まだ新年度を迎えて1カ月もたっていないが、大阪市では、退職を代行するサービスに依頼が殺到している。サービスの利用者には新入社員も。若者が早期退職を選ぶ理由とは。

【動画】新入社員「続々退職」 退職代行が「大バズリ」 前年2倍以上の依頼殺到中 「配属ガチャ」原因も

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大阪市のオフィスの一角で電話をかける男性。

その内容は…。
「お世話になります。退職代行サービス“やめたらええねん”の内藤と申します。貴社社員の●●様の退職通知の件で、連絡させていただいております。総務部の●●様ご在席でしょうか?今回、●●様から有給休暇消化後に、退職希望の旨、お伝えいただいております」

これは、いま人気を集める、「退職代行」と呼ばれるサービスだ。

■費用の相場は2~5万円 「リピート割割引」も

株式会社熱狂スタイル内藤亮代表取締役:貸与物につきましては、会社のスペアキーと、セキュリティカードについては、ご自身のデスクに保管されているとお伺いしております。ご本人さまへの直接の連絡を控える旨、ご協力お願いできればと思います。

何らかの理由で、会社に退職の意思を伝えられない人に代わって、このように電話連絡や事務手続を行う。

2年前にスタートしたこのサービス。依頼の数が前年の2倍以上になっているという。

費用の相場は2万円~5万円。さらに、2回目以降の退職代行で料金が安くなる「リピート割」もある。

株式会社熱狂スタイル内藤亮代表取締役:一番(印象に)残っている依頼は、踏切の前で電話をかけられて、『もう私、退職するか命を落とすか、どっちかにしようと思います』と。そこから電話を対応して、退職通知を実行した事例もあります。

さらに、まだ4月だというのに、新入社員からの退職代行依頼も12件あり、そのうち2件は、4月1日に手続きを行ったということだ。

会社をすぐに辞めてしまう理由とは。2年前、入社して1日で退職した男性(もんてん。さん)に話を聞いた。

もんてん。さん:ハウスメーカーの営業をやろうかと。会社も最初の印象はよくある、『若手を見てくれる』的な触れ込みの。

なかなか就職先が決まらず、焦りもある中で選んだ会社。しかし、入社が近づくと、自分のイメージとずれを感じ始めたという。

もんてん。さん:Zoomとかで新人同士でなんかやるみたいな。ちょっとイケてる系みたいな、元気があればっていう感じでしたね。

(Q.1日で退社したことについて)
もんてん。さん:死なないだけよかったと思ってます。あの状態のまま、あの会社にいたら、よくない方向にいってたような気がする。

■「配属ガチャ」で4人に1人が入社辞退や早期退職を検討

さらに、新入社員の退職には、ある特徴がある。

株式会社熱狂スタイル 内藤亮代表取締役:本来は営業職とか、もっと外に出るような仕事がしたかったが、内勤に配属されてしまって、退職しますという事例はあります。

早期退職の大きな要因と言われているのが、いわゆる「配属ガチャ」。

ハタラクティブ 後藤祐介事業責任者:配属ガチャっていうのは、ガチャガチャで例えられるように、『自分では決めることができない』、配属そのものをあらわす言葉として、最近使われています。

こちらの会社が行った調査では、配属先が希望と異なった場合、4人に1人が入社辞退や早期退職を検討すると回答している。

街で話を聞いてみると…。

(Q.配属ガチャ外れたらどうする?)
10代(専門学校生):外れたら…でも、やめます。自分の人生なんで。

20代:嫌でしかない。辞めますね。すぐ辞めます。営業したいけど事務ってなったら、面白さで言ったら全く面白くないと思うので、1週間もったらいい方じゃないですか。

一方、こちらは40代の男性。

40代:(ギャップ)感じますね。僕らは氷河期だったんで、言われるがままに仕事させてもらった。今はそういう時代ではないと思ってます。
(Q.配属ガチャ当たりでした?)
40代:ハズレでした。今は、くさらずやってよかったなと思います。

■若者の退職を防ぐ取り組み 「入社前に先輩と会話」「最低1年間の全寮制」

「配属ガチャ」を原因とした退職の背景には、就職市場の「売り手優位」の状況がある。

ことしの求人倍率は、前年を上回る1.71倍で、学生が企業を選ぶ傾向が、強まっている。

そんな中、大阪市には若者の退職を防ぐ取り組みを進める、建設会社がある。

もともとは、3年で半分以上の新入社員が退職していたというこの会社では、10年ほど前から方針を大きく転換。

まず、入社する前に、人によっては100時間以上にわたって、先輩社員と会話する機会を設けた。

三和建設採用担当 杉井麻衣さん:実際に働くイメージをもってもらうために、現場の社員にインタビューすることを推奨しています。(会社のネガティブな部分も)言ってもらいます。逆に入社してから、そういう部分に直面するのではなくて、ある程度、厳しい、苦しい環境もあると、理解をしてもらう。

新入社員:働いてない状態だったので、仕事に対しての不安とか(聞いてもらった)。
先輩社員:怖い社員さん誰ですか、とか。
新入社員:ぶっちゃけた話とかは、たまに。

さらに、新入社員の全寮制を導入。最低1年間、衣食住を共に過ごす。一見、集団生活がストレスになるのでは?とも感じるが、全寮制を導入した2年後から、新入社員は、誰1人退職していない。

寮生活についても、入社前にイメージを伝えているというが、最も大事にしているのは、「会話ができる環境づくり」だ。

三和建設 森本尚孝社長:個人主義が進んでいる。失われた絆みたいなものを、もう1度、求める人の心理はあると思う。入社後ギャップは、自分で勝手につくるものだと思っている。辞めたいという気持ちが起きたときに、入社後ギャップを勝手に高めている現状があると思う。(三和建設では)そういうモードには、ならないんじゃないかなと思います。

「配属ガチャ」次第で退職を選ぶ人も増えているこの時代。新入社員との向き合い方にも、変化が起きているようだ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年4月23日放送)

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