コロナ禍で“旅行に対する意識”は変化していた

7月22日に政府の「Go To トラベル」キャンペーンが始まり、県またぎの移動が促進される一方、全国各地で新型コロナウイルスの感染が拡大している。東京では7月31日、 都内の1日の感染者数としては過去最多の463人となった。

旅行に行きたいと思いつつ、感染が怖いと考えている人が多いのが実情ではないだろうか? そしてこのコロナ禍において、私たちの“旅行や宿泊施設に対する意識”はどのように変化しているのか?

熊本県観光協会連絡会議は、コロナ禍においてどのように意識が変化したのかを「新型コロナウイルス感染症 収束後の旅行・観光に関する意識調査」として調べ、その結果を公表した。

調査の対象は、全国の10代から70代の一般消費者。5月31日~6月2日にFacebookを通じて行った。有効回答数は3041で、男性55%、女性45%と男性がやや多い。また、オンライン調査のため、30代~60代の割合が高くなっている。

感染症対策で『ないと嫌だ』と思うものは?

この調査で、「宿泊施設の感染症対策について『ないと嫌だ』と思うもの」(複数回答可)を聞いたところ、最も多かった回答は「個包装・使い捨てのアメニティやスリッパの提供」(52%)。

これに、「お客様を含む来館者の全員マスク着用必須」(48%)、「利用者数の制限」(48%)が続いた。

熊本県観光協会連絡会議
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しかし、感染対策をすることで事業者側としては費用が掛かってしまうことだろう。これを利用料金に上乗せすることはできるのだろうか?

旅館などで「感染対策が徹底された場合の料金について、どう思うか?」を聞いたところ、最も多かったのは「通常と同じであるべき」(44%)。

次に多かったのが「多少(100~500円程度)上乗せされていても良い」(37%)という結果だった。

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旅館のおもてなしで『なくても良い』ものは?

また、旅館における楽しみの一つは、女将や仲居らによる「おもてなし」だと考える人もいることだろう。

これについて「伝統的な旅館のおもてなし対応で、コロナ禍において『なくても良い』と思うもの」と聞いたところ、最も多かったのが「スタッフ一同でのお迎え&お見送り」(70%)という結果になった。

そして、「仲居さんからの部屋でのお茶&おしぼり出しなど」(67%)、「客室までの荷物運び」(64%)が続いた。

熊本県観光協会連絡会議

調査では「いつ頃であれば、旅行に行きたいか」も聞いている。

「今年度、いつ頃に宿泊を含めた旅行をしたいか?」を聞いたところ、「9〜11月」(59%)が最多で、2番目に多かったのが「8月」(43%)という結果だった。

一方で、「今年度は行かない」という回答は1割以上(12%)を占めている。

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コロナ禍における今回の調査結果を、観光の専門家はどのように見ているのか? また、私たち消費者が安全な宿泊先を選ぶためには、宿泊施設のどのような点に注目すればよいのか?

調査の設計に携わった、東海大学観光ビジネス学科の小林寛子教授に話を聞いた。

『ないと嫌だ』の結果をどう見る?

――『ないと嫌だ』と思うものを聞いた結果からどのようなことを感じる?

最も回答数の多かったものが「個包装・使い捨てのアメニティやスリッパの提供」というのは、少し意外でしたが、やはり、使い回しのものに対する感染リスクへの不安の表れではないかと思われます。

さらに、「利用者数の制限」や「スタッフ、お客様のマスク着用必須」など、基本的な感染症対策を望んでいる人は多く、全体的にかなり意識が高い。部屋に空気清浄機の設置を希望している回答も、かなりの数ありました。

加えて、「感染発生時のマニュアルの公開」など、想定されるリスクに対してのマネジメントがどれほど出来ているのか、その確認を利用者も求めていることが伺えます。


――感染対策が徹底された場合の料金について。この結果から、どのような印象を受けた?

