夏の参院選が近づく中、日本維新の会は、候補者を決める“党内予備選”を現職も含め行ったが、敗れた梅村みずほ参院議員が離党した。理由を聞くと、予備選後に執行部へ抱いた「非常に強い違和感」を語り始めた。
“党内予備選”で2人が離党
維新は参院選において、改選4議席の大阪選挙区で2016年以来2議席を獲得してきた。2025年の改選では、衆院に移った東徹代議士会長の後任を選ぶ必要があった。地方組織「大阪維新の会」主催で、現職の梅村氏も含めた“党内予備選”を行うことになり、男性5人、女性3人が名乗りを上げた。
その結果、梅村氏は敗れ、8日後に離党届を提出した。同じく党内予備選に出た、広田和美大阪市議も離党した。

「負けたのが不満で離党」なのか。
単独インタビューに応じた梅村氏は、「決まった方に頑張っていただきたいと、緑のジャンパーを着てビラを配って、任期満了の日に『お世話になりました』とバッジを外す、というのが私の考えだった」と語り、結果への不満を否定する。

梅村氏はもともと「党内予備選推進派」で、2022年の党代表選に出馬した際の公約にも掲げていた。維新が極めて強い大阪では、国会議員、府議、首長の候補者が固定化すれば、当選がほぼ約束された「既得権益」になっていく恐れがあるからだ。
梅村氏は、「(執行部が)予備選をルール化すると明言していたら、離党はなかった」と語る。「衆院、府議会、首長はどうするかまで考えて、制度設計して議論するプロセスが必要だった。実は予備選が始まる前、前原共同代表に『本来はきちっとした制度設計があって行うものだと思いますよ』とお伝えしていた」とも明かした。
予備選「今回限り」発言が波紋
「現時点では大阪の参議院、今回に限った措置であると考えている」。予備選翌日の4月9日、岩谷幹事長が記者会見で語った内容が、党内外に波紋を広げた。筆者が「3年後の改選でもやらないのか」と問うと、「検証を行って、大きな問題は特段なかったという結論になれば、やはり3年後もやらないとおかしいという話に当然なるんだろうと、私も思う」と補足したものの、広がった波紋は止まらなかった。
ある大阪府内選出の維新衆院議員は、「岩谷の発言はアカン。予備選は参院選だけでなく、衆院選でもやらないと。今の執行部は、自分が予備選の対象になったら勝てる自信がないから言えないのだろう」と、手厳しい。

元代表の松井一郎氏も、自身のユーチューブ番組で、「おかしいんじゃないの?ていうのは、今の維新の執行部。衆院なら現職は優遇される、参院なら予備選する、そんなおかしい話はない。僕も辞めて2年になるが、そんな政党だったのか」と批判し、予備選の対象拡大を求めている。
梅村氏は、この岩谷氏の発言が離党の引き金だったと語る。「なぜ1期目の私からスタートして、かつ『現段階で今回のみ』なんだろうと、非常に強い違和感を覚えた。ずさんな、制度設計にもなっていないトライアルで、議員の人生を懸けた戦いを左右するのはあってはならない」と、語気を強めた。そして、「今回スタートを切ったのだから、『当然次もやるし、議論を進めていく』と言っていただくのが筋だ」と訴えた。
執行部からの連絡「あえて待ってみた」
梅村氏は、これまでの選挙で、落選者への党のフォローが「非常に手薄」と感じていたという。「党内予備選で敗北し、前原共同代表や岩谷幹事長に私から連絡をすぐ差し上げた方が良かったかもしれないが、あえて待ってみた。これまでの経験から、フォローがないのではと思ったからだ」と明かした。
党の選対本部長でもある岩谷氏からの連絡は、予備選の12日後。離党届を提出した後だった。着信に気づき、折り返してもつながらないまま時は流れ、岩谷氏と電話で話すまで、さらに3日間を要した。

岩谷氏はこの時、「そんなに思い詰めているとは思わなかった」などと話し、梅村氏は「思い詰めている・いないに関わらず、フォローされた方が敗戦者は報われる。『もう一度この党で頑張ろう』という気になるのではないか」などと返したという。それが最後の会話になった。
梅村氏は予備選を振り返って、「私は今も、『梅村外し』のためにやったのではないと思っている。党員の皆さまの票が反映されたから。ただ、そういう疑念を抱かれる予備選になってしまったという側面はある」と語った。
離党した今も「維新が大好き」
梅村氏は離党の理由に「ガバナンス不全」を挙げている。「組織としてはまだ、ガバナンスという点で未熟なところがある。残念ながら前の執行部も、今の執行部も、そんなに変わってない」と話す。
一方で、「2019年に当選したのは、維新の看板のおかげ。私は今も日本維新の会が大好きで、これからも維新に期待している。除名にはなっていないので、『もう一度政治の世界に』となったとき、維新という選択肢も当然あると思っている」とも話していて、後ろ髪を引かれるような、複雑な思いも垣間見えた。

梅村氏のインタビューとちょうど同じ時間に、大阪府庁で記者会見に臨んでいた吉村代表は、「僕自身が代表の時点における離党者だから、僕自身の党運営のプロセス、力が不十分なところがあるのだと思う。できるだけ一致団結できるようにできればと思う」と語ったが、今後の予備選の扱いには言及しなかった。
今回の党内予備選では2人が離党した。候補者選定を巡る不満は、離党のきっかけになりやすい。予備選を増やせばそのリスクも増えるが、「今回限り」となれば党内の批判が起きる。参院選ではさらに、他党との予備選まで行おうとしているが、今の維新は耐えられるのだろうか。
【取材・執筆:フジテレビ政治部野党担当 鈴木祐輔(関西テレビ)】