性別や年齢に関わらず誰でも楽しめる「ゆるスポーツランド2024」は、参加者がスポーツの苦手意識を克服できるよう工夫されている。専門家は、政府は企業の健康経営を推進し、中小企業でも健康増進に取り組むことで、コスト削減に繋がっているという。

みんなが笑いながら楽しめるスポーツ

東京・墨田区で11日、「ゆるスポーツランド2024」が開催された。

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世界ゆるスポーツ協会・澤田智洋 代表理事:
年齢とか性別とか障害があるない関係なく、みんなが笑いながら楽しめるスポーツを「ゆるスポーツ」と言っている。

スポーツの苦手意識をなくすことも目指すこのイベントでは、誰でも簡単にできるよう作られているため対戦相手に応じたハンデは必要ない。

そこで、今湊キャスターが、両親と訪れていた男の子と2番勝負を行った。

1戦目は、マイクを通した声の振動で土俵の力士が戦う「トントンボイス相撲」。

行司:
はっけよーい、のこった!

2人:
トントントントン……!

今湊キャスターの力士が倒れ、一戦目は男の子に軍配。

続いては、“しりもじ”で丸を書き、画面上に自分の色のおしりを多く埋めた方が勝ちの「オシリウスの塔」。

今湊キャスター:
また負けた!

人々の交流も目的としている「ゆるスポーツ」では、ペアや、チームで行う競技もたくさんある。

イモムシウェアを着て行う「イモムシラグビー」は、移動はほふく前進か回転のみ。ボールを持つ人は、相手チームに体をタッチされたらパスしなくてはならず、5タッチで攻守交代。

いっぱい走るイメージが強いサッカーをゆるくしたのは「500歩サッカー」。

今湊キャスター:
ハードに動きすぎない設計になっていて、500歩以上動くと即退場です。激しく動くと、あっという間に500からカウントが減っていき、止まると、また一歩ずつ回復していきます。

“休むことを良し”とされるため、体力に自信がない人でもできるようなルールになっている。

参加者:
小学校とかの授業で、こういうスポーツがもっと増えると、苦手って言ってる子が減るんじゃないかなって話していたので、自分が子供の時もやりたかったなと思いました。

――なにが一番楽しかった?

参加した男の子:
(お尻)回すところ。

参加者:
(学生の頃)体育の成績がずっと悪かった。運動神経とか関係なく、むしろ私の方が点数が良い競技が結構あったので、これだったら運動が楽しめるなと思った。

世の中の苦手意識を取り除く

スポーツだけではなく、誰でも演奏できる楽器が揃う「ゆるミュージック」エリアでは、聴覚障害者も振動で演奏できる「ハグドラム」や鼻歌で演奏する「ウルトラライトサックス」などが楽しめる。

今湊キャスター:
「インスタコード」は、複雑な指使いができなくてもギターが弾けます。

自身も運動が苦手だったこと、また息子に障害があることから「ゆるスポーツ」を作ったという世界ゆるスポーツ協会・代表理事の澤田さん。

世界ゆるスポーツ協会・澤田智洋 代表理事:
僕が究極的にやりたいのは、スポーツに限らず、いろんなものをゆるめていって、それに対して苦手意識がある人をなくしていくこと。生きづらさや苦手意識があるなら、その対象となるものをどんどんみんなでゆるめて変えませんか、というのはすごく伝えたいことです。

いろんな物をゆるめて、世の中の苦手意識を取り除くことを目指す。

健康経営が企業価値アップに

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
今回の取り組み、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
ゆるいスポーツだからこそ、運動弱者を無くせるというのはすごく面白い取り組みだと思います。小学生も参加できるということで、スポーツへの苦手意識の解消にもなるのではないかと感じました。

少子高齢化が進む日本では、元気な高齢者を増やすためにも、すべての人が、ゆるく、でも長く運動をすることが推奨されています。実際、厚生労働省が、週2~3回の筋トレを推奨するなどしています。

運動を好きになる人を増やすための今回のイベントは、経済的な意義もあると考えています。

堤キャスター:
経済的な意義とは?

エコノミスト・崔真淑さん:
実は、政府は経営者に対して、企業経営を通して従業員の健康を推進する健康経営を行うよう推奨しています。

健康経営とは、従業員の健康診断率をアップさせるだけでなく、メンタルヘルス、運動推奨なども該当します。実際、経済学でもエビデンスが蓄積されており、メンタルヘルス休職者を減らすことは、企業の利益率の向上がもたらされていると報告されています。

アメリカ企業の調査では、1ドルの健康経営への投資や、従業員の運動推奨は、3ドルの投資リターンを生み出すという報告もあります。運動を通して、従業員の健康増進をはかり、さらには企業価値を向上させることができると報告されているわけなんです。ですので、こうしたゆるいスポーツが企業にも浸透したらより面白くなるのではないかと感じました。

堤キャスター:
こうした取り組みが広がっていくといいですね。

エコノミスト・崔真淑さん:
健康経営に熱心なのは、余裕のある大企業が中心、そんな印象を持つ方もいるかもしれません。しかし実際にはそんなことはなく、経済産業省は、健康経営を行う企業を表彰しているが、中小規模の法人も多数表彰されています。

例えば、社員全員で歩数チャレンジを行い、従業員の睡眠の質に貢献したり、結果的に医療保険のコスト削減になったとの報告もあります。小さなことから始める取り組みとしても、今回のことは示唆が詰まっていると思います。

堤キャスター:
スポーツは体を動かすだけではなく、コミュニケーションのきっかけにもなります。こういったゆるさを活かして、誰もが楽しめるものに変えていくという発想は大切なものなのかもしれませんね。
(「Live News α」5月13日放送分より)

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