FNNの6月世論調査(15日、16日調査 全国の18歳以上の有権者対象)で岸田政権の支持率が、2023年10月以来となる3割台を回復し、「支持する」31.2%、「支持しない」64.4%との結果となった。

3割台の支持率は、岸田内閣の“本格的”支持率回復なのか、というとそこには疑問符がつくことが分析から明らかになる。

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【内閣支持率】
支持する  31.2%
支持しない 64.4%

支持率31.2%のうち10ポイントは「消極的」支持

FNN世論調査の方法は、まず内閣への「支持」か「不支持」について1度質問を行う。その際に「どちらともいえない」と答えた有権者に、追加で「どちらかと言えば支持」か「どちらかと言えば不支持」いずれかを質問する。その上で、調査結果として「支持」と「どちらかと言えば支持」を合わせた回答を「支持」の回答としている。

2度目の追加質問を行うことで、1回の質問より、「支持」「支持しない」ともに数字が大きくなる調査となっている。

FNN世論調査では内閣支持率で追加質問している
FNN世論調査では内閣支持率で追加質問している

その上で、今回の「支持率」31.2%の内訳を見てみると、「支持する」21.2%+「どちらかと言えば支持する」10.0%となっている。今回の支持率では「どちらかといえば支持」という消極的支持の10ポイントが、合計として「支持する」を押し上げた形と言える 5月の内閣支持率は、27.7%で内訳を見ると「支持する」20.1%+「どちらかといえば支持する」7.5%となっていて、5月に比べて、「どちらかといえば支持」いわば“消極的支持”が6月は大きく伸びたことで、合計の支持率の数字が底上げされているといえる。

【内閣支持率】
支持する           21.2%
どちらかといえば支持     10.0%
どちらかといえば支持しない   8.7%
支持しない          55.7%

【内閣支持率の内訳 6月・5月】

            6月   5月   
支持する        21.2%  20.1%  
どちらかといえば支持  10.0%  7.5%   
→合計支持率      31.2%  27.7%  

岸田首相を“消極的支持”の実態は「他に人がいない」から

では、“消極的支持”が増えたとはどういう背景なのか、さらに分析を進めると、“ポスト岸田”の顔が見えないという有権者の考えが見えてくる。

岸田内閣を「支持する」人に「支持する理由」を聞いたところ、5月調査「他に良い人がいない」45.5%、6月調査「他に良い人がいない」55.7%、と先月比10ポイント増加している。

内閣支持の理由「他にいい人がいない」55.7%
内閣支持の理由「他にいい人がいない」55.7%

国会で最大の焦点となっている、裏金問題の再発防止に向けた、政治資金法改正の国会審議について、岸田首相は、公明山口代表、維新馬場代表と党首会談を行って、自民党案の修正にたずさわった。

一方で、自民党三役など、党幹部らが、表だって調整に入る場面は見られることはなかった。法案審議のヤマ場の場面で、自民党幹部による政治とカネの再発防止に向けた活動がみられないことなどが「他に良い人がいない」という回答が10ポイント急増した背景にあると見られる。この10ポイント相当が、結果として、岸田内閣支持の今月の増加につながったといえる。

支持率は上がったけれど…
支持率は上がったけれど…

【岸田内閣を支持する理由】
           5月    6月
人柄が信頼できる   16.7%  10.9%
政策が良い      6.5%   3.9%
実行力に期待     5.5%   8.9%
自民中心内閣だから  25.0%  20.0%
他に良い人がいない  45.5%  55.7%

支持率3割台でも、岸田総理は「9月まで」が8割

支持率3割台の回復の実態が、地に足がついた支持とは言えないことを裏打ちするように、岸田首相が支持率回復をはかった「政治資金規正法改正」と「定額減税」についても世論調査では厳しい受け止めが明らかになった。

政治資金規正法をめぐる自民修正案の成立に先立つ段階での調査となったが、自民案についての評価を聞く質問では、「大いに評価する」が2.7%、「ある程度評価する」27.7%、「あまり評価しない」32.8%、「全く評価しない」27.7%となり、「評価」は3割にとどまり、「評価しない」は6割に上った。

定額減税も評価はそれほど高くなく…
定額減税も評価はそれほど高くなく…

また6月にスタートした物価高対策としての定額減税についても「大いに評価する」5.4%、「ある程度評価」37.5%、「あまり評価しない」32.8%、「全く評価しない」21.9%と「評価」が4割強、「評価しない」が5割強と、いずれの政策でも「評価しない」意見が多い結果となった。

目玉の政策が、支持率回復に奏功しないなか、岸田首相にいつまで続けて欲しいかという質問には「すぐに交代」が25.6%、「9月の自民党総裁任期まで」が55.9%で、併せて8割を超える答えとなった。総裁選再選を望む「9月以降も続投」は16.1%にとどまった。

これを自民党支持層についてみてみると「すぐに交代」10.6%、「9月の自民党総裁任期まで」51.9%で、自民党支持層の中でも「9月まで」が6割を超え、「9月以降も続投」は34.0%となった。

国会が閉幕すると「総裁選をめぐる政局だ」との声が自民党議員からも聞かれる状況となっている。今月はまだ顔の見えない、自民党内での岸田首相への対抗馬の動きが今後活発化していくなか、岸田総裁にとって9月の総裁選での再選には、今後さらに厳しい逆風が強まる情勢と言える。

【政治とカネ 自民党修正案】
大いに評価    2.7%
ある程度評価   27.7%
あまり評価しない 32.6%
全く評価しない  27.7%

【4万円の定額減税】
大いに評価する  5.4%
ある程度評価   37.5%
あまり評価しない 32.8%
全く評価しない  21.9%

【いつまで首相を続けて欲しいか】
すぐに交代         25.6%
9月の自民総裁任期まで   55.9%
9月以降も続投       16.1%

【いつまで首相続けて欲しいか 自民支持】
すぐに交代          10.6%
9月の自民総裁任期まで   51.9%
9月以降も続投       34.0% 

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。