FNNの最新の世論調査でも内閣と自民党の支持率は低迷している。「BSフジLIVEプライムニュース」では伊吹文明元衆院議長と小林鷹之前経済安保相を迎え、“保守”をキーワードに低迷の原因と対策、今後進むべき方向を伺った。

2010年の自民党綱領に立ち戻れば活路は開ける

竹俣紅キャスター:
FNNの最新の世論調査では、岸田内閣の支持率は6月から6.1ポイント減の25.1%、「支持しない」は4.5ポイント増の68.9%。自民党の支持率は0.4ポイント減で25.1%、2023年11月以降20%台で推移している。低下の原因は。

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小林鷹之 前経済安保相:
駅頭活動や地元の集会で体感する温度とこの支持率に大きなずれはなく、強い危機感がある。一人ひとりが自民党を支えなければならない。政治資金の問題そのものと、それへの対応により支持率が下がってきている。一方で、岸田政権は国益の観点からすべきことは相応にやってきていると評価できる面もあると、私自身は思う。防衛力の抜本強化、原発の再稼働に関する発言など。これらは国民の皆さんにも評価いただいていると思う。だが全てに関してではないが、岸田総理は時折トップダウンで決められる。その決定プロセスに疑義を感じる方が増えていることも、支持率が低迷している一つの要因なのでは。

竹俣紅キャスター:
自民党が野党だった2010年、政権奪還を目指して設置された政権構想会議の座長を務めたのが伊吹さん。ここで決定された新しい自民党の綱領には「我が党は常に進歩を目指す保守政党である」「時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序の中に進歩を求める」「勇気を持って自由闊達に真実を語り協議し決断する」などと記されている。

伊吹文明 元衆院議長:
この党綱領は私が書いた。当時の与党民主党があまりにもリベラルすぎるため、そのアンチテーゼを出すためこういう文章にした。だが根本的な話として「保守」の定義をメディアも含めしっかりとやってから、自民党は保守政党なのかという議論をしなければいけない。リベラルは「俺はエリートだから、自由や民主主義の欠点を俺の人治で直していくんだ」という発想。保守は「個人は皆間違える」。だから間違えたときに立ち戻るべきものは、その民族が長い間かけて築き上げてきた伝統的な規範。社会の秩序の大部分はこの暗黙の了解で守られている。自民党の政策にはリベラル的なものも多く、保守政党の名に値するのかどうか。

小林鷹之 前経済安保相:
この綱領は非常によくできていると思う。確かに今の自民党が保守なのかリベラルなのかという問いはあるが、この綱領に戻れば自民党の、日本の活路は開けると思っている。「保守とは」については、日本なりの社会的規範があるはず。それは自助自立の気概、公への貢献、勤勉さ、謙虚さ、地域や家族の絆など。また私達人間は間違い得る存在であり、権力の行使は抑制的でなければいけない。綱領の中で極めて重要と思うのは「秩序の中に進歩を求める」。改革は急進的であるべきではなく、漸進的にやっていくこと。最悪なのは変えた後に何もない、無秩序が残ったという状況。

リーダーを育てるには“修羅場”が必要

反町理キャスター:
自民党の政治刷新本部が今年の1月から始まり、議論が行われている。

小林鷹之 前経済安保相:
政治刷新本部で私が申し上げたのは派閥の解消のあり方。旧派閥が抱えていた悪弊は当然あり、その解消はよいこと。だがこれまで派閥が果たしてきた役割はあり、例えば派閥により権力が分散されていたこと。また400人弱の国会議員がいる党のガバナンス上の役割。解消するなら代替案を合わせて考えなければ。

反町理キャスター:
岸田さんは当初、派閥の全否定ではなく金と人事を取り上げるのだと説明していた。

小林鷹之 前経済安保相:
それらを解消した形で新たな政策集団を作り、党内にいくつかの集団ができるのはいいと思う。それぞれの集団の中で、また集団間で健全な政策論争をして、自民党の活力をさらに高めていく流れをどう作っていけるか。

反町理キャスター:
その集団を代表する誰かの政策実現を応援しようとなれば、ポストを得たり総裁選に勝つことが必要になる。金が必要になるのでは。

小林鷹之 前経済安保相:
どうリーダーを育てていくかの問題。米大統領選でも、1年近い予備選という修羅場をくぐっていく。システムは違うが、中国やロシアのリーダーも修羅場をくぐっている。日本の政治でも、特に政権与党の自民党はそうした修羅場をくぐる機会を設ける必要がある。新しい政策集団がその役割を担うかもしれない。

伊吹文明 元衆院議長:
キックバックがあったからといって派閥が悪いわけじゃない。取り上げたお金と人事権はどこへ行くのか。最終的には執行部、総裁になる。抑制的に謙虚に動かしていくという、保守が一番大切にしている矜持・規範がなければどんな制度も悪くなる。今の自民党に欠けているのは「お天道様や世間様は見ている」という意識。

小林鷹之 前経済安保相:
伊吹先生のお話は腑に落ちる。政治刷新本部で私は、今回の政治資金に関する話はお金の話であり派閥の話ではないと申し上げた。

反町理キャスター:
お金の「入り」の規制を強化するのか「出」をクリアにして透明度を高めるのかという議論があった。後者の議論はあまり進んでいない印象だが。

小林鷹之 前経済安保相:
今回の問題の本質はルールを守らなかったことで、非常にシンプル。改正された政治資金規正法をとにかく誠実に遵守し、いくつかある検討項目にできる限り早く結論を出していくこと。ご指摘の話は、「出」の透明性は可能な限り高めていけばいい。しかし「入り」の規制については、健全な民主主義を担保する観点から冷静に考えた方がいい。国会議員としての職責を全うするために、人件費や家賃など必要経費はかかる。国政を志そうとする人の母体が裕福な人に偏りかねないことはリスク。若い方が志を持っていさえすれば国政に挑戦できる環境を整備していくことは私達の責任。

反町理キャスター:
では、なぜ「出」の透明性を高める議論が深まらなかったか。一番痛いところだから与野党ともにその話題を避けたのでは? 

小林鷹之 前経済安保相:
時間的な制約があったのかもしれないが、その点について国民の皆様に十分に理解いただいているとは思えない。改革は道半ば。しっかり与野党間で議論していけばいい。

小林氏「いつかは国の舵取りを担える人材になりたい」

竹俣紅キャスター:
9月に岸田総理が自民党総裁の任期を迎える。FNNの最新の世論調査では「次の自民党総裁にふさわしい人は」への回答トップが石破元幹事長の24.7%で、2位の小泉元環境大臣の2倍近く。小林さんは今回の調査では0.1%だったが、報道で名前が浮上している。

小林鷹之 前経済安保相:
私はいわゆる地盤・看板・カバンのない状況で国政を志した。まだ当選4回で知名度もない。そもそも世論調査の枠に入れていただいていること自体が非常に光栄。率直に受け止め、引き続き研鑽に励みたい。

反町理キャスター:
9月の総裁選は視野に入っている? 

小林鷹之 前経済安保相:
国政を志した時点から、いつかは国の舵取りを担える人材になりたいという思いを持って研鑽を積んでいるつもり。今はまだ政治家としての力を高めることに尽きる。

反町理キャスター:
いつになれば「出るぞ」となるか。自分で判断するか、周りから言われるか。

小林鷹之 前経済安保相:
政治は一人ではできない。(総裁選出馬に必要な)20人に推薦していただける人間にならなければ。だが日本のリーダーになることは、全ての国民の命や暮らし、国益を背負って各国のリーダーと対峙すること。最後は自分の意思で決めるべき。

竹俣紅キャスター:
国のリーダーになるため、どういうビジョンを掲げていきたいか。

小林鷹之 前経済安保相:
総裁選とは関係なく申し上げれば、目先の課題が今無数にある中、国が目指すべき方向性を打ち出すこと。国民の皆さんがそこに希望を感じ夢が持てること。日本を、世界をリードする国にしたいという思い。

反町理キャスター:
具体論としては。

小林鷹之 前経済安保相:
一つは、本当の意味で「自律」した国にしたい。他の国の動向に右往左往せず、日本はこういう戦略で国を運営していくということ。もう一つは世界に信頼されるだけでなく、世界から必要とされる国になること。そのためには国力を上げることが必要。国家戦略の根幹に、国民の暮らしを豊かにする経済と国民を守る安全保障があり、それらを下で支えるのがイノベーション。技術革新という狭い意味ではなく、社会に新しい価値を生み出す力。それを生み出しどう生かすか決めるのは人であり、全ての根幹には教育・人作りがある。非常に変化の早い世の中で、どういう状況に置かれても自らの頭で考えて決断し行動できる人間力のある人材を育むこと。

反町理キャスター:
総裁選に出たらどうか。今の話に他の候補者がどう答えるか、ものすごく興味がある。

伊吹文明 元衆院議長:
ちょっと小林さんは困るだろうから(助け船を)。今こう言えばうける、自民党に対してこういう批判をすれば知名度が上がる、という支持率の高め方を、私は彼にして欲しくない。じっくりやればいい。

小林鷹之 前経済安保相:
一点申し上げると、例えば私は自民党の所属の国会議員ならば誰しもが憲法改正すべきとの立場に立つと思う。だがそれを政局の打開策として使うのは違う。もう一点、自民党は改憲4項目を出しているが優先順位があり、私は緊急事態条項と自衛隊の憲法への明記の優先度が非常に高いと思っている。
(「BSフジLIVEプライムニュース」7月22日放送)