せっかく育ち始めたナシを売り物にならなくしている害虫がいる。カメムシだ。
「もうこれは商品になりませんね。ことしみたいにひどいことはないです」と嘆くナシの生産農家。8月ごろに発生するカメムシが4月から…。カメムシに果汁を吸われて凸凹になるなど、被害がでている。

カメムシ被害でナシの価値“なくなる”

福岡・朝倉市にある町田梨園で10品種、5万個以上のナシを育てている町田久寿夫さん。ナシを育てて50年以上になるが、この春、例年にはない異常事態に直面している。育ち始めたナシの一部がカメムシに果汁を吸われて凸凹になり、変色してしまう被害が出ているのだ。

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ナシ農家・町田久寿夫さん:
カメムシに果汁を吸われたものは商品価値ないですからね。非常に困るんですよ。

この梨園では例年、カメムシが発生するのは8月ごろだが、2024年は4月から現れ始めている。少しでも被害を抑えようと通常より殺虫剤をまく頻度を増やすなど対策に追われている。しかし「いた、いた」(カメラマン)と取材中にもカメムシを発見。町田さんは、秋の収穫量が減ってしまうことも覚悟し始めている。

ナシ農家・町田久寿夫さん:
なるべく少ないに越したことはないけど、まあ10%くらいの被害があるんじゃないかなぁ。収穫量が減ると、ここは梨狩りもやっているもんで、お客さんたちにも迷惑かけちゃうし、みなさんにいいもの、おいしいものを食べていただきたいし。ちょっとそこのところは心配ですね。

洗濯物など被害は一般住宅にも

2024年のカメムシ大発生は全国的なもの。早めの予防や駆除を促す「カメムシ注意報」を発令した自治体は、5月17日までに全国27都府県。

福岡県も5月1日に発令していて、この時期に注意報を出したのは、ここ10年で初めてのことだ。

病害虫の発生予測などをしている福岡県病害虫防除所では、カメムシの数を定点調査している。フェロモンの匂いで引き寄せる仕掛けや夜に光をつけて集める装置を使ってカメムシを捕獲する。

福岡県病害虫防除所・石井貴明所長:
あ~、結構な量が取れていますね。きのうの夜の一晩の分です。非常に多いですよね。これほど早い時期にこれだけの大量のものが取れたというのは、ちょっと記録はしておりません。

福岡県病害虫防除所によると、4月の捕獲数は1519匹。前年の同時期はわずか19匹で、約80倍にものぼっている。

その理由について、石井所長は「2023年の秋口から福岡県では大量にカメムシが発生。冬の間、寒さが穏やかで、死ぬというリスクが減ったために、早くから大量に出てきた」という推測をしている。

2023年から多かったカメムシが、暖冬の影響で死なずにそのまま冬越したのではないかと見られているのだ。

被害はナシやモモなどの果樹だけには留まらない。照明や白い洗濯物などに集まりやすく、刺激すると悪臭を放つため、一般の住宅でも注意が必要だ。

5月の終わりや6月の初めくらいから、夏にかけて発生がピークを迎える。そこは十分、注意が必要だ。

2023年に比べ4倍以上売れている商品も

カメムシの大量発生を受けて、福岡市のホームセンター「グッデイ伊都店」では、カメムシ専用の予防・駆除スプレーを数種類取り扱っているが、すでに品薄状態だ。前年の同じ時期と比べて売り上げも大きく伸びている。

グッデイ伊都店・木戸幹太さん:
売り上げが平均的に2倍以上伸びております。モノによっては去年の4倍以上売れている商品もあります。在庫の確保に努めてはいるんですけども、お問い合わせがかなり多いので、ちょっと在庫の確保が難しい面もあります。

もしカメムシ専用の商品がない場合でも代用品はあるそうだ。

グッデイ伊都店・木戸幹太さん:
いろんな虫に効いて、その中にカメムシに対応しているというものもありますので、ぜひ、そちらもご確認いただければなと思います。効果は十分にあります。

秋にかけて今後も増える恐れのあるカメムシ。早めの対策が必要だ。

(テレビ西日本)

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