長時間労働の上限規制が人手不足が深刻な物流業界にも適用され、運べる荷物の量や運転手の収入が減ってしまうのではないかという懸念に対し、労働生産性を高めることで残業を減らしつつ給与をアップし、人材確保にも繋げていこうと新たな取り組みを進める物流企業を取材した。

物流業界にも長時間労働の上限規制

2024年で創業60年を迎えた琉球通運。

沖縄県内各地への配送業務に加え、引っ越しやオフィスの移転などさまざまなモノを運び、県民生活を支えてきた。

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琉球通運の喜納秀智社長は「365日24時間、お客さんのニーズに応えるために、輸送や倉庫の荷分け作業などどうしても労働時間が長い業種」だと話す。

そんな物流業界にも、2024年4月から長時間労働の上限規制が適用されることになった。

喜納社長は、「2024年問題でドライバー不足、働き手が来ない、来ないけど残業時間は規制しなさいというギャップがある」と話す。

人手不足対策なしだと2030年には23パーセントが荷物運べず

野村総合研究所の調査では、残業規制の強化に伴う人手不足に対し対策を講じなければ、沖縄県内では2025年、荷物全体の17パーセント、2030年には23パーセントが運べなくなるとされている。

残業規制をクリアしつつ人手不足を解消するためには、業務の効率化とドライバーの待遇改善が急務となるなか、琉球通運が新たな取り組みを進めている。その一つがAIの活用だ。

琉球通運 営業本部 藤﨑圭介 部長:
いま、自動配車しています。実際の計算時間が大体5秒ぐらいで、データをもとにAIが配車計画を立てます

1024キロのルートを120キロ短縮

人工知能・AIの導入により、これまで人の手で行ってきた配送計画やルートの選定を効率化させた。

実証的にAI配車を導入したトラック14台の青果チームでは、合計で1024キロのルートを120キロ、11.7パーセント短縮することに成功した。

これにより、ドライバーの労働時間も1時間短くすることができた。

琉球通運 運輸事業部 長嶺良史さん:
この時間は3業者いたけど、導入によって到着が少し早くなり、他の業者より先に着けるようになりました。店舗の人が喜んでくれると、自分たちも嬉しいです

営業本部の藤﨑圭介部長は、「AI配車を使い生産性を上げることによって、ドライバーの待遇も向上させて、2024年問題とドライバー不足の問題を解決したい」と今後の目標について語る。

ドライバー向けの教育アプリ”トラッククエスト”

取引先があっての物流業だが、積み荷や配送の合間にどうしても待ち時間が発生する。

車内で待機中のドライバー。
スマートフォンでゲームでもしているのかと思いきや違うようだ。

労務を管理する総務部長に話を聞いてみると…

琉球通運 総務部 宮良永秀 部長:
弊社で取り組んでいるのが、こちら、トラッククエストになります

冒険ゲームを思わせるこのソフトはドライバー向けに開発されたものだと話す。

琉球通運 総務部 宮良永秀 部長:
トラックドライバーには年間で教育しないといけない12項目というものがございまして、当社のグループ会社に開発を依頼してできた、ドライバー向けの教育アプリとなっています

これまでは毎月1回、配送業務終了後にドライバーを会議室に集め、法定講習を行ってきたが、発生する超勤は150人の合計で年間1800時間にも及んでいた。

用語説明

法定12項目:国土交通省が定める、安全確保や健康管理など12の指導項目

現在は各ドライバーに貸与されたスマートフォンを使って、空き時間に取り組むことができるようになったことで、ドライバーの拘束時間を減らすことに成功した。

琉球通運 運輸事業部 嘉手納司さん:
納品が終わった後に休憩時間ではないけど、空いている時間があります。手元でさらっと見ることができるから、その分勉強になります。自分のタイミングで勉強できるのが一番いいですね

目指すのは労働時間40パーセント削減

トラッククエスト(クエスト=冒険)という名前の通り、一つひとつの課題をクリアしながらドライバーとