東京都内で国際宇宙ビジネスカンファレンスが開催され、宇宙飛行士の若田光一さんや山崎直子さんが登壇し、宇宙ビジネスの展望について議論した。
専門家は、さまざまな企業が宇宙ビジネスへ参入し、新たな潮流が日本から生まれることを期待している。
宇宙の可能性に約35の国・地域が参加
宇宙ビジネスの広がりを促すカンファレンスが開かれた。

8日から3日間にわたり都内で行われたのは、最先端の宇宙ビジネスについて議論する、国際宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE(スペースタイド)」。

SPACETIDE 代表理事兼 CEO・石田真康さん:
宇宙ビジネスに関わるあらゆる方が1カ所に集まることによって、いろんな議論をして、そこから新しい潮流をつくっていこうと。

経済産業省の発表によると、日本の宇宙ビジネスの市場規模は約4兆円で、政府は2030年には、倍の8兆円を目指している。

異業種の参入やスタートアップなども増え、盛り上がりを見せる宇宙ビジネス。
しかし、日本は技術力はあるものの、ビジネスに転換することが十分にできていないという課題がある。

そんな中、「多様なコミュニティーが紡ぐ宇宙ビジネス」をコンセプトに開催された今回のイベント。

約35の国と地域が参加し、今後、宇宙での活躍が期待される月面探査車の展示や、約50のセッションも行われた。
宇宙飛行士の若田光一さんと山崎直子さんも登壇し、宇宙ビジネスの最前線や今後について議論した。

宇宙飛行士・若田光一さん:
企業間のコラボレーション、そして、官民のパートナーシップがあることによって、イノベーションのペースが、すごく格段に上がってくると思う。

宇宙飛行士・山崎直子さん:
ぜひ身近な目で宇宙を見ていただいて、そして、接点をどんどんとつくっていっていただきたい。もちろん自分もまた宇宙に戻りたいが、いろんな人と一緒に宇宙行けたらいいな、戻れたらいいな、そのための社会づくりができたらいいなと思っております。

SPACETIDE 代表理事兼 CEO・石田真康さん:
宇宙産業全体としては成長産業なので、近い将来は多くの個人の方が入っていく、宇宙が個人にとって近くなる時代が、おそらく今後の成長の鍵になってくいかなと。
宇宙ビジネスの可能性は、無限大に広がる。
100兆円市場へ日本の異業種企業も時流に
「Live News α」では、市場の分析や企業経営にくわしい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
ーー宇宙ビジネスの広がりをテーマとしたカンファレンス、馬渕さんは、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
宇宙ビジネスの裾野を広げていくためには、これまで宇宙とは接点がなかったさまざまな企業の参入が鍵になります。
例えば、化粧品大手のポーラは、宇宙で使える化粧品に参入を果たしました。ISS(国際宇宙ステーション)の内部は、砂漠と同じような湿度のため、宇宙飛行士は乾燥肌がストレスになっていました。
そこでポーラは、宇宙では貴重な水を使わないクレンジングや保湿クリームを開発して、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に採用されました。こうした宇宙発想の技術は、一般販売された商品にもフィードバックされています。
堤 キャスター:
ーーこの分野で、日本の企業が存在感を示せるといいですね。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
宇宙ビジネス市場は、2040年までに100兆円規模に膨らむとされています。この大きな波に乗ろうと、多くの日本企業が宇宙ビジネスに参画しています。
例えば、三菱重工が手がけるH-2Aロケットは、約1000社ものサプライチェーンが関わる巨大事業です。ほかにも住友林業の「木造の人工衛星」は、世界初のユニークな試みで、夢がありますよね。
宇宙ベンチャー上場加速で新潮流に期待
堤 キャスター:
ーースタートアップについては、いかがですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本でも宇宙ベンチャー企業の上場が相次いでいて、2023年だけでも3社が株式公開を果たしました。
宇宙開発の新興企業として、日本で初めて上場を果たしたアイスペース社は、月面への輸送サービスを目指していて、アメリカが約半世紀ぶりに月に人類を送り込む「アルテミス計画」にも参加が予定されています。
堤 キャスター:
宇宙ビジネスに参入する企業を増やすためには、どんなことが必要になるのでしょうか。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
今回のようなカンファレンスも重要で魅力ですが、その先にある実務レベルの交流がポイントになります。
交流を通じて、新しい事業連携や、新しいビジネスの芽が生まれることはよくあります。新たな宇宙ビジネスの潮流が、日本から生まれることを期待したいです。
堤 キャスター:
宇宙には、地球や人類が抱える課題を解決するための鍵がたくさんあるといわれています。
宇宙開発が進むことで、私たちの暮らしや、地球の未来が、より明るいものになることを期待したいです。
(「Live News α」7月10日放送分より)