鹿児島県の奄美大島と徳之島にだけ生息する国の特別天然記念物・アマミノクロウサギ。徳之島のある地区では、民家の庭先など身近なところに出没しているという。人と自然が共生する姿をカメラに収めた写真展が、鹿児島県庁で開かれた。

出没するクロウサギの姿がいきいきと

鹿児島県庁で7月22日から行われた写真展「わが家の客はクロウサギ」では、徳之島・天城町の当部集落で撮影された17点の写真が展示された。

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徳之島の真ん中、“へそ”の部分にある天城町・当部集落は、人口54人、そのほとんどが高齢者だ。そんな当部集落にはアマミノクロウサギが出没し、「クロウサギの里」と呼ばれる。地元・天城町役場の担当者も、「民家近くでクロウサギを頻繁に見かけるのは、生息地の中でもここだけではないか」と話す。

画像提供 森と海の藝術楽校
画像提供 森と海の藝術楽校

夜間に撮影されたアマミノクロウサギの鮮明なカラー写真には、後ろに植木鉢が映り込んでいる。これは民家の庭先で撮影されたものだ。

画像提供 森と海の藝術楽校
画像提供 森と海の藝術楽校

植木の上にちょこんと乗ったクロウサギに、民家の前で“ご対面”する2匹のクロウサギ。これらのモノクロ写真は、トレイルカメラと呼ばれる、動くものに反応し自動的に撮影する機材で撮影された。いずれも、人間を恐れることなく自然にふるまうクロウサギの様子を見事にとらえている。

画像提供 森と海の藝術楽校
画像提供 森と海の藝術楽校

中には、庭にある石臼の上で、クロウサギが用を足していると思われる一枚も。主催者の一人で当部集落に住む、のせたかこさん宅で撮影されたもの。ちなみに、いつも来るウサギは「何となく分かる」という。これには見学に訪れた鹿児島県・塩田康一知事も驚いていた。

絶滅危惧種と地域住民が共存

アマミノクロウサギは、奄美大島と徳之島にのみ生息する固有種で、国の特別天然記念物だが、絶滅危惧種にも指定されている。写真展はそんなアマミノクロウサギと、地域住民の暮らしが共存する天城町の自然について理解を深めてもらおうと開かれた。

(左から)森田弘光町長、塩田康一知事、のせたかこさん
(左から)森田弘光町長、塩田康一知事、のせたかこさん

主催者の一人、のせさんはIターンで徳之島にやってきた。人より多種多様な生き物が生息し、集落が生き物で活性化し、にぎわっていると感じている。その一方、食害や、夜間の観察者のマナーといった課題もあり、集落独自のルール作りの必要性も認識しているという。

そのうえで、のせさんは、この展覧会で「鹿児島県民にまだ伝わっていないクロウサギの魅力を身近に感じ、徳之島に足を運んでほしい。そして徳之島のすばらしい自然が後世に続くようお力添えを頂きたい」とアピールした。

写真展を主催した天城町・森田弘光町長も「まさしく、自然の中で動物と人間が一緒に暮らしていることを少しでも多くの人に知ってもらいたい」と話した。

絶滅危惧の固有種が地域の住民と普通に共生する天城町・当部集落。クロウサギと住民の共生がカメラの中だけでなく、いつまでもリアルな光景として引き継がれていくことを強く望みたい。

(鹿児島テレビ)

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