例年、7月後半になると、年間で最も暑い時期に差しかかってくる。2024年もすでに厳しい暑さになってきているが、今年の夏の暑さはどうだろうか。

気象庁が7月18日に発表した1か月予報によると、日本付近は暖かい空気に覆われやすいため、8月中旬にかけて全国的に厳しい暑さになりそうだ。特に、8月上旬にかけては全国的に気温がかなり高いと予想されている。暑さへの対策を万全にしていきたい。

熱中症予防のための「暑さ指数」

熱中症予防のために使われている指標に「暑さ指数」がある。この指数には、気温や湿度の他に、日差しの強さや照り返しなどの影響も取り入れられている。

暑さ指数は、「熱中症予防情報サイト」(環境省)で確認でき、毎日発表される。地点ごとに現在の暑さ指数(実況)と予測が分かり、「警戒」「厳重警戒」「危険」などとランクで表されている。

暑さ指数の実況と予測 環境省HP熱中症予防情報サイトより
暑さ指数の実況と予測 環境省HP熱中症予防情報サイトより
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暑さ指数が「厳重警戒」となっているときには、外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に気を配る。激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。また、体力の低い人、暑さに弱い人は運動を軽減または中止することだ。

危険な暑さへの呼びかけ「熱中症警戒アラート」

さらに、暑さ指数が「危険」ランクの中でも特に高いときには「熱中症警戒アラート」が発表されている。危険性が極めて高くなると予測されている日には外出を控える、エアコンを適切に使用するなど対策をしよう。

熱中症警戒アラート 環境省HP熱中症予防情報サイトより
熱中症警戒アラート 環境省HP熱中症予防情報サイトより

熱中症警戒アラートは、環境省の「熱中症予防サイト」で確認できる他に、ニュースや天気予報などで知ることができる。また、メール配信サービスや、環境省公式アカウントによるLINE通知によっても入手可能だ。

さらに深刻な健康被害が発生し得る場合には「熱中症特別警戒アラート」が発表される。過去に例がないほどの危険な暑さが予想される日の前日に出される。この際には、家族や周囲の人々への見守りや声かけなどの行動を取ることも大切である。

屋内外のスポーツでの注意

体育館など室内でスポーツを行うときも熱中症には十分に気をつけよう。夏バテや睡眠不足、その日の体調次第では、それほど激しい運動をしていなくても熱中症を起こすことがある。

軽い運動や活動でも長い時間継続すると熱中症の危険度が高まる
軽い運動や活動でも長い時間継続すると熱中症の危険度が高まる

また、軽い運動や活動でも長い時間継続すると、熱中症の危険度が高くなるので油断は禁物である。

屋外で長く活動を続けるときは定期的に休憩を
屋外で長く活動を続けるときは定期的に休憩を

ゴルフやゲートボールでも、屋外で長く活動を続けるときは定期的に休憩をとり、暑さ対策をしっかりと行おう。

農作業や草むしり中の危険

農作業や草むしりなど、長い時間しゃがんでいた後、急に立ち上がるとクラッとすることがある。もしそのまま倒れてしまうと暑い環境の中に取り残され、さらに熱中症になると非常に危険な状況になってしまう。日中や長い時間の作業を避けるのはもちろんだが、意識的に屈伸運動をするなど、同じ体勢を避けるのも重要だ。

頭に汗をかき始めたら帽子は時々外し、汗を蒸発させたりタオルなどで頭を拭くことがオススメ
頭に汗をかき始めたら帽子は時々外し、汗を蒸発させたりタオルなどで頭を拭くことがオススメ

農作業や草むしり、外出のときには帽子で暑さ対策をする人も多いだろう。帽子は直射日光を避けてくれるが、頭に汗をかき始めたら帽子を時々外そう。頭皮からの汗の蒸発を進めたり、タオルやハンカチなどで頭を拭いたりした方が良い。汗をかいたままかぶり続けると逆効果になることがあるので気をつけよう。

水分補給に適した飲み物は?水分補給の目安

水分補給に適した飲み物は「大量に汗をかく」場合と、「それほど汗をかいていない」場合で違ってくる。

スポーツや野外で働いている人はスポーツドリンクや経口補水液などが適している
スポーツや野外で働いている人はスポーツドリンクや経口補水液などが適している

スポーツや野外で働いている人は「大量に汗をかく」ので、水分の他に体から出てしまう塩分などの補給も必要だ。このため、適度な塩分を含む飲み物が良く、スポーツドリンクや経口補水液などのドリンクが適している。

水と塩分を含んだ飴などを補給するのもよい
水と塩分を含んだ飴などを補給するのもよい

また、水と熱中症飴か塩飴と言われるキャンディーの組み合わせでも良さそうだ。飲み物の温度は5~15℃に冷えた物の方がより効果的だ。

運動や作業をするときの水分や塩分補給の目安は、始める前にコップ1~2杯、運動や作業中に20分~30分に1回。そして、終わった後も30分以内に摂ることだ。

一方で、「それほど汗をかかない」ときはスポーツドリンクの飲みすぎは糖分の摂りすぎになってしまうので、大人も子どもも冷たい水や麦茶の方がおすすめだ。1時間に1杯の水分を摂るように心がけよう。

小さな子どもや赤ちゃんを暑さから守ろう

総務省消防庁による熱中症救急搬送の状況(2023年5月~9月)によると、全国における熱中症の救急搬送人員の累計は、90,000人を超えた。そのうち、新生児と乳幼児は約800人にものぼっている。

乳幼児は大人よりも暑さに弱く、外に出るだけでも熱中症になりやすい。汗をかいたり、体温調節したりする機能がまだ発達途中だからである。このため、薄着1枚でエアコンの効いた部屋から暑い外などに移動する急な温度変化でも、体調を崩す原因になる。

ベビーカーに乗った乳幼児は地面に近く、大人より過酷な暑さにさらされる
ベビーカーに乗った乳幼児は地面に近く、大人より過酷な暑さにさらされる

特に、ベビーカーの乳幼児は地面に近く、照り返しや気温の上昇によって大人より過酷な暑さにさらされる。外出は一番暑い昼間を避け、出かけるときは保冷剤で冷やしたタオルを持参したり、ベビーカーやチャイルドシートを利用する際には保冷剤入りシートを背中に入れたりするなどの対策をしっかりする。赤ちゃんの肌に触れて、体温に気を配ろう。

また、ごく短い時間で車の中の温度は危険なレベルまで上がってしまうので、絶対に子どもやペットを車に残して離れてはいけない。

ペットも暑さに注意

夏の時期のペットの散歩は、朝早くや夕方以降の涼しい時間帯に行おう。犬や猫は、足の裏くらいしか汗をかけないので人間に比べると暑さに弱い。

ペットの散歩時は実際にアスファルトを触り熱さを確認することもおすすめ
ペットの散歩時は実際にアスファルトを触り熱さを確認することもおすすめ

夜の散歩でも、風が弱い日は地面に熱気が残っていることがある。靴を履いている人間と違って、犬は直接地面の上を歩くため、散歩に行くときは実際にアスファルトを触って熱さを確認するというのもおすすめだ。

また、室内で涼しく過ごしているペットも、2階や換気をしていない部屋、高い場所などは熱気がたまっている場合もあるので気をつける。

気分が悪くなったときの対処法

大量の汗をかいて、クラッとめまいがしたり、こむら返りが起きたりしたら熱中症になり始めのサインである。すぐに涼しい場所へ移動し、水分補給をすることが重要だ。

また、気分が悪くなったり、頭痛や吐き気を感じたり、体に力が入らなくなったりすると熱中症の症状が進んでいる可能性がある。すぐに涼しい場所へ移動し、体を濡らして風を当てたり、太い血管が通る首の後ろや脇の下、太ももの付け根を冷やしたりするなど一刻も早い対処を心がけよう。

気分が悪くなったり、頭痛や吐き気、体に力が入らないなどは熱中症が進んでいる可能性も
気分が悪くなったり、頭痛や吐き気、体に力が入らないなどは熱中症が進んでいる可能性も

呼びかけに答えられないときは即座に救急車を呼ぼう。また、水分を自力で摂取できなかったり、水分・塩分を補給して、涼しい場所に避難したりしても症状が良くならない場合は医療機関を受診することだ。

この夏は、熱中症にならないよう、さっそく暑さ予報などの情報を毎日活用しよう。
【執筆:日本気象協会】

日本気象協会
日本気象協会

日本気象協会は1950年の設立以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行ってきました。2023年7月1日現在、355人の気象予報士が所属しています。
昨今、気象の激甚化や地球温暖化、エネルギー問題、情報化社会の進化、超高齢化・少子化社会の到来など、世の中の状況が大きく変化してきています。
日本気象協会の最大の強みは調査解析技術とリアルタイムに情報を提供できる技術を併せ持つこと。
世の中の変化に対して、強みを生かし法人や個人のお客様とともに、「自然界と調和した社会」の創生を目指し未来を切り開いてまいります。