三井住友銀行は、振込手数料を引き下げることを発表し、インターネットバンキングを利用した振込手数料が3万円以上の場合、220円となる。
専門家は、手数料引き下げは顧客獲得を狙った施策であり、ネット銀行・信託銀行など新たなライバルが増えていると指摘している。

現金振り込みは手数料引き上げに

三井住友銀行が、2024年10月から振込手数料を引き下げる。

振込手数料の引き下げを発表した三井住友銀行
振込手数料の引き下げを発表した三井住友銀行
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三井住友銀行は、インターネットバンキング「SMBCダイレクト」を使用した場合の振込手数料を、ほかの銀行宛ての場合、振込金額3万円以上は330円と設定しているが、2024年10月1日からは220円に引き下げる。

ATM(現金自動預払機)利用で三井住友銀行の別店舗への振込手数料が無料に
ATM(現金自動預払機)利用で三井住友銀行の別店舗への振込手数料が無料に

また、キャッシュカードを使って振り込む場合は、三井住友銀行の別の店舗の口座宛ての場合、110円かかっている手数料を無料にする。
一方、現金を使って振り込む場合の手数料は引き上げる。

日銀によるマイナス金利解除で金利による利益拡大が見込まれる中、手数料引き下げにより、預金獲得を強化する狙いがある。

競争激化…ネット・信託銀行が台頭に

「Live News α」では、市場の分析や企業経営にくわしい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーー振込手数料の引き下げ、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
これは、ありがたいですよね。銀行は金利が上昇すると、収入が増えます。すると今回のように、手数料の引き下げや預金利息の引き上げが可能になります。これには、顧客の獲得、預金者を増やす狙いがあります。

銀行は、預金口座の数や預金量が伸びると事業を拡大させることができるので、預金の奪い合いは負けられない戦いです。ただ、メガバンクのライバルは、メガバンクだけではなくなってきています。

堤キャスター:
ーーそれは、どういうことでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
例えば、スマホ決済アプリに強みを持つPayPay銀行や、ネット通販で独自の経済圏を持つ楽天銀行などは、コストがかかるリアル店舗を持たないため、その分、顧客に有利なサービスを提案できます。

主要なネット銀行6行の預金残高は33兆円となり、コロナ禍前と比べて2倍以上に増えています。さらには、富裕層向けビジネスなどに強みを持つ、信託銀行も当然ライバルとなります。

資産保有に多様な選択肢広がる

堤キャスター:
ーー「金利がある世界」をイメージして、預金者の獲得競争が加速しているわけですね?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
これは、私独自のとらえ方になりますが、預けたお金に金利が付くようになると、「預金」という行為がコモディティー化すると考えています。コモディティーとは、代わりとなる存在がほかにもある、ユーザーにとっては選択肢が広がるということです。

これまでは、どこかにお金を預ける場合、この「どこか」は銀行が中心でした。それが「株」、「債券」、「ゴールド」といった、銀行預金に代わるもので資産を保有しようとする動きが加速しています。

こうした金融資産の持ち方は世界的には普通のことで、アメリカの一般的な家計では「現金・預金」の割合は12%ほどしかなく、その半分以上は「株式や投資信託」となっています。   

日本でも、「どこの金融機関に資産を置きたいか」、「何で資産を持ちたいか」、そんなことを考える時代になったのかもしれません。

堤キャスター:
ネット銀行などでは、すでに手数料が無料の場合も多く、メガバンクと使い分けている方も多いように思います。
サービス競争が進むことで、私たちユーザーの選択肢が増えることを期待したいです。
(「Live News α」7月9日放送分より)

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