記者にも目玉焼きを作ってくれる面白いキャラを発見!
平井:
石破さんとは長いお付き合いになりますが、僕が石破さんを発見したのは2002年。
小泉内閣で初入閣。当時、石破さんは45歳です。
初入閣の翌日は必ずカメラと記者を初入閣の人のところへ出すんですよ。
石破:
議員宿舎にカメラ出したんだ。
覚えてる!
平井:
僕はデスクだったんですが、記者から電話がかかってきて「すごく大変だ」と。「プラモデルがいっぱいある」「奥さんがたまたまいなくて、朝食を作っていて、私(記者)にも目玉焼きを一緒に食べないかと勧めてくれたすごく面白い人がいる」と。
それで取材テープを見たら、これは面白いと。
つまりフォトジェニックというか、当時は「キモカワ」という言葉はなかったが、この人は面白いなと思った。
小泉さんとか、橋龍さん、田中真紀子さん、菅さんとかいますけど、あのあたりの人たちは、テレビの音声・映像でスターになっていった人たち。
ここに一人、もしかしたら見つけたかもしれないと思った。
それでニュースで放送したら、ワイドショーが「使わせてくれ」とやってきた。
これが石破ブームの始まりなんです。
石破:
その前から結構売れてはいたけどね。(笑)
平井:
フォトジェニックに売れたのはこの頃ですよね。(笑)
石破:
そうだね。
それまでは間違ってもフォトジェニックじゃないな。
「なぜ8億円も値引いたのか。それが誰にもわからない」
平井:
さて、まずは、森友問題について伺います。
佐川さんの証人喚問が終わりました。
僕はあれを見ていて、もちろん証言拒否の内容は「むむむ」と思いましたが、一方で、彼の言っていることは理屈が合っていると思うところもありました。
一方で、野党の攻撃があまりにもずさんで、何の隠し玉もなくひたすら喋っているだけ。
しかも分裂しているために、人数も多くて効率も悪い。
勝ったのは佐川さん、負けたのは野党。
安倍さんは勝ったけど、勝ちじゃない。
そんなふうに見えました。
あの証人喚問で今後どのように事態は動いていくと思いますか?
石破:
それは、佐川さんほどの能吏だからね。
論理はそれなりに通っているし、憲法38条によって保障されているところの「何人も自己に不利な供述を強要されない」と憲法に認められた権利だから。
その範囲内ではあんなものでしょう。
ただ、見ている人がどう思ったかです。
「なるほど素晴らしい」と思ったか、「違うだろう、これは」と思ったか。
そういう国民の印象も重要で、乗り切ったからいいことにはならないでしょうね。
平井:
今後、安倍さんはどうすべきなんでしょうか。
石破:
それは私にはわかりません。
平井:
辞めるべきなのか、謝るべきなのか。
石破:
もう謝っているじゃないですか。
「行政の長として、お詫びします」と。
平井:
あるいは、検察、財務省の捜査・調査を待つのか。
石破:
まだ全然わからないのは、なぜ8億値引いたのか。
ごみが埋まっているのが何パーセントといっても、それは写真で見ただけで、全部を実際に調べてみたわけではない。
何であまたある国有財産売り払いで、その一件だけが瑕疵担保責任がつかなかったのかということがわからない。
そして、本質的な内容の変更がないなら、なぜ書き換えたのかということもわからない。
瑕疵担保責任をつけなかったのは何故ですかというのは、佐川理財局長の時に決まったことではないから、彼は答える立場にいなかったんでしょうね。
なぜ8億値引いたのかも、彼が答える立場にはないんでしょうね。
そういうことはこれから明らかになってくることなのだから、あの証人尋問に多くを期待してもそれは無理だ。
野党が分散して質問がずさんだからといっても、彼らが結束して緻密な質問をしたら、国民の思いが晴れたかというと、そんなことはないのではないですか。
これまでの証人喚問で、そういう疑いが晴れたことは一度も見たことがない。
「昭恵夫人が『私はそんなことは一言も言ってない』と語ることに意味がある」
平井:
これに関連して、他社報道ですが、昭恵夫人に対して「やり方はどうあれ、発言がある方が望ましい」とおっしゃいましたね。
その真意は、場合によっては証人喚問もあり得るべしということなんでしょうか?
