やっぱり雨に慣れているエリアとは言えない地域だと言えると思います。
一度大雨特別警報が大雨警報に切り替わる
ーー26日に出された大雨特別警報が一度大雨警報に切り替わったということだが?
遠藤玲子キャスター:
時系列で確認しますが、25日は午後1時5分に酒田市と遊佐町で大雨特別警報が出ました。

そして午後8時10分に大雨特別警報から大雨警報に切り替わります。ただ、その約2時間半後には、線状降水帯が最上地方と庄内地方に発生し、午後11時40分に再び大雨特別警報が酒田市など6つの市町村で出されたと。このような流れになっています。
ーーなぜ切り替えたのか?
川原気象予報士:
最初に出されていました湯沢町と酒田市の大雨特別警報が警報に切り替わった時に、気象庁の説明では、この2つの町では「しばらくの間、大雨特別警報になることは考えにくい」という言い方をしていたんですね。この一帯で、このあとに降る雨を予想したところ、特別警報に値するような降り方はしないと気象庁が見たという、この時点での判断だったんですね。

ところが、その後に線状降水帯が発生しまして、また一気に状況が変わります。それを追いかけるような形で、午後11時にあらためて大雨特別警報が出されたんですが、その時の気象庁の説明では、「線状降水帯が発生するような集中の仕方をするというところまでは予想できていなかった」。つまり事前の予想の中で、線状降水帯の発生を考えることができなかったというような説明だったんですね。
ーー線状降水帯の発生の予想はできなかったのか?
川原気象予報士:
まさに取り組んでいるところなんですが、線状降水帯は広い範囲に雨が降る現象のように思いますけれども、天気予報として考える場合には、ごく限られた地域に強い雨が降っている現象なんですね。ですからこの狭いエリアで起きる突然の雨を予測で当てるというのが今、気象庁がまさに取り組んでいる課題です。
なぜ氾濫が起きた?
ーー今回大雨となった、山形そして秋田でなぜ河川の氾濫が起きたのか。そもそも当然、最上川では氾濫しないような対策はとられていたはずでは?
中央大学・山田正名誉教授:
1級河川である最上川ですね。国土交通省の責任のもとに、河川整備計画というのを作っているんです。それによると、2日で約200mmぐらい雨が降るだろうと、過去のデータを見てですね。それに対して対策をとっていたんですが、ところが今回は1日で400mm近い雨が降っていますので、時間が半分になって、雨の量は2倍に降っています。これだともう、どこかであふれてしまわざるを得ないですね。

ーー対策のしようがないというか。
中央大学・山田正名誉教授:
それは日本中、そういうことが起きつつあるんですね。
ーーそれは原因としては、気候変動とかそういったものが考えられる?
中央大学・山田正名誉教授:
気象庁あるいは気象研究者との研究会では、確実に地球温暖化のせいであるということになっています。
“米どころ”への影響は?
ーー日本全国でこういった対策を今後していかなければならないが、山形といえば、「ひとめぼれ」とか「つや姫」などの米どころとしても有名だが、今回の大雨での河川の氾濫などで影響はある?
遠藤キャスター:
今回被害を受けたJA新庄市に田んぼの被害について伺ったところ、「冠水したり土砂で埋まっている田んぼもあり、コメの収穫、コメ農家の暮らしへの影響は避けられない状況だ」ということです。

「現在まだ水も引いていないため、田んぼに近づくこともできないので、被害状況の全容をまだつかめていない」ということです。
ーーまだ雨が降るという情報もあるが、今後の天気は?
川原気象予報士:
実は週末にもう1回まとまった雨が来る予想になっていまして、明日の土曜日(27日)のお昼までに、秋田・山形でさらに100mm降る予想になっていまして、その後土曜日から日曜日の24時間でも、今度は200mm降る予想になっています。ですから、週末でさらに300mm降る可能性がある地域がありますので、最新情報を十分に注意していただきたいです。

ーー河川の氾濫に対して、あらためて注意点など教えていただけると。
中央大学・山田正名誉教授:
気象庁および地元の市町村がいろいろ避難指示とか、警報を出します。それを目ざとく情報を入れて、素早い行動を起こすというのが一番大事です。
天気の情報も含めて、最新情報をどうか留意していただきたい。
(「イット!」7月26日放送より)