女子中高生に理系の職業に関心を持ってもらうためのオフィスツアーが開催された。参加企業は、多様な商品開発のために女性社員の重要性を強調。専門家は、理系女性のイメージ向上のために具体的な職業体験が重要だと指摘した。
「女子も理系に」企業や研究機関でツアー
東京・千代田区のLINEヤフーで行われた記者会見に現れたのは、制服姿の女子中高生だ。

山田進太郎D&I財団が主催し、11日からスタートした「Girls Meet STEM Career(ガールズ ミート ステム キャリア)」。

女子中高生に理系の職業に関心を持ってもらうため、旭化成やNTTなど、16の企業や研究機関が、順次オフィスツアーを開催する取り組みだ。
11日は、女子中高生がLINEヤフーのオフィスを訪れた。

「Hello everyone……すごーい!」
参加者は、初めて触れるテクノロジーに興味津々の様子。さらに、女性社員との交流会も行われた。

高校1年生:
理系って頭が良くて数字に強いイメージがあったんですけど、多様性を重要視して、会社全体でより良い環境を作っていると感じました。

中学3年生:
家でやったら集中力続かないから、こういう会社うれしいかも。
中学3年生:
フルフレックス制度いいよね。めっちゃ面白かった。

リアルな体験を通じ、理系への新たな価値観を育てる今回の試み。背景にあるのは、伸び悩む理系女性の割合だ。

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、日本は、理系分野に占める女性の割合が、調査した加盟国の中で最下位だった。
参加企業も、多様な商品を生み出すには、女性社員の存在が必要不可欠だと説明する。

LINEヤフー執行役員 サステナビリティ推進統括本部長・西田修一さん:
エンジニアの男女比率は8割が男性となっていて、(男女)どちらの観点も押さえられるサービス、そういうところに女性の視点も、しっかりと生かしていく必要がある。

三菱電機DE&I推進室・金元真希室長:
男性だけが開発・マーケティングしていると、偏りが出てくる製品がたくさんあるので、実際に、女性視点を取り入れることで、女性が使いやすいような製品が生まれた例もある。

公益財団法人山田進太郎D&I財団 Girls Meet STEM 中高生事業担当・榊原華帆さん:
男子は理系で女子は文系みたいな、まだまだジェンダーバイアスが存在すると思っていて、どんな仕事・生き方が待っているのか解像度が低い状態。まずは体験を中学・高校のうちに、理系としての仕事や大学の学びを知ることで、それ(理系)を選ぶきっかけになると思っている。
理系女性が少ない背景に“職業イメージ”不足
「Live News α」では、科学技術分野でのジェンダーギャップの解消を目指す、山田進太郎D&I財団COOの、石倉秀明さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
今回の試みで、どんな手ごたえを感じましたか。

山田進太郎D&I財団COO・石倉秀明さん:
財団として過去活動してきた中でも、STEM、つまり理系領域で働く人の話を聞いたり、実際に職業体験をすると、ガラッとイメージが変わるというデータも出てきています。
例えば、理系の仕事は、女性に向いていると感じる人が約9倍、親しみを持てたという人が約4倍になるなど、一回の体験でもかなりイメージが変わるようです。
堤 キャスター:
理系に進む女性が少ないというデータがあるわけですが、この背景には何があるのでしょうか。
山田進太郎D&I財団COO・石倉秀明さん:
理系に進学したり、理系の仕事をする女性が少ないので、結局、中高生も理系のイメージがつかないという構造的な課題があります。
今だと、大学で学ぶ分野と職業の繋がりが見えないまま、文理選択したり、学部を選んだりすることが多いのではないかと思います。
様々な体験を通して、具体的に職業を知ったり、イメージできることによって中高生にとっても、「ああしておけばよかった」と後悔することを減らせれば良いなとも思います。
企業と財団の連携でより多くの女子中高生にリーチ
堤 キャスター:
一方の企業は、今回の取り組みに、どんな期待があるのでしょうか。

山田進太郎D&I財団COO・石倉秀明さん:
企業にとっても、メリットが大きいです。理系分野の専門性を持つ、女性の採用は喫緊の課題になっていますが、どうしても、今の大学生だけにアプローチしても、そもそも母数が少ないので解決しにくいという懸念があります。
ではいざ、中高生にアプローチしようとなっても、1企業単体だとリーチできる中高生には、どうしても限りが出てしまいます。
だからこそ、財団のような存在がハブになり、多くの会社がそこに参画し、協力して取り組むことで、より多くの中高生にリーチできる実情があります。
また、名だたる企業が参画することで、社会全体で本当に理系領域の女性を必要としている、理系に進むことを応援しているという強いメッセージが打ち出せるのではないかと思います。
ある意味で、営利企業と非営利組織が連携することが、社会に最も大きなインパクトを出すことに繋がるという先例になれたらうれしいと思います。
堤キャスター:
実際の体験や、ロールモデルとの出会いが誰もが自分の力を存分に発揮できるように、後押ししてくれるのかもしれませんね。
(「Live News α」7月11日放送分より)