5月に長崎・大村市が男性の同性カップルの住民票の続柄に男女の事実婚関係を表す「夫(未届)」と表記したことについて、総務省は「実務上の問題がある」との見解を示した。これに対し大村市の園田市長は「記載内容を修正しない」と述べ、国に質問状を送り、改めて見解を求める方針だ。

国は「実務上の問題」を指摘

事の発端は2024年5月、大村市が男性の同性カップルに対し、住民票の続柄の欄に男女の事実婚の関係を示すときに使う「夫(未届)」と記載し、交付したことだ。

大村市は5月2日、「夫(未届)」と表記した住民票を受理
大村市は5月2日、「夫(未届)」と表記した住民票を受理
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大村市の園田市長は「判断は自治体の裁量の範囲内」とした一方、総務省は「同性カップルの場合は『同居人』や『縁故者』と書くのが一般的」としていた。

総務省は「実務上の支障をきたす」と回答
総務省は「実務上の支障をきたす」と回答

ところが7月8日、総務省は「住民票の続柄を見て各種社会保障を適用できるか判断出来なくなるため『実務上の問題がある』」との見解を示した。

当事者の二人は「がっかりして残念」と語った
当事者の二人は「がっかりして残念」と語った

これを受けて当事者の松浦慶太さんは「内容的にはあまりうれしくない。がっかりして残念」。藤山裕太郎さんは「いち市民に寄り添った判断をしてもらいたい。同じ人間として平等に対応してほしい」と胸の内を語った。

大村市は「記載を否定する根拠はない」

総務省の見解を受け、大村市の園田市長は9日会見を開き「事務処理の要領に記載を否定する根拠はなく、現段階で訂正は考えていない」と話した。

大村市長は「現段階で訂正は考えていない」と話した
大村市長は「現段階で訂正は考えていない」と話した

大村市・園田裕史市長:
記載が妥当ではないと判断する場合は総務省が示している事務処理要領を改正する必要があると思う。これは大村市に限った話ではなく、全国の自治事務処理要領の在り方が変わる、国の制度が変わるということになる。そういったことを国が進めていくのかも一つの論点になる。

大村市は総務省に対し、今回の回答の疑問点をまとめた質問状を送付し、改めて見解を求める考えだ。

一連の動きを受けて、総務省は9日に各都道府県に文書で大村市に示した国の見解を文書で送付した。県によると「大村市に回答したので、参考までに情報提供する。この内容を市区町村に周知してほしい」という文言と大村市への見解が記載されていたという。県は10日、大村市を含む県内21の市町に書面を送付した。

これを受けて当事者の松浦さんは「一定の圧力に感じる自治体もあると思う。国には住民に寄り添った方向性で動いてほしい」と話している。

専門家は「国が基準を明確にすべき」

今回の一連の件を受けて長崎大学多文化社会学部の河村有教准教授は、「性別の多様性における基準は複雑化しがちで、他の自治体でも同じような問題が起きる可能性がある。社会保障の適用を続柄以外で判断することを決めるなど国が基準を明確にすべき」と警鐘を鳴らす。

(テレビ長崎)

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