シャープペンシルというと手頃な値段の筆記用具というイメージを持つのは30代以上かもしれない。今や一本数千円、数万円する高級な商品が文具店に並び、中高生の間で人気となっている。人気の背景には高機能化と少子化も関係しているという。

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中学生に人気 やる気もアップ?

仙台市にある中学校を取材すると、生徒たちが筆記具として使っているのはやはりシャープペンシル。女子生徒にはカラフルなものが人気のようだが、男子生徒は金属ボディのスタイリッシュなものから木目調まで材質も色もさまざまだ。

話を聞いてみると、購入価格は数千円のものが多く、最高で3万円。それぞれ思い入れがあって使っているようだ。

文具店によると、価格が2000円以上の商品はいわゆる「高級シャーペン」とされる。担任の教師は「物の管理では心配な部分はあるが、勉強のモチベーションにつながる道具だと思うので、たくさん使って成績アップにつなげてほしい」とブームを前向きに捉えていた。

小学生も憧れる“シャーペン”

中高生がシャープペンシルを愛用する背景には小学生のときからの憧れもあるようだ。

仙台市内の小学6年生に話を聞いてみると「とても楽な感じで鉛筆とは違ってハイテク。シャーペンは憧れ」「使ってみたい憧れがある」と話してくれた。
小学校で使う筆記用具は鉛筆が基本とされている。取材をした小学校でも「筆順や筆圧、とめやはらいなどを学んでほしいと考えているため、鉛筆を推奨している」と鉛筆を使うよう指導しているという。

小学生の筆箱は鉛筆がたくさん
小学生の筆箱は鉛筆がたくさん

だからこそ、中学生になったときの“シャーペン”は特別なものなのだ。

コロナ禍とともに始まったブーム

仙台市内に複数の店舗を構える大手文具店によると、「高級シャーペン」は2020年のコロナ禍が始まった頃にブームとなった。特に1000円から3000円の価格帯の売れ行きが良く、購入客は中学生や高校生が多いという。

価格帯ごとの販売本数を割合でみると、2019年から1000円以上、2020年からは3000円以上の割合が増え始め、去年は5000円以上するものも売れ始めている。

人気商品は店頭で見つけるのも困難

高級シャープペンシルの人気上位3商品も教えてもらった。

上からクルトガDIVE、S20、スマッシュ
上からクルトガDIVE、S20、スマッシュ

1位、三菱鉛筆「クルトガDIVE」
ースタンダードモデル495円(税込)に対し5500円(税込)という高級仕様。「出会えたらラッキー」というほど品薄だという。
2位、パイロット「S20(エストゥエンティ)」
ー製図用で、軸が木製で手になじみやすいのが特徴
3位、ぺんてる「スマッシュ」
ー製図機能を備え、先端が4ミリあるため、ペン先が見やすく書きやすい

シャープペンシルの仕入れを20年以上担当する店員によると、クルトガDIVEの魅力はキャップを開けるとクルトガ本来の自動で芯を繰り出す仕組みになっているためノック不要で、芯の先は常にとがり、さらに芯の長さも5段階で変えられるという高機能さにあるという。

シャープペンシル 改良の歴史

次々に高機能なものが発売されているシャープペンシル。日本での歴史は大正時代にさかのぼる。
国産第1号は1915年に誕生。早川金属、現在のシャープが作った繰出鉛筆「エバー・レディー・シャープペンシル」だ。その名の通り「シャープペンシル」の名前の由来となり、家電メーカーとして成長していくシャープの社名にもなった。

国産第1号のシャープペンシル
国産第1号のシャープペンシル

1960年には、ぺんてるからノック式が発売されたが、芯が0.9ミリと太すぎたため、ほとんど普及しなかったという。その後、芯を細くする改良が重ねられた。

ゼブラのノックペンシル
ゼブラのノックペンシル

1980年代には100円という手頃な価格を前面に押し出したゼブラの「ノックペンシル」が登場。身近な筆記具として広く受け入れられるきっかけとなった。

機能とともに価格も上昇 それでもほしい!

こうした時代を経て、シャープペンシルは振って芯が出る機能や、使い続けても常に先端が尖り続ける機能、芯の太さのバリエーションなど進化を続け、価格も上昇を続けてきた。

先述の店員によると、特に男子は「高級シャーペン」のギミック感(特殊な仕掛け)に魅了されているように感じるという。また、少子化もあって中高生が使える小遣いが増えていることも、自分が気に入ったシャープペンシルを買おうという動きの追い風になっているという。

時代とともに進化してきたシャープペンシル。ブームはまだまだ続きそうだ。

仙台放送
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