新しい乗り物として実用化に向けた研究が進む「poimo」(ポイモ)。風船構造のボディは持ち運びしやすく、さまざまなデザインを可能にする。宮城大学の准教授などが参加した開発グループは「乗り物で移動する」という行為を従来とは変わったものにするだろうと、期待を寄せている。柔らかい発想が生んだ次世代の乗り物は、暮らしやすい社会の実現に向けて、改良が続けられている。

30秒で膨らむボディー重さや速さは?
その乗り物は「portable and inflatable mobility」(持ち運べる、膨らませられる、移動手段)の略称から「poimo」と名付けられた。名前の通り、空気で膨らむ風船構造のボディーとモーターが内蔵された車輪で構成されている乗り物である。ボディーは空気を完全に抜けば、折り畳むことができ、非常にコンパクトになる。その重さはわずか3キロで持ち運びも手軽だ。

また、電動の空気入れを使えば、完全に空気が抜けた状態から30秒ほどで完全に膨らませることができる。さらに、アクセル、ブレーキの操作はリモコンひとつで可能。最高速度は時速15キロだ。

アイデア次第 広がる可能性
「軽い、折り畳める、持ち運べる乗り物は、移動するという体験を少し変わったものにする」そう語るのは「poimo」の開発グループのひとりで、宮城大学の佐藤宏樹准教授だ。

現状、「poimo」は公道を走ることができないが、佐藤准教授は「poimo」の将来的な利用方法について、そのアイデアの一端を話してくれた。例えば、工場で荷物を運搬するロボットとして。あるいは、旅行先に事前に配送しておき現地での移動手段に。さまざまな利用方法が考えられるという。
宮城大学の学生たちも興味津々だ。「近未来的なルックスで周りから注目を集めることができる」「大学の駐車場から研究棟までの距離を「poimo」で移動できたら便利」など、ポジティブな意見を聞くことができた。

体重80キロの人まで乗車OK
一方で気になるのはその強度や耐久性である。風船構造と聞くと少しの衝撃で割れてしまうようにも思えるが、心配はいらない。「poimo」のボディーの素材は体操用のマットなどに使われている素材と同じものである。佐藤准教授は「上で人がバク転をしても壊れない」と自信をのぞかせた。実際、体重80キロの人までは問題なく乗車できるという。

「空気の車いす」構想から始まった開発
「poimo」は新しい形の開発も進んでいる。例えばバイク型の「poimo」はよりスタイリッシュなデザインかつ、より安定した走りを実現した。

車いす型やソファ型の「poimo」は体が不自由な人に役立つ乗り物としての活用も期待されている。もともとは従来の車いすの持ち運びのしにくさを課題と捉え、「空気の車いすを作ろう」という発想から開発が始まったといい、誰もが暮らしやすいインクルーシブ社会の実現に役立つことも目指している。体に障がいがある人でも、自分の体の状態に合わせて乗り物をデザインし、オーダーメイドの「poimo」を利用するという構想も進んでいるのだ。

「poimo」が実用化されるのは早ければ2、3年後。これからどんな乗り物になっていくのか、期待は膨らむ。