開催が2025年に迫った大阪・関西万博を巡り、大阪教職員組合が会見を開き、大阪府が打ち出した子どもたちを無料招待する事業に「NO」を突きつけた。理由は会場の夢洲で発生したメタンガスによる爆発事故や、会場までの交通手段が十分に確保されていないことなど、解消されない“不安”だった。

大阪教職員組合「子供の命、安全が第一」

万博に府内の4歳~高校生約100万人を無料招待する事業について大阪教職員組合は5日、「爆発事故などがあり安全が保障されていると思えず、学校単位での万博招待を中止するよう大阪府教育庁に要望」した。

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吉村洋文知事は2025年の大阪・関西万博で、大阪府内の4歳から高校生までの子どもたち約100万人を会場に無料で招待するとしているが、学校現場からは、様々な点を心配する声が上がっていた。

ガス爆発が起きた現場
ガス爆発が起きた現場

その一つが、埋め立て地である会場で起きたガス爆発事故。3月にトイレの建設現場で溶接作業中に出た火花が、地中から出ていたメタンガスに引火して爆発し、コンクリートの床が破損した。

その後、博覧会協会が確認したところ、パビリオンが立ち並ぶエリア4か所でメタンガスが検出されたことが分かった。

大阪教職員組合 米山幸治書記長:
誰も「爆発事故がもう起こらない」とか「安全である」と言わない万博の会場に子どもたちを連れていくわけにはいかない。
子供の命、安全が第一。これを私たちは本当に重視したいと思っている。大阪府や府教育委員会は子供を招待する、その責任をきちっと果たしてほしい。

さらに、会場へのアクセスの仕方や昼食を食べる場所の有無など、あいまいな点が多く、学校現場の不安は消えていないという。

吉村知事は2023年8月、子どもたちを万博へ無料招待するいわゆる“万博遠足”について、こう訴えていた。

大阪府・吉村洋文知事(2023年8月):
こんな未来社会をつくっていくんだ、ということがまさに万博。
これから未来社会をつくる子どもたちにぜひ見てもらいたい。

その万博遠足をめぐり、5日に学校現場からあがった中止の要請。一方、万博PRのため精力的に活動する吉村知事は、5日は愛知県などを訪問し、改めて意気込みを語っている。

大阪府・吉村洋文知事:
あと1年弱、課題も指摘されている中、一生懸命準備をして、また愛知万博の経験を教えてもらいながら素晴らしい万博を来年の今ごろ開催したい。
未来社会をつくっていけるように次の社会に繋がるような万博ができればいいなと思っている。

来場意向調査のアンケートでも物議

こうした“万博遠足”の無料招待を巡る問題は、5日に始まったことではない。

府内の約1900校の小中高校を対象に行われた万博への来場意向調査のアンケートでは、「学校単位での訪問を希望するか」の項目には、
▲希望する
▲未定・検討中
の2つだけで選択肢に「希望しない」がなかったため、一部で“不満の声”が上がった。

アンケートには約1740校が回答し、結果は約7割(約1390校)の学校が「希望する」を選び、「未定・検討中」が約2割(約350校)、1割は未回答だった。

この調査には、「来場を強制しているようだ!」という不満・怒りの声が出た。この問題について、5日の教職員組合の会見で話が出た。

大阪教職員組合 米山幸治書記長:
この意向調査の段階で出さないと、「日程の希望・バスの割り当てがないかもしれません」ということまで書かれている。そういう意味では「非常に圧力的なもの」と受け取られる恐れがある中身ではないかと思う。
「とりあえず行くって出しとくよ」という学校や「うちの市では行くことになっています」と押しつけられるような状態の話も聞いている。

意向調査が、行くしかないようなニュアンスで圧力的だったという不満、ガス爆発事故、交通手段の問題など課題は山積している。

大規模イベントなだけに 学校側に懸念があるのも分かる。

番組キャスターのパックンはこの問題について、「まだ調整が必要な部分もありそうですね。安全第一なので控えることは理解できる。世界からの遠足がすぐ来る…それまでに皆の安全が保障できる対策、環境作りが今必要だと思う」と指摘する。

万博は子供の未来のためという意味合いが強いイベント。
自治体と教育現場にはベストな対策を模索することが求められている。
(「イット!」 6月5日放送より)

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