「生徒間の貧富の差が明確にならにないように」制服を採用
トルコの制服は公立・私立の学校、そして宗教学校で大きく異なる。
そもそもトルコの制服は、トルコ共和国初期の1930年代に 「 生徒間の貧富の差が明確にならないように」という理由で採用され、「 黒い割烹着と白い襟に、黒い靴」と定められたのが始まりだった。
そしてこの“貧困を覆い隠すための制服”は1990年代まで使用されていた。

「黒い制服は精神的悪影響を与える」保護者からの意見で色変更
しかし1990年頃には、 保護者や教師らから「黒い制服は小学生たちに精神的悪影響を与えるので変えてほしい」という意見が出たことで、制服の色が黒から、現在も使われているターコイズブルーの制服に変更されたという。
このターコイズブルーの制服は主に公立小学校で使用されており、2012年に制服着用の義務が撤廃され自由な服装が認められたものの、地方の公立小学校では今もこのターコイズブルーの制服を使用している学校が多い。
私立校では学校ロゴを入れることでイメージ統一

一方、私立小学校では元々自由に制服を設定できたため、各校オリジナルの制服を用いている。
典型的な制服は学校のロゴが入ったポロシャツやパーカー、ワンピースなどが多い。
服の形よりも、それぞれの服に学校の統一ロゴをつけて揃えている。
また女子生徒はスカート指定ではなく、ズボン着用も可能。
私立の学校の制服は自由度が高く、カジュアルな服も多く採用されている。
イスラム教の学校の制服は戒律を取り入れる

そして3つ目はイスラム教の宗教学校の制服。
トルコ人の大多数はイスラム教徒。
ただ個人によって信仰心の程度に差があり、イスラム教徒でも酒を飲んだり、毎日お祈りに行かなかったり、イスラム教の中でもかなり緩い生活を送っているトルコ人も多い。
そんな中でも、信仰心の高い家庭のために、しっかりとイスラム教を学べる宗教学校がトルコの各県に設置されている。
この宗教学校は「イマーム・ハティップ」と呼ばれ、特に女子生徒はイスラム教で、女性が身に着ける服装を制服として取り入れている。
男子生徒の制服は公立の学校と変わらないが、女性生徒はスカーフをかぶり、長袖服にひざ下のロングスカートを着用。
「イマーム・ハティップ」には小学校はなく、入学できるのは中学校(10歳~14歳)から。
イスラム教では一人前の女性になると、肌や容姿を家族以外の他人の目から隠す戒律があり、いわゆる女子生徒が女性らしく成長する時期から、イスラム教の教えをより忠実に守るため、服装の規定についても制服に取り入れている。
実はトルコでは、2012年以降制服を着る義務はなくなったのだが、それでもトルコでは多くの学校で制服を採用している。
同じ服を着て価値観を共有する制服文化はサッカーシーンでも
制服以外でも、ある同じ服を着て集まるトルコ人を見かける機会がある。
それはサッカーだ。
トルコではサッカーが圧倒的な人気スポーツで、特にイスタンブールでは人気の3チームのユニフォームを着た大勢のファンたちが、試合があるたびに街中に溢れ返る。
日本代表の長友佑都選手が所属するガラタサライ、チャンピオンズリーグにも出場したベシクタシュ、イスタンブールのアジア側の名門フェネルバフチェ。
この3チームが毎年優勝争いをすることもあり、それぞれのチームに多くの熱狂的なファンがいることで知られている。
イスタンブールダービーになると、それぞれのホームタウンには応援するチームのユニフォームを着たファンたちで埋め尽くされて、激しく盛り上がる。
“同じ服を来て価値観を共有する”制服文化は、こうしたサッカーファンの一体感を作り上げる部分にも影響を与えているのかもしれない。
【執筆:イスタンブール支局長 内橋徹】