伊藤環境相と水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が発言者のマイクの音を絞った問題で、当時、同席していた木村熊本県知事が会見で「非常に残念だった」と述べた。
その上で「発言者の3分ルールは撤廃すべき」として、今後の運用について見直すべきとの考え方を示した。
「日ごろの思いが国に届いてない」
この問題は、5月1日、水俣市で開かれた伊藤環境相と水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が発言時間の「3分」を超えた団体側のマイクの音を絞って、発言を制止したものだ。
この記事の画像(11枚)木村敬熊本県知事:
伊藤環境相はすごく真剣に聞いていたと思う。ああいう事務方の不手際でせっかくの意見交換、大臣が真剣に聞いてもらったのが台無しになったのは非常に残念です
5月10日の定例会見で木村熊本県知事は、懇談の終了直後に環境省の幹部に対し、日程の組み方や懇談の進め方について「このやり方はダメだ」と苦言を呈したと説明した。
今後の運用について木村知事は「(発言者の時間について)3分は撤廃すべきだと思う。3分は短すぎます。無制限というのはどうか分からないが、ただ言いたいだけ言ってもらえればいいと思う」と述べた上で、今回の問題について「日ごろの思いが国に届いていないことが背景にある」と指摘。
国と県が被害者にしっかりと向き合っていけるよう、今後「自分の思いを大臣に直接伝えたい」と述べた。
環境省に水俣病対策担当の人員増強
また、この問題をめぐって環境省は、5月9日に司会を担当した職員が使用していた台本を公表。発言時間の3分が近づいた場合には「3分でマイクオフ」と明記されていた。
また、台本ではマイクをオフにすることを事前に伝えることになっていたが、この箇所を司会が読み飛ばし、団体側には伝わっていなかったということだ。
伊藤信太郎環境相:
水俣病の問題が終わっていない責任は、環境省に多くあると思う。どうしたらもっと救済ができるかすでに職員に指示したところで、しっかりスピード感を持って解決のために進んでいきたい
伊藤環境相は10日朝の閣議後の会見で、水俣病対策担当の審議官を新たに設け、担当部署の人員を増やすとともに、大臣をはじめ副大臣、政務官などが現地を訪問し、懇談の機会を増やす意向を示した。
二次被害 被害者団体に心無い電話も…
一方、一連の問題で、水俣病被害者団体側に非難するような電話が寄せられていることが分かった。
団体によると、伊藤大臣が謝罪に訪れた8日以降、「3分の持ち時間を守らない、あなたたちが悪い」などと非難するような電話が数件、寄せられたということだ。
また、別の団体には、団体側を応援したり擁護したりする肯定的な意見も、電話やメールで多く寄せられているという。
伊藤環境相は、非難の声が寄せられていることについて「そのようなことが起きたことは誠に申し訳ないことで、深く反省している」と述べた上で、「二次被害の防止など被害者に悪影響が出ないように対策を進める」と話した。
また、木村知事も「差別や偏見をなくすための意識啓発を徹底していく」とした。
(テレビ熊本)