2024年5月、鹿児島市に本社を置く老舗百貨店の「山形屋」が、金融機関の支援を受けて経営再建に乗り出すことが明らかになった。「経営再建」というワードに不安の声も聞こえてくるが、山形屋は「お客様や取引先に影響を及ぼすものではない」としている。山形屋の経営再建への道のりと百貨店の未来について考える。

山形屋の経営状況は?

山形屋は大型商業施設の進出に伴う競争の激化や、耐震工事などの設備投資、新型コロナウイルス感染拡大の影響などで経営が悪化。2023年2月決算での負債総額は約360億円にのぼる。このような現状を受け、山形屋は経営再建に私的整理の一つである、「事業再生ADR」の手続きを申請した。5月28日にすべての取引金融機関の合意を得て、計画は実行に移される事となった。

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宮崎山形屋の山下隆幸社長は「財務体質を強化するための対応で、お客様や取引先に影響を及ぼすものではなく、雇用も維持される」とコメントしている。

「事業再生ADR」とは?

経営が悪化した企業がとる事業再生の方法には、大きく分けて「法的整理」と「私的整理」の二つがある。二つの違いは、裁判所が関与するかしないかという点だ。

山形屋が申請した私的整理の中の「事業再生ADR」とはどのようなものなのか?法的整理を行った「寿屋」と比較しながら説明していく。

法的整理と私的整理の違いとは?

かつて宮崎市の中心部にも店舗を構えていた「寿屋」(当時の本社は熊本)

寿屋は、法的整理のひとつ、民事再生法の適用を申請して経営再建を目指していた。寿屋が申請した「法的整理」は、以下のような特徴がある。

・法的整理は、裁判所が関与することで、信頼できる
・手続きがオープンになるため取引上の風評被害が発生し、事業に影響が出る恐れがある

法的整理は、裁判所が関与し信頼できるというメリットがある一方で、手続きがオープンになり風評被害が発生してしまうというデメリットがある。

寿屋は経営破綻による風評被害によって業者からの商品の仕入れが難しくなり、結果、全店舗閉鎖に追い込まれてしまった。

一方で、山形屋が申請した「事業再生ADR」は私的整理の1つ。「私的整理」には以下のような特徴がある。

・裁判所ではなく、経産省の認可を受けた第三者機関が関与する
・手続きは非公開
・本業をそのまま継続しながら、金融機関などとの話し合いで解決策を探れる

山形屋は、事業再生計画案を策定していて、その中には、

・ホールディングス体制への移行
・鹿児島銀行などから役員を受け入れ
・資産の売却  

などが盛り込まれている。

山形屋は収益の確保や資本を強化しながら、確実に事業再生に取り組もうとしている。

デパート業界の苦しい現状

山形県、徳島県、島根県にはデパートがない。そして、8月には岐阜県も、デパートがない県になる。日本百貨店協会によると、全国の百貨店の売上高のピークは1991年で、約9兆7000億円。2023年は約5兆4000億円。半分近くにまで減り、苦しい状況だ。

全国のデパート事情に詳しく、「山形屋大使」にも任命されている宮崎市出身の放送作家、寺坂直毅さんに「デパートの生き残り策」について聞いた。

寺坂直毅さん:
山形屋は全国的に見ても賑わっている地方百貨店だ。好調だと思っていた山形屋が大変だということは、デパート業界全体が本当に大変だと実感した。

生き残っていく手段として全国的にも様々な対策が取られている。山梨県の岡島百貨店はフロア数を減らし、売れるものを凝縮させるなどの対策を取っているとのことだ。

厳しいデパート業界であるが、寺坂さんは「百貨店がなくなっては街は死ぬ」と語る。

宮崎唯一の百貨店を守るために、現代ではネットショッピングが主流になりつつあるが、山形屋を購入の場だけではなく、交流の場、憩いの場として利用していくことが宮崎唯一の百貨店を守ることにつながるだろう。

(テレビ宮崎)

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