結婚後、妻と夫の名字を同じにするか、それぞれの名字を別々に使い続けるのか、法律を改正して選べるようにする「選択的夫婦別姓」の導入について7月のFNN世論調査で質問したところ、導入に「賛成」66.6%、「反対」25.5%となった。

経団連は、多様性・公平性などの推進を通じた女性活躍が企業価値の向上という観点から、政府に対して、「希望すれば、生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗れる制度の早期実現」として選択的夫婦別姓の実現に向けた法改正を提言し、自民党でも議論が再開される動きとなっている。

【選択的夫婦別姓の導入】
賛成 66.6%
反対 25.5%

選択的夫婦別姓導入は女性の方が「賛成」多く

現行の民法では、夫婦同姓が定められていて、夫か妻のどちらかの姓を選択することができる。改姓は95%のケースで妻が夫の姓を選択している。職場や組織などでは「通称」として旧姓の使用が広がっている中、男女別で「選択的夫婦別姓」の導入についての考えを聞いたところ「賛成」と答えたのは「女性」で69.5%、「男性」の63.4%となった。男女とも導入に「賛成」が「反対」をおおきく上回り、その中では女性が男性に比べ導入を求める意見が6ポイントほど高い結果となった。

【選択的夫婦別姓の導入 性別】
    導入賛成  導入反対
女性  69.5%   22.1%  
男性  63.4%   29.2%

世代差くっきり 60代以下で「賛成」9割~7割

さらに年代別で調査結果を分析する。まずは「賛成」が多かった女性を年代別でみると「20代以下」93.3%、「30代」79.4%、「40代」91.7%、「50代」69.1%、「60代」71.3%、「70歳以上」43.9%となった。60代以下では、7割から9割が「賛成」と回答した。特に「20代以下」「40代」では9割以上が「賛成」と回答した。一方で、70歳以上の世代では、「賛成」は4割台に急落した。

20代、40代で高い賛成意見が出た中、間の世代となる「30代」では「賛成」の回答は、やや落ち込んで8割となった。

政府の人口動態調査によると、2022年の平均初婚年齢が女性では29.7歳となっていて、それを援用すると「結婚直後」(=30代)は、「結婚前」(=20代以下)と「結婚から10年後」(=40代)に比べて夫婦別姓導入に賛成意見が下がっていると言える答えとなった。

結婚直後には夫婦別姓導入賛成が減る傾向 ※画像はイメージ
結婚直後には夫婦別姓導入賛成が減る傾向 ※画像はイメージ
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個別の事情はさまざまで、平均初婚年齢との関連の断定はできないものの、男性年代別でも、平均初婚年齢との比較では、30代が落ち込む、同様の傾向がみられた。

続いて、男性の年代別を見ると、50代以上は、女性とほぼ同割合の回答となった。一方で、40代、30代、20代以下ではいずれも女性に比べて「賛成」の割合がどの世代とも2割ほど低い結果となった。若い世代では、女性がより“強く”選択的夫婦別姓を求めていることがわかる。名字変更は95%が女性であることから、通称使用、改姓によるキャリア分断や、さらにはダブルネームを疑われる不都合などを体験している女性が、選択的夫婦別姓の導入の必要性を、身をもって感じている結果と言える。

【選択的夫婦別姓に賛成 性別×年代別】
賛成   女性   男性
20代以下 93.3% 75.5%
30代   79.4% 60.8%
40代   91.7% 72.3%
50代   69.1% 65.2%
60代   71.3% 73.1%
70歳以上 43.9% 43.9%

自民支持層は「導入賛成」55%

「選択的夫婦別姓」を導入するには、民法改正が必要となる。民法750条は「夫婦は、婚姻の定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めている。結婚に伴う改姓の制度を変更するには国会での法改正が必要となる。経団連が政府や自民党に「選択的夫婦別姓」の導入を提言するのもこのためだ。

自民党内でも選択的夫婦別姓導入について議論がなされている 18日
自民党内でも選択的夫婦別姓導入について議論がなされている 18日

自民党では、7月18日に関連するワーキングチームの協議を「再開」した。「再開」というのは、自民党では3年前に同会議を発足させたが、当時は結論が出ず、旧姓の通称使用を拡大推進することを決めその後、休眠状態にあったものが、改めて議論を始めたという経緯になっている。結論が出なかった状況として自民党は「夫婦別姓導入に」慎重、反対の議員が多数いることがある。しかし、自民支持層の「選択的夫婦別姓」導入の意見を分析すると、「賛成」55.5%、「反対」38.3%となり、自民支持層では、導入「賛成」が反対を大きく上回っていることが世論調査から明らかになった。

「選択的夫婦別姓」をめぐっては、2021年に政府・内閣府が行った「家族の法制に関する世論調査」では、選択肢の設定が3択となっていて、①「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方が良い」27.0%、②「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方が良い」42.2%、③「選択的夫婦別姓制度を導入した方が良い」28.9%となっていて、夫婦別姓を導入せずに、通称使用を法律で整備するのが良いという世論が、当時は最も多い意見となっていた。

自民党が再開した議論や、経済界からの女性活躍推進を背景とした「選択的夫婦別姓」の導入を求める声が出る中、今後の議論が注目される

【選択的夫婦別姓の導入 支持政党別】
     賛成   反対
自民支持 55.5%  38.3%
立憲支持 66.7%  21.4%
維新支持 69.2%  26.0%
公明支持 65.5%  34.5%
共産支持 74.9%  21.3%
国民支持 65.9%  28.3% 

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。