事業者は一刻も早く事業を再開して収入を得ることが急務だが、同時に感染症対策を行うことも、お客様の受け入れには必須条件となっています。

そのために人数制限をしたり、対策にかかる経費を考えると、単価を上げない限り、採算は取れない状況だと考えられます。

それに対して、割引を期待しているお客様は1割程度のみ。通常と同じ料金あるいは多少上乗せしても許容範囲との反応です。

客が感染症対策の徹底を最優先に望む表れあり、それに対しては多少の料金アップはやむなしということでしょう。

今後、国や市町村の支援策も上手に活用し、安売りをせず、営業再開することが望まれます。

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『なくても良い』の結果から感じたこと

――旅館のおもてなし対応で『なくても良い』と思うものを聞いた結果から、どのようなことを感じた?

「三密」の回避のため、スタッフの削減やサービスの工夫が必要な中、利用者にとって、伝統的な旅館のおもてなしに『なくても良い』と思われるものを具体的に聞いてみましたが、非常に興味深い結果となっています。

「仲居さんによるお茶やおしぼりの提供」「荷物運び」「スタッフ一同でのお迎えやお見送り」など、どこの老舗旅館でもこれまで当たり前に見られていた光景ではありますが、これからはそれがなくても、コロナ対策として、むしろポジティブに捉えられると思われます。

おもてなしに対しての考え方は時代と共に変わってきており、お客様のニーズも変容しています。

そんな今だからこそ、宿泊施設における、おもてなしの意味やスタッフの配置、経費のかけ方の優先順位などを再考する、よいきっかけではないでしょうか。


――今年度の旅行の時期は「9~11月」という回答が最多。この結果はどのように受け止めた?

今年度は長期休業や休校などで夏休みが短くなることが予想されます。また、猛暑の予想もあって、夏よりも秋頃に旅を考える人が一番多い、という結果になりました。

「今年度は行かない」、もしくは「当分は控える」人も1割程度に留まっており、社会状況の変化によって、旅行に前向きな考え方の人も増えてきているのかもしれません。

安全な宿泊先を選ぶためのポイント

――消費者が安全な宿泊先を選ぶためには、どのような点に注目すればよい?

観光事業者側も、既に消費者が感染対策をしているかどうかに敏感になっていることは承知しておりますので、事業者のHPなどを通じて、感染対策の公表をしているところがほとんどです。

そちらを事前にチェックする、また口コミサイトなどには実際にお客様がご覧になった現地の状況などの書き込みもありますので、参考にしてみては、と思います。

――コロナ禍で宿泊施設が消費者に選ばれるためには、どのようなことが必要?

感染対策は必須条件になっています。

もちろん、スタッフの感染対策、施設内の感染対策もですが、お客様同士の感染のリスクを減らすために、チェックインやチェックアウトの混雑を避ける、3密を避ける食事のとり方、大浴場などの利用の仕方など、具体的な対策をしていることをしっかり公表すること。

さらに、追跡システムなど、万が一の感染発症に対して、どのようなリスクマネジメントがされているのか、地域の医療機関とどのような連携をして感染対策を行っているか、こういった事柄の公表も重要だと思います。

感染対策は一つの宿泊施設だけで完結するものではありませんので、地域としてどのように取り組むのか、それは民間事業者と医療機関、自治体などが協力することが求められると思います。

それがしっかりできている地域、そしてその情報公開が適切に行われている地域が選ばれる地域になるのだと思います。

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「Go Toトラベル」に思うこと

――「Go Toトラベル」キャンペーンについてはどう思う?

新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けている観光事業者を救済するための支援策だったにもかかわらず、具体的な導入方法、活用方法の周知徹底がされないままの見切り発車になってしまったことは、大変、残念だったと思います。

急きょ、東京外しがあったことも、感染数の拡大によって致し方なかったかもしれませんが、結局、またもや大打撃を受けたのは観光事業者でした。

支援策の導入に関しては、もっと慎重な話し合いが必要だったと思いますし、導入のタイミングについても、感染拡大状況に合わせた具体的な指針が必要だったと思います。

地域によって事情は大きく変わりますので、地域にあったタイミングで、より効果的な支援策を展開する方法もあったのではないでしょうか。


今回の調査で明らかになった、消費者の“旅行に対する意識”の変化。

小林教授は「コロナによって観光のあり方は大きく変容する。それを前提にコロナ前に戻るのではなく、アフターコロナの新しい観光のあり方を考えるいい機会であると言える」という分析もしており、コロナをきっかけに旅行のあり方も変わっていくことだろう。

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