石破:
証人喚問というのは非常に重いものなので、それは与党の議員があれこれ発言するべきだとは思わない。
総理夫人ですからね。
総理夫人が証人喚問に立つなんて、これまで聞いたことがない。
証人喚問ではなくても、ご夫人は、あちこちでいろいろな発言をなさっているんです。
事実、どういう影響を与えたかどうかはわからない。
わかるわけもない。
ですけど、「『いい土地だから前へ進めてください』などということは、私は一言も言っていません。絶対にあり得ません」と言うだけでずいぶん違いませんか?
何故それが言えないんですか?
平井:
夫である政治家の代理で支持者たちのところへ行くって、政治家の奥さんはやっていますね。
あの件も、本来安倍さんが行けないので、行っているわけですよね。
奥さんはどちらかというと素人だから、どうしても穴があってちょいちょい変なことがある。
そこで奥さんを責めるのはちょっとかわいそうかなと…。
石破:
だれも責めてないですって。
でも、籠池被告が「昭恵夫人から、良い土地なので前へ進めて下さいとのご発言あり」と言ったということが影響を与えたのではないだろうかと人々は思っているわけです。
平井:
でも、相手は詐欺容疑で逮捕された人ですよ。
石破:
だからこそ「私は全くそんなことは言っていません」とご本人が言うことは、すごく意味がありませんか?
平井:
意味はあります。
でも、安倍さんが絶対にそれをしないということはわかっていますよね。
石破:
そうですか?
平井:
だって僕だって、自分が証人喚問に呼ばれたら行きます。
それは喋るのが仕事だから。
だけど、自分の妻がそれをやられたら怒りますよ。
ムキになって。
「独立した人間として、昭恵夫人ご自身がどう判断されるか」
石破:
今、起こっていることは一体何なんだと。
中朝首脳会談が行われ、鉄鋼の関税を巡って日本がこういう扱いを受け、本当に議論しなければならないことは山ほどある。
国会は、早く国政の重大問題に取り組むべきだ。
そこで、野党がつまらないことを言っているからだと言って、国民が納得しますか?
平井:
しませんね。
石破:
しないでしょう。
自民党員は、中朝問題であれ、あるいは貿易摩擦の問題であれ、人口減少にどう立ち向かうかであれ、財政破産をどう防ぐかであれ、そういう議論を本当にしなきゃいかんのですよ。
そのために・・・。
平井:
そのために、昭恵夫人に出ろ、と?
石破:
いや、国会ではないです。
でも、夫人はいろいろなところへ出て、いろいろな発言をされているじゃないですか。
そういう機会に一言頂いたらどうなのだろうと。
平井:
でも、記者会見ってはっきり言って公開裁判ですよね。
僕らみたいな悪い記者がいっぱいいて、中には失礼な質問をしていじめるような奴もいます。
そういうところに自分の妻を出すということはしないんじゃないですか。
石破:
勿論そうでしょう。
だからそれは、どっちが重いのかということです。
平井:
国益のためにね。
石破:
記者会見はそういう場であるということもよく知っていますよ。
そういう目に遭ったことも何度もあります。
ですが、その時に何を言われようと、一番の核心は、「私はそんなこと言っていません」だけでしょう?
世の中の人は、籠池被告が言うことと総理夫人が言うことと、どちらを信じるんですかい?
平井:
それはもちろん総理夫人が言うことを信じるだろうし、そこで国民の”憂さ”が晴れるかもしれないですよね。
石破:
憂さね、憂さ晴らしのためにやっているわけではないけれどね。
平井:
そこが、安倍さんからしてみれば、相手の思うつぼだということなんですかね。
石破:
相手って誰?
平井:
野党の思うつぼ
石破:
そうですか?
野党は、早く出てこいとかなんとか言って、これをずっと引き延ばすほうが、野党にとってはプラスであって、総理夫人が「言っていません」と決然と言うことのほうが、野党にとっては辛くないですか?
平井:
なるほど。
出ますかね?
石破:
わかりません、そんなこと。
それは、我々がああのこうの言うことではない。
総理はどうおっしゃるかよりも、昭恵夫人ご自身氏がどう判断するかでしょう。
独立した人格でいらっしゃるわけですから。
「戦いは、参加すればいいというものだとは思っていない」
平井:
最後に、石破さんは9月の総裁選にはおそらくお出になるでしょうが、勝算はありますか?
石破:
自分の選挙の時に手ごたえは?とか、勝算は?と聞かれて、審判を受ける立場の者が、そういうことに言及はしません。
平井:
でも、負ける戦はしないですよね?
石破:
参加すればいいというものだとは、私は思っていません。