「診断がおりたという前提だと大体30パーセント弱が死亡に至る」と専門家も警鐘を鳴らす要注意の感染症「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」。この極めて致死率の高い感染症を引き起こすのは「マダニ」だ。“草むらの吸血鬼”とも呼ばれるマダニは毎年、春から活動が活発になる。アウトドアシーズンと重なるため、特に注意が必要だ。

“致死率30パーセント”危険な感染症SFTS

直径、わずか数ミリのマダニだが、様々な感染症を引き起こす。特に重篤な症状が現れるのがSFTS(重症熱性血小板減少症候群)。

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国立感染症研究所によると、全国のSFTSの患者数は年々増え、2023年は133人と過去最多。国内での致死率は27%にも達する恐ろしい感染症だ。

福岡ではマダニの媒介で、新たに2人がSFTSに感染し、このうち北九州市小倉南区の80代の女性が5月20日に亡くなっている。

福岡・糸島市の「いとしま皮ふ化クリニック」の竹本朱美理事長にマダニに刺されSFTSに感染した場合の症状を聞いてみると、「40度以上の高熱と関節痛。あとは頭痛、おう吐。消化器症状、腹痛や下痢。そういった症状が出てきます」という。しかし、その治療法は「ない」と話す。

「糸島皮ふ科クリニック」・竹本朱美理事長:
いまのところ有効な治療法がまだなくて、基本的には対症治療と言って、いろいろな症状が出たところに対して管理をしていくという治療になります。

大学内にある木陰の草むらにも…

マダニによる被害に遭わないためにはどうしたらいいのか。取材班が向かったのは九州大学。農学部の藤田龍介准教授は、各地のマダニを捕獲して、それらが保有しているウイルスを研究している。

九州大学農学部・藤田龍介准教授:
マダニは刺すときに麻酔成分を出しますので、チクっとしたりとかは一切なくて、本当に目視で探そうとしないと、刺されていることすら気づかないのがほとんどです。

どんな場所に潜んでいるのか。向かったのは、九州大学キャンパス内の草むらだった。

九州大学農学部・藤田龍介准教授:
この辺は、散策できるようになってるんですけど、この草むら、ここに大体マダニはいます。完全に日が当たっている所っていうのは、さすがにあいつらも暑いと思うのか、ちょっとあんまりいないので、大体ちょっと木陰になっているような所とか。

マダニは熱に弱いため、直射日光が当たり続ける場所は比較的少ないという。藤田准教授が取り出したのは白い布だ。木陰の草むらを白い布でなでるようにしてくっついてくるマダニを探す。

藤田准教授「いました。はい、これですね」
記者「あ~、活発に動いてますね。探し始めて数分ですね」
藤田准教授「そうですね、5分、10分探せば、大体は捕れますね」
記者「本当に身近な場所にいるんですね」
藤田准教授「そうですね。街中の公園なんかでも、こういう場所はありますし、芝生なんかで普通に寝転がってゴロゴロしてたら付きますよ」

記者「取材スタッフの裾にも付いてますね」

慌ててスタッフはマダニを払い落とした。

虫除けスプレーは靴や服にも

あまりに小さく、刺されても気づきにくいというマダニ。

「特に足元を中心に肌を露出しない。半ズボンとかハーフパンツは避ける」と服装についての注意点を教えてくれた。マダニは下の方から這い上がってくるため、虫よけスプレーは肌の露出部分だけでなく、ズボンの膝下(ひざした)から靴までかけると効果的だという。

九州大学農学部・藤田龍介准教授:
気持ちのいい緑のある公園だったり、あるいはキャンプ場だったりに行く機会っていうのは、これから増えると思うんですけれど、そういった所はマダニもたくさんいますので、刺されないように、あいは刺された後、すぐに見つけて処置するように気をつけてもらえればいいかなと思います。

“草むらの吸血鬼”マダニ、これからの季節より一層注意が必要だ。

(テレビ西日本)

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