梅雨の期間でも、晴れ間を狙って海や川でのレジャーを楽しむことが増えてきた。ただ、水のレジャーには多くの危険を伴っており、毎年命に関わる水の事故が多発している。警察庁によると2023年の7月から8月の夏期だけで、死者・行方不明者の数は236人にものぼる。

こうした水の事故を未然に防ぐために、海・川・湖それぞれのスポットでの注意点と準備事項を確認しておきたい。

天気予報や潮位の変化をチェック

海は、遠浅や急に深くなっている場所、砂地や岩場、海底の地形などによってその表情は大きく異なっている。また、そのときの天気によっても短時間で海の状況は大きく変化する。

最新の天気予報をチェック
最新の天気予報をチェック
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海に出かける前には最新の天気予報をチェックしておくことが重要だ。天気や波の高さを確認しよう。気象条件が悪く、海が荒れることが予想される場合は予定を変更し、無理に出かけないことが大切である。

海では潮位も大切な情報であるため、潮の変化も調べておきたい。干潮や満潮によって水位が大きく変動し、予期せぬ深さになることがある。満潮や干潮の時間帯や、大潮の時期にあたるのかなどを事前に確認し、安全な時間帯に海に入るようにしよう。

禁止区域は避ける!1人で行動しない!

晴れて、波が穏やかに見える場合でも、「立入禁止」「遊泳禁止」などと表示がある海には絶対に近づかないことが大切だ。ライフセーバーや監視員などが常にいる海水浴場や、管理された海釣り施設などを利用して安全に海のレジャーを楽しもう。

穏やかに見えても遊泳禁止の海には近づかない 資料映像
穏やかに見えても遊泳禁止の海には近づかない 資料映像

また、海では常に誰かと一緒に行動するようにする。これにより、緊急時に助かる可能性が高くなる。出掛ける際には、家族や関係者に行き先や帰宅時間を伝えておくと、万一のときにも異常に気付くきっかけとなり、速やかな救助にもつながる。

海では常に誰かと一緒に行動することが大事 資料映像
海では常に誰かと一緒に行動することが大事 資料映像

さらに、海上における事故・事件の緊急通報用電話番号として、海上保安庁の118番を同行者と共に周知確認しておくことも重要だ。

準備運動は忘れずに!飲酒後は泳がない!

大人も子どもも安全に海を楽しむために、泳ぐ前には準備運動を忘れずにしよう。波や潮の流れの中で泳ぐのは普段使わない筋肉を使う場合があるので、けいれんなどを起こさないようにするためにも準備運動は大切である。

飲酒後の海水浴中の事故の死亡率は2倍に 画像はイメージ
飲酒後の海水浴中の事故の死亡率は2倍に 画像はイメージ

当然のことながら、飲酒後の遊泳は大変危険だ。海上保安庁によると、飲酒をして海水浴中に事故に遭った人の死亡率は、飲酒をしていない人の約2倍も高くなっている。

ライフジャケットの着用と点検

水の事故で生死を分けるくらい重要なのが、ライフジャケットの着用である。水中に落ちたときに、ジャケットが脱げてしまったり、膨張式のジャケットが膨らまなかったりといったことがないようにジャケットのサイズ確認と事前の点検をしておこう。

ライフジャケットが生死をわけることも
ライフジャケットが生死をわけることも

子どもの事故も毎年各地で相次いでいる。小さな波にも足をすくわれ、沖に流されたり溺れたりすることもあるので、ライフジャケットをしっかりと着用させ、常に子どもから目を離さないようにしよう。

明るく目立つ色の衣服や水着にすることで、人混みや水中でも見つけやすく、視認しやすい装いで工夫するのも有効な手段の1つだ。

突然の大波、巨大波に注意!

海の波には、海上で吹いている風によって発生する「風浪」と、沖合にある台風などによって発生する「うねり」の2種類あり、まとめて「波浪」と呼ばれている。

風浪は風が弱まってくると次第におさまってくるが、うねりは風の強弱に関係なく、穏やかな日でも波が高くなることがある。うねりは沖合ではゆったりと見えることもあるが、海岸では急激に高くなり、波にさらわれる事故が起こってしまう。

突然の大波、巨大波に注意
突然の大波、巨大波に注意

危険なうねりの代表例は「土用波」である。数千km南の台風周辺で発生した波が日本の沿岸まで伝わってきたものだ。それは非常に高速で、時には時速50km以上に達することもあるので、とても危険である。

また、その他にも注意が必要なのは、突然の大波や巨大波(「三角波」や「一発大波」と呼ばれる)だ。複数の大波が偶然重なり合うと、とてつもない大波が出現するので危険である。

脱出困難な「離岸流」から抜け出す方法は?

海水浴などで怖いのは「離岸流(リップカレント)」だ。海岸から沖へ向かって強く流れる水流のことで、この流れに巻き込まれると、大人でも泳いで岸に戻るのが困難な状況に陥る。海水浴シーズンにおける大きな事故要因の1つだ。

海水浴では「離岸流」に注意
海水浴では「離岸流」に注意

もし離岸流に流されてしまったら、まずは慌てないことだ。離岸流の幅は10mから30mほどで無理に陸に向かって泳ごうとせず、海岸と平行に(横方向に)泳いで離岸流から脱出する。風が強いときや、泳ぎに自信がない場合には無理に抵抗して泳がず、浮いて救助を待つことも有効だ。

川の危険 急な増水とサインは?

川は海とはまた違う危険が多々あり、川のレジャーでは急な増水に特に注意を払う必要がある。

大雨ではないことがもちろん前提だが、安全と思われる場所でも、上流での豪雨によって、川が短時間に増水することがある。事前に最新の天気予報を確認し、上流を含めた天気も常に気にかけておこう。

晴れていても上流での大雨で増水することも 画像はイメージ
晴れていても上流での大雨で増水することも 画像はイメージ

川の水が急に増えるサインがある。それは、上流の空に黒い雲が見える、ゴロゴロと雷の鳴る音が聞こえる、雨が降り始めたときなどである。また、川の変化としては、落ち葉や流木、ゴミが流れてくる、水が急に冷たく感じる、水位が急に低くなった、このようなときは川が増水するおそれがあるため、すぐに避難しよう。

河原で草が生えていない場所は増水時は水没する危険 画像はイメージ
河原で草が生えていない場所は増水時は水没する危険 画像はイメージ

特に中州では、増水すると取り残されてしまう危険がある。河原に草が生えていない所があれば、増水したときには水が流れている所であることを表している。このような場所では特に注意が必要である。また、川幅が狭い場所は増水すると短時間のうちに水位が上昇し、川の流れが速くなるおそれがある。

穏やかな川にも潜む突然の深み

流れの強い場所は目に見えて危険だと分かるが、突然深くなる場所にも注意が必要だ。このような場所は、川の流れも穏やかで安全そうに見えるため油断しがちである。はじめは足が着いていても急に深くなり、足が届かなくなるところもあるので気をつけよう。

深みにはまると水流に流されやすく…
深みにはまると水流に流されやすく…

人は腰より深いところだと、川の流れの影響を強く受けるようになる。水深がひざ下までのところで遊んでいれば流れの影響も少なく、急な深みにはまる可能性も少なくなる。それでも、万一に備えてライフジャケットを着用し、安全を確保したい。

湖では山からの突風に注意

海や川と比べて穏やかなイメージがある湖だが、突風に注意が必要だ。湖では山に囲まれていることが多いため、山から吹き降りる突風によって、ボートなどが転覆するリスクがある。湖に出る前には天気予報を確認し、風が強い日は避けよう。

湖では突風に注意
湖では突風に注意

また、深い湖では表面が暖かくても、深い部分は非常に冷たいことがある。水草や藻などが多く生息しており、これらに絡まることで自由に泳げなくなることがある。特に足を取られるとパニックに陥りやすいため気をつけたい。

水のレジャーをどれだけ楽しみにしていても、体調が悪いときに水に入るのは危険なため避けよう。自身の体調を把握して、疲れていたり、睡眠不足だったりする場合などは決して無理をしないことが大切だ。

安全に楽しむためにも、海・川・湖それぞれの特有のリスクを理解し、事前に準備をする。それが事故を未然に防ぐための最善の方法である。日頃から安全意識を高く持ち、水との楽しい時間を過ごそう。

【執筆:日本気象協会】

日本気象協会
日本気象協会

日本気象協会は1950年の設立以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行ってきました。2023年7月1日現在、355人の気象予報士が所属しています。
昨今、気象の激甚化や地球温暖化、エネルギー問題、情報化社会の進化、超高齢化・少子化社会の到来など、世の中の状況が大きく変化してきています。
日本気象協会の最大の強みは調査解析技術とリアルタイムに情報を提供できる技術を併せ持つこと。
世の中の変化に対して、強みを生かし法人や個人のお客様とともに、「自然界と調和した社会」の創生を目指し未来を切り開いてまいります。