総務省とスタートアップ企業、投資会社が集まり、ICTスタートアップリーグのキックオフイベントが開催され、選ばれた26社が革新的な成長を目指す。専門家は、官民一体の支援の整備と、日本の特徴を活かした戦略がスタートアップの成長に重要であると述べた。
官民一体の取り組みで世界に誇れる企業へ
東京・千代田区で19日、総務省や投資会社などが集結し、日本の未来を担うスタートアップを企業、官民挙げて支援する「ICTスタートアップリーグ」のキックオフイベントが開催された。

イベントには、AIの講師からビジネスパーソン向けの英会話レッスンを受けられるアプリを開発している企業や、3Dディスプレイによる立体的なサイネージを提供する企業など、383の応募の中から選ばれた26の企業が集結した。

ICTスタートアップリーグとは、総務省が2023年度から開始した支援事業で、ICTを使った革新的な製品やサービスを提供するスタートアップに対し、成長に必要な「支援」と「競争」の場を、官民が一体となって提供する。

「リーグ」といっても、26社の総当たり戦が行われる、というわけではないという。

ICTスタートアップリーグ運営委員会・福田正委員長:
Jリーグが立ち上がり、ラグビーから、ダンスのDリーグから、スポーツ経済がこの30年で、すごく成功した。スタートアップもあやかってじゃないけど、日本から世界に勝てる新しいスタートアップが生まれればいいなと。

プロスポーツのようにメディアと連携し、その魅力を発信することや、出資のマッチング、データ提供など、出資とリターンにとどまらない支援を長期的に展開する。

ファボテクノロジーズ・石塚つばさ共同代表:
採択されたことで、多分いけるんじゃないかとすごく自信に繋がりました。このリーグを通していろんな方と繋がって、より成長できればなと。

ブライトヴォックス・灰谷公良CEO:
今回の機会をきっかけに、そのメンターだったり、事業支援者の方と一緒にこう世界に打って出ていきたい。
日本の未来を支えるスタートアップへの、必要な支援環境を整えることで、世界に誇れる企業の輩出を目指す。

ICTスタートアップリーグ運営委員会・福田正委員長:
このリーグの中で誰に対して勝ったか負けたかは分からない。でも必ず競争は生まれている。競争するという感覚がないスタートアップは、多分一生成功しない。適度な競争をどうやって提供すればいいのかというのが、このプログラムとしての最大の課題。
支援ネットワークの構築で成長を加速
「Live News α」では、デロイトトーマツグループの松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香キャスター:
この取り組みは、松江さんの会社も関わっているんですよね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
今回は、官民が一体となって取り組むことに意味があります。日本は近年「スタートアップ5か年計画」を掲げ、育成に注力していますが、官民が個々ばらばらに取り組む状況では限界があり、スピードとスケールにおいて課題があります。
そこで今回、「リーグ」を作ることで、官と民の様々なプレーヤーが一堂に集って取り組める環境ができたことに意義があります。
海老原キャスター:
具体的には、どういった取り組みを行っていくのでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
とりわけ、スタートアップ育成には、“支援ネットワーク”の存在がカギを握ります。仮にスタートアップが優れた技術を持っていても、資金、人材、特許の知見、海外マーケットへの接続ルートが不足すると、成長が加速しません。
そこで、各専門分野の支援が得られるネットワークを整えて、スタートアップを中核とする“コミュニティ”を作ることが重要です。
社会課題解決策を開発し世界展開へ
海老原キャスター:
そうした中で成長のポイントは。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
今後、ICT分野において日本のスタートアップが成長するには、グローバルが主戦場であるマーケットの中で、ICT技術を日本の2つの特長と掛け合わせる戦略を持つことが重要です。

まず一つ目の特徴は「ものづくりの強み」です。日本はハードウェアを中心とする、ものづくりが強みで、特に大学に技術の宝が多く眠っていますが、それら、ものづくりの技術とICTと掛け合わせることに勝機があります。
具体的には、今回のICTスタートアップリーグの採択企業にある自律走行型ロボットやセンサー、光学技術を生かしたICTの活用などが挙げられます。
海老原キャスター:
2つ目が社会課題の深さですね。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
人口減少や、過疎化等の深い社会課題を抱える日本だからこそ、ICTを用いた課題解決策を開発できれば世界に展開できる可能性が広がります。
例えば、人手不足下での自動運転などのモビリティーやIoTセンサーによるインフラの保守・管理などの災害対策、ヘルスケア分野でのAIや、VRの活用などの課題へのソリューション開発にチャンスがあります。
ICT技術は国境を越えて広がる世界において、官民一体での取り組みによって、日本の強みを生かして、世界に羽ばたくスタートアップが増える展開に期待します。
海老原キャスター:
スタートアップに留まらず、新たなことにチャレンジする人たちが、一歩を踏み出しやすくなる環境が整っていくといいなと感じます。
(「Live News α」7月19日放送分より)