「世紀の植物」と呼ばれるリュウゼツラン。花は「100年に一度しか咲かない」と言われるほど貴重であることからその異名がついた。一生に一度見られるかどうかの幻の花であるはずが、7月に入り全国的にリュウゼツラン開花のニュースを目にする中、長崎・平戸市でも7月16日リュウゼツランが開花したと一報が届いた。一生に一度見られるかどうかの幻の花であるはずが、なぜ開花が相次いでいるのか、専門家の見解は。
ついに開花!取材から12日後…
古くから海外との交流で栄えた歴史と観光の町・長崎県平戸市。平戸の名勝を見渡せるホテルで、いま話題になっているのが「リュウゼツラン」だ。竹のようにまっすぐ伸びた姿が独特の存在感を放っている。

日本語では「竜舌蘭」と書くがランの仲間ではない。リュウゼツランはアガベ属で世界中に300種類以上あると言われ、直径5センチほどの小さいものから大きいものでは5メートルを超えるものもあるという。テキーラの原料としても知られている。「100年に一度に咲く花」とも言われるリュウゼツランが花を咲かせるのではないかと平戸市で話題になっていた。

国際観光ホテル「旗松亭」小林則章副支配人は「なかなか見られない。一生に一度見られるかどうかの貴重なもの」と開花をいまかいまかと待ちわびていた。

ホテル関係者も観光客も世紀の瞬間を待ちわびる中、その瞬間は取材から12日後の7月16日に訪れた。

ホテルの小林副支配人が16日夕方リュウゼツランを見に行ったところ、長く伸びた茎の先に黄色い花が咲いていたという。
ぐーんと茎が伸びてきたら花が咲く?
そもそも「世紀の植物」とも呼ばれるリュウゼツランとはどんな植物なのか、九十九島動植物園森きらら・植物担当者によると、「アオノリュウゼツランという古くから親しまれている種類。観賞用として植栽されていた。10年から数十年に一度しか花を咲かせない。花は黄緑、白、黄色」と話す。

九十九島動植物園森きららの植物担当者によると、咲く前のある特徴的な前兆があるという。
地面に張りつくような株立ちで葉や茎を伸ばすリュウゼツラン。中心から茎がタワー状にそびえ立つように伸びてくるがその花茎が伸びてくるのは花が咲く前兆だという。平戸市のホテルにあるリュウゼツランはこの時の茎の高さは4.9メートルで(7月5日取材時)、6月末からぐんぐん茎を伸ばしていたという。
相次ぐ開花に専門家の見解は
幻の花であるはずリュウゼツランだが、2024年は全国各地で開花が相次いでいる。
7月に入ると神奈川県横浜市や東京・日比谷公園。さらには福岡県の国営海の中道海浜公園のフラワーミュージアムでも7メートルある茎の先に黄色い花を次々と咲かせている。

なぜ、幻の花の開花が各地で相次いでいるのか。九十九島動植物園森きらら・植物担当者に見解を聞いたところ、「やはり温暖化の影響ではないか。気温が高く暑い期間が前よりも長くなっていて、リュウゼツランの成長のスピードが早まっているのではないか。昔の日本は寒かったので」と100年まではいかないにしても数十年という長い時間をかけないと花が咲かなかったが、今はリュウゼツランにとって花を咲かせやすい、過ごしやすい気候になっているのでは、と推測している。
中南米原産の温暖な気候を好むリュウゼツランが、地球温暖化の影響とここ最近の暑さも相まって、日本各地で開花が相次いでいるのかもしれない。
グラバーさんも見ていた?幻の花
リュウゼツランは3年前の2021年7月長崎市の観光名所グラバー園の旧リンガー住宅横にあるリュウゼツランが花を咲かせていた。

当時、グラバー園には10株以上あり、いつ誰が植えたかは分からないという。
長崎の歴史的なランドマークとしても知られる「グラバー園」は、1859年(安政6年)の長崎開港後に長崎にやってきたイギリス人商人グラバー、リンガー、オルトの旧邸があった敷地に、市内に残っていた歴史的建造物が移築され、グラバーが暮らしたグラバー住宅などは「明治日本の産業革命遺産」の構成資産にも登録されている。

グラバー園 松田恵学芸員(当時):(かつて)グラバー住宅の横でも咲いていて昔、グラバーさんだったり息子の富三郎さんが住んでいた時もリュウゼツランが咲いていたということが写真を通して分かりました

グラバーさんも見ていたかもしれないリュウゼツランの花。取材から3年…その後グラバー園のリュウゼツランはどうなっているのか、園に尋ねると現在も株の状態で残っていた。

グラバー園によると、取材後に花は枯れてしまったが、現在はよく見ると真ん中に約50センチほどの小さな株があるという。リュウゼツランは枯れた後も子株を残すため、この小さな株は3年前に花を咲かせたリュウゼツランではないかと考えている。温暖な気候で成長のスピードが早まればグラバー園でもリュウゼツランの花が咲く日も近いかもしれない。
変わる地球環境によって、世紀の植物「リュウゼツラン」の開花は今後「数十年」から「数年」に一度というタイミングになる可能性もありそうだ。
(テレビ長崎)