若い世代がさまざまな形で戦争について考えて記憶を継承しようと取り組む中、首里高校ダンス部は「創作ダンス」で平和の尊さや戦争の悲惨さを発信している。試行錯誤を繰り返しながら完成させた高校生たちの思いを取材した。

ダンスで沖縄戦を表現したきっかけは?

新聞を読む人や洗濯物を干す人、そんな何気ない日常が一瞬にして奪われてしまう戦争。

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2024年1月のダンスフェスティバルで最優秀賞を獲得し、5年ぶりに全国大会への切符を手にした首里高校ダンス部がテーマにしたのが「沖縄戦」

79年前の沖縄戦の恐ろしさや悲惨さを表現し、世界に平和についてもう一度考えてもらいたいというメッセージを込めて、今回、沖縄戦というテーマに決定した。

部員たちは戦争体験者から直接話しを聴く機会が減っている事への危機感から、ダンスを通して平和の尊さを発信しようと、選曲から振り付け、衣装まで自分たちで意見を出し合い構成した。

首里高校ダンス部 横山咲那 部長:
たくさんの方が亡くなられてしまって、その分、命の重みをも感じるので、自分たちの作品に責任を持って、創作ダンスという新しい形で沖縄戦を発信していきたいと思いました

およそ4分間のダンスでは、戦闘に巻き込まれた住民たちが追い詰められていく姿が描かれている。

避難する壕で赤ん坊に手をかける母親を演じるのは、2年生の桑江紀花さん。

首里高校ダンス部 桑江紀花さん:
いまじゃ考えられないけど、こういう悲惨なこともあったということを知ってほしいです

終盤には多くの部員で摩文仁(まぶに)の丘を表現し、住民が崖から海に身を投じる様子も描いている。

その大役を任されているのは、2年生の玉井結羽(ゆあ)さん。

首里高校ダンス部 玉井結羽さん:
「生きたい」と思いながら亡くなった人たちがたくさんいると思うので、二度と起こしてはいけないということを伝えられるようにしたいです

追い詰められた人々の思いに迫れば迫るほど、どう表現すべきか不安になっていた。

首里高校ダンス部 桑江紀花さん:
気持ちをうまく込められているのか、ちゃんと表現できているのか不安もあります

体験者の視点に立って見えた景色

2024年4月。部員たちは全国大会に出場する前に、改めて沖縄戦について学ぼうと平和祈念資料館を訪れた。

毎年、慰霊の日に合わせ学校で平和教育を受けてきた生徒たちだが、ダンスの創作に活かそうと住民の視点に立ったことで、初めて見えた景色があった。

首里高校ダンス部 桑江紀花さん:
母親に視点を当てたら、張りつめた緊張感の中、判断がつかない状態だったというのが改めて実感できて、表現して伝えていく事が私たちの責任だなと

首里高校ダンス部 玉井結羽さん:
国のために死ぬしかなかった決断をした住民の苦しい気持ちをちゃんと知れたので、リフトで上がる時に表現できたらいいなと思っています

平和祈念資料館で感じたことを部員たちは、早速ダンスに落とし込んでいた。

首里高校ダンス部 横山咲那 部長:
戦争の恐ろしさをもっとダイナミックな動きで表現したいと思ったので、振り作りで試行錯誤をしていました

表情でも沖縄戦のむごさを伝えられるように、鏡に向かい何度も何度も練習する。

首里高校ダンス部 玉井結羽さん:
自分の中での気持ちの追い込みを意識しながらやると、前より表情がぐっと良くなったかなと思います

首里高校ダンス部 桑江紀花さん:
こんな表情をしないと戦争の恐ろしさを伝えられないという事実を、ちゃんと受け取ってほしいなと思います

平和を願う沖縄の心を届ける

全国大会を前に、全校生徒に創作ダンスを披露する機会が設けられた。

ダンスを観た生徒:
体で平和の尊さを表現していて、言葉で伝わるもの以上に体でひしひしと伝わってくる迫力がすごくて素晴らしかったなと思います

首里高校ダンス部 横山咲那 部長:
(観客)みんな顔がいい意味で引きつっていたというか、自分たちの作品に入ってくれている感じがしたので、大成功な結果だったと思います

首里高校ダンス部 桑江紀花さん:
苦しいだけじゃなくて、ごめんねとか本当に残酷な気持ちを伝えられたかなと思います

首里高校ダンス部 玉井結羽さん:
どんなに自分が年老いていても平和を伝えられるようにしたいし、この作品をこの代だけじゃなくて、何年間にわたって愛され続けるような作品を残したいなと思っています

ダンスを通して沖縄戦を追体験し、平和のバトンを次の世代に繋ぐ決意を新たにした部員たち。

2024年8月、平和を願う沖縄の心を全国に届ける。

(沖縄テレビ)

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