“フェンシングの街” を目指す静岡県沼津市に期待の星が誕生した。中学生で全国2位となり、進学した高校を1年目からインターハイ出場へと導いた。学校にとって17年ぶりの快挙となる。“フェンシングの街”づくりを中心となって進める父と二人三脚で全国制覇を狙う。

“フェンシングの街”に期待の新星

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スピード感あふれる剣さばき、一瞬で繰り広げられる攻防。

フェンシングは互いの体を突いて勝敗を決めるスポーツで、沼津市は、そのフェンシングを通じた街づくりを進めている。東京五輪に向けて日本代表チームの合宿を誘致したことがきっかけで、2019年に日本フェンシング協会と全国初の包括連携協定を締結した。

沼津市長(右)と日本フェンシング協会・太田会長(当時)
沼津市長(右)と日本フェンシング協会・太田会長(当時)

トップ選手の育つ環境を作ろうと元五輪選手を市職員に迎えたほか、トレーニング施設も整備。また、学校や企業からも協力をえるため、2020年には「フェンシングのまち沼津推進協議会」を立ち上げ、官民一体で競技の普及や大会・合宿の誘致に取り組んでいる。

その沼津市に彗星の如く現れたのが沼津東高校1年 木村莉緒さん。

身長は163cmで、インターハイ優勝を目標としている。

弟の影響から8歳で競技に出会うと小学生で静岡県大会を制覇、中学生で全国2位とメキメキと頭角を現し、15歳以下の日本代表合宿にも参加。今や若手のホープとして期待されている。

「駆け引きや騙し合いにはまった」

木村さんはフェンシングに惹かれた理由について「メンタル面や剣での駆け引きなどすべてが勝負を左右する。相手との駆け引きにはまってしまった」と話す。

その駆け引きがポイントとなるのが、フェンシング3種目の1つ「フルーレ」だ。ほかの2種目より狙う場所が狭く頭や手足以外の胴体への攻撃が得点となるため、一瞬のスキを突かなければならない。

木村さんは相手を欺くフェイント、「ディガジェ」という技を織り交ぜ得点を奪うことに長けている。

「シンプルに剣を向けるだけだと相手はよけることができるので、シンプルな攻撃に見せかけて(相手の)剣をよけて突く」というのが、木村さんのスタイルだ。相手を惑わす剣さばきで一瞬の隙を作り出している。

沼津東高校フェンシング部
沼津東高校フェンシング部

木村さんはこのスタイルで高校の舞台でも静岡県を制し、団体戦で沼津東高校を17年ぶりの県大会優勝、インターハイ出場へと導いた。

父も“フェンシングの街” を推進

ただ、それは決して彼女ひとりの力ではない。

父・昌宏さんは競技の経験はないものの、周囲の勧めから「フェンシングのまち沼津推進協議会」の理事に抜擢され、日本代表の合宿誘致などを主導してきた。普段は税理士・社会保険労務士事務所を営んでいる。

昌宏さんは「フェンシングのまち沼津推進協議会」理事
昌宏さんは「フェンシングのまち沼津推進協議会」理事

父・昌宏さんは「まちがいなく子供がきっかけですね。フェンシングや勉強を頑張っている姿を見ると、自分も頑張ろうと思うし応援したい気持ち」と、理事を引き受けた理由を話す。

合宿で沼津を訪れた日本代表選手と
合宿で沼津を訪れた日本代表選手と

娘の莉緒さんも、昌宏さんたち推進協議会の合宿誘致のおかげで、「(日本代表の選手から)練習の仕方やファイティング(試合形式のトレーニング)で、スピード感・剣さばき・フットワークなどを学ぶことができた」と感謝する。父が尽力した代表合宿の誘致は娘のレベルアップへとつながっていた。

父娘で二人三脚

トレーニングを見守る父・昌宏さん
トレーニングを見守る父・昌宏さん

一方、環境面だけではない。

2023年、中学3年生だった莉緒さんが臀部を負傷した時には、フェンシングができない娘に寄り添うだけでなく、理学療法士を頼り、ケガの再発を防ぐための体の動きも一緒に学んだ。

二人三脚で歩んできた木村父娘。莉緒さんにとって父・昌宏さんは欠かせぬ存在だが、気になるところもあるそうだ。

父・昌宏さん:
(気になるところが)あるなら言っていいよ

娘・莉緒さん:
パンツで家の中を歩いちゃうところ

父・昌宏さん:
それはね、まあね ずっとだからね

思春期を迎えた娘を微笑ましく思う父・昌宏さん。莉緒さんの頑張る姿を常に見ているからこそ、推進協議会の理事の仕事に励み、娘へのサポートも欠かさない。

木村莉緒さん:
(父は)フェンシングでこうしたら強くなれるという部分をアドバイスしてくれたり、フェンシングに関わらずに人との関わり方など競技と離れた部分でも尊敬している

父・昌宏さん:
「いま足りてないことはなんだろう」という話を(娘と)して、何をやるべきか客観的に見られる部分が(自分には)ある。そこを伝えながら一緒に(目標に)向かっていけたら

高校での全国制覇を目指して

絆の深さが強さの証。

木村さんにとって、高校生になって初めての全国大会となるインターハイ。

高校で全国制覇を達成するため、フェンシングの街で育った女子高校生剣士は、父の支えを力に新たな一歩を踏み出そうとしている。

沼津東高校1年・木村莉緒さん:
自分が出せる全力は出して帰ってきたい。賞状やメダルを沼津のお世話になった人たちに届けたい

インターハイ北部九州総体2024は7月21日から開催されていて、木村さんが出場するフェンシングのフルーレは25日から行われる。

(テレビ静岡)

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