斎藤経済産業相は減少する書店の支援について、意見交換会を東京都内で開催した。
直木賞作家の今村翔吾氏は、2024年を書店復活の元年と信じると述べた。
オンラインの反対にあるリアルな体験の提供が、書店生存のカギだと専門家は指摘する。

町の書店支援に経産相らが意見交換

減少が続く町の書店をめぐり、3人の大臣と直木賞作家などが意見を交わした。

東京・千代田区の書店で行われた車座対話
東京・千代田区の書店で行われた車座対話
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東京・千代田区で12日、斎藤経産相ら3大臣が減り続ける書店の支援などについて、書店関係者と意見交換会を行った。

直木賞作家の今村翔吾氏らが参加
直木賞作家の今村翔吾氏らが参加

上川外相と盛山文科相が出席したほか、直木賞作家の今村翔吾氏らが参加した。

車座対話に参加する大臣と直木賞作家ら
車座対話に参加する大臣と直木賞作家ら

インターネットの普及などにより、書店が1つもない自治体は約4分の1にのぼっていて、経産省は、3月に書店振興プロジェクトチームを立ち上げている。

書店の復興について話す直木賞作家・今村翔吾氏
書店の復興について話す直木賞作家・今村翔吾氏

直木賞作家・今村翔吾氏:
出版界はつながって変えていかなければ、滅んでも仕方ないのではないか。今年が書店復活の元年になると信じている。

さまざまな本が並ぶ書店の棚
さまざまな本が並ぶ書店の棚

政府は6月中に取りまとめる「骨太の方針」にも、書店の活性化を図っていくことを初めて盛り込むことにしている。

書店独自の個性と居心地のよさがポイント

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーー書店の減少、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
Eコマースの台頭とともに、リアル店舗の「死」が間近に迫っている、そう思われた時期もありましたが、実際には、そんなことはありませんでした。

本の場合もそうです。例えば、アメリカではAmazonが、書籍販売の4割を占めるとされる一方、書店経営者の個性が本の品ぞろえやお店づくりに表れる独立系の書店は、この10年ほどで、5割近く増えています。

ここに日本の町の本屋さんが、生き残るカギがあるように思います。

堤キャスター:
ーー具体的には、どうしたらいいのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
本を手に入れる最も効率的な方法は、オンラインでの購入です。この効率とは反対側にあるリアルな体験を、町の本屋さんは提供する必要があります。

本棚を眺めながら、店内をゆっくりと巡っていると、思ってもいなかった本と出会うことがありますよね。

さらに、好きな作家に会えるサイン会、本好きが集まるブッククラブ、子ども向けの読み聞かせ会などを行うと、リアルに誰かとつながったり、愛読者のコミュニティーにもなります。

町の本屋さんは、単に本を売る場所ではなく、そこにいると楽しくなったり、居心地のいい場所へと変わっていく必要があります。

知識や好奇心を育てる思い出の場

堤キャスター:
ーー今、カフェが併設されていたり、雑貨などの扱いを増やす書店も増えてきていますよね?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
町の本屋さんに友人と出かけて、おしゃべりしながら本を選んだり、偶然、知り合いと再会する。そういう経験は、誰にでもあるはずです。

本屋さんに親子で通っていると、その子どもは生涯にわたって読書が好きになるという話もよく聞かれます。町の本屋さんは人々の知識や好奇心を育ててくれて、楽しい思い出が作られる場所でもあります。

全国の自治体のうち、約4分の1にはすでに書店がありません。町から本屋さんがなくなってしまう前に、私たちにもできることがあるように思います。

堤キャスター:
書店の強みは、紙の本ゆえのぬくもりを感じながら、新たな作品と出会えることだと思います。
こうした本との出会いは自分の価値観を広げることでもあります。
みんなでこの場所を守っていきたいですね。
(「Live News α」6月12日放送分より)

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