トラック運転手の残業規制による輸送能力不足に対応するため、ヤマトホールディングスは、荷主とトラックを結ぶマッチング会社を設立し、複数の荷主の荷物を効率的に運ぶ取り組みを開始する。
専門家は、企業間協力が持続可能な社会の実現に寄与すると評価している。

2024年問題にマッチング会社で対応

トラック運転手の残業規制により輸送能力が不足する、いわゆる「2024年問題」に対応するため、マッチング会社が設立された。

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ヤマトホールディングスは21日、荷主と積み荷に余裕があるトラックを結びつけるマッチングを行う新会社を設立したと発表した。

業種を問わず、複数の荷主の荷物を最小限のトラックで運ぶことで、積載率を高めて輸送の効率化を図るとしている。

ヤマト運輸 執行役員・福田靖さん:
持続可能な社会を作るということは、社会の一員としての責務。多種多様なパートナーと新たな物流、新たな価値を創造していきたい。

2024年度中に、まずは、東京・大阪・名古屋間で運用を開始するという。

企業間協力での輸送効率化が重要

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── “2024年問題”に対しての試み、いかがですか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
問題の深刻さは一企業でできる範囲を超えてしまっているので、企業の垣根を超えた取り組みが必要。今回の試みは企業から見ても、ユーザーから見てもメリットがわかりやすい。

まず企業からすると、自社で配達員が不足しているときは、他社の配達員に運んでもらうことで、顧客からのクレームはなくなる。

一方で、日によって、もしくは時間帯によって配達員の空き状況は異なるので、もし空いてる時間帯があったときに、追加で他社経由の荷物の配送を行うことで、稼働率を上げて無駄をなくすことができる。

堤キャスター:
── 一方のユーザーのメリットについては、いかがですか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
そもそもユーザーにとっては、誰が運んでくるか、どの会社が運んでくるかということは気にならないはず。

何より、早く届くか、指定通りに届くかの方が重要で、そういうユーザーの希望を最もかなえてくれる配送業者が運んでくれるメリットは大きい。

ただし、この取り組みを成功させるためには、クリアすべき課題が2つあるように思う。

多数企業の参加・人員確保が課題

堤キャスター:
── その課題とは、どういうことでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
先ほど言ったメリットを最大限に享受するには、ほとんどの会社がこのプラットフォームに参加しないと意味がない。

もう1つは、根本的に配達員の確保のしにくさは改善されてないこと。
今は転職を念頭に置いている人も増えているが、それはつまり、人が集まりやすい業界に人が流れていきやすいということである。

配送業のように、どうしても採用が難しい業界が、いかに人を確保するのかは考えないといけない。いずれにしても、会社ごとの利益や利害にこだわっている場合ではなくなっている。

業界を挙げて、この事態を乗り越えていく必要がある。そのためには、改革を引っ張っていくリーダーが、業界に現れるかどうかも重要なのではないかと思う。

堤キャスター:
さまざまな企業が参加することで、物流業界の構造的な見直しや、根本的な問題を解くことにつながっていくことを期待したいです。
これが、課題の解決に向けた1つの転換点になればと思います。
(「Live News α」5月21日放送分より)

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