7月5日に鳥取県内最速の海開きを迎えた白兎海水浴場。コロナ禍に加えて人員不足などの課題を抱えていたことから、5年ぶりの海開きとなった。一方、施設の老朽化や管理者の高齢化などの波に抗えず、海開きを断念した海水浴場もある。関係者の苦悩を取材した。

5年ぶりの海開きで期待膨らむ

本格的な夏の訪れを待ちわびるように、鳥取県内有数の海水浴場である鳥取市の白兎(はくと)海岸が5日、海開きを迎えた。

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海開きの神事では、市や観光協会の関係者など約20人が海水浴場の安全を祈った。

白兎観光協会の和田俊彦会長は「いつまでも開設しないということはできないという使命感があり、今年からはイメージを変えて開設した」と話す。

白兎海水浴場が海開きするのは、実に5年ぶりだ。新型コロナウイルスに加え、監視員の人員不足や経費などの理由で、2020年から海水浴場として開設されていなかった。

しかし今回、地域の観光面への影響を踏まえ、地元企業とキッチンカーの出店契約を結んだことで黒字化に目処が立ち、なんとか開設に漕ぎつけたとしている。

海開き初日の白兎海水浴場には人の姿がなかった
海開き初日の白兎海水浴場には人の姿がなかった

ただ、海開きをして海水浴シーズンの初日を迎えたものの、海水浴場に見渡す限り人の姿はなく、寂しい海開きとなった。

海開きの日は例年、近くの小学校の児童が招かれ、大きな歓声が響いていたが、熱中症のリスクを考慮して児童の招待を廃止した。平日でしかも猛烈な暑さのせいか、一般の海水浴客の姿もなく、少し寂しい幕開けとなったが、関係者は5年ぶりの海開きに期待を膨らませていた。

白兎観光協会・和田俊彦会長:
暑い夏を期待していて、まずはお客さんに喜んでいただくこと、リピーターが増えることを大きな目標に、やり方を少しずつ変えながらやっていこうと思っています

白兎観光協会はこの夏、コロナ禍前と同じ約8000人の来場を見込んでいる。

老朽化に予算不足…無念の海開き断念

一方、鳥取・琴浦町にある八橋(やばせ)海水浴場は、新型コロナの影響で2021年から休業が続いている。

2023年の新型コロナ5類移行後には、多くの海水浴場が再開したが、この海水浴場では2024年も開設が見送られた。その理由は施設の老朽化と予算不足だ。

八橋海水浴場を運営してきたやばせ振興会の清水重行さんは「(休憩所に設置する)パネルも傷んできましたし、一からいろいろな事を整備しないといけないということで予算的にも…」と厳しい現状を吐露した。

休憩所で使う備品や看板などは老朽化し、砂浜の近くにある備品などを保管する小屋の扉は釘で打ち付けられ、4年間閉じられたままだ。

さらに、清水さんは「監視体制も責任をどうとるかということを問われると、やっぱり難しいということで、やめることになりました」と話し、高齢化などで振興会のメンバーが不足していることによって、監視などの対応が難しくなったことも開設できない理由の1つだという。

朝ドラで地域振興の好機だったが…

広く遠浅の海岸が続く八橋海水浴場は、県内有数の人気を誇る海水浴場だった。

清水さんは「子どもや大人がいっぱいで、飛び込み台もあったりして本当ににぎやかで、海水浴専用列車が来るほどすごい海水浴場だった」と当時を懐かしむ。

さらに時をさかのぼれば、明治時代に松江ゆかりの文豪・小泉八雲が、妻のセツと新婚旅行で訪れていた場所だ。

2人を題材にした連続ドラマの放送も決まり、注目のスポットになることで地元を盛り上げる絶好の機会になるはずだが、海水浴場として開設できず、清水さんも「もったいない」と口惜しさを滲ませた。

やばせ振興会・清水重行さん:
本当はやはり海で楽しんでもらいたいなという思いがありますね。時代の流れといいますか、昔を取り戻そうと思っても無理がありますね

鳥取県内では、5日の白兎海水浴場を皮切りに8カ所の海水浴場で海開きされる一方、八橋を含め3つの海水浴場が開設を断念している。県は、海水浴場として開設されていない場所では水難事故の危険性が高いため、遊泳しないよう呼び掛けている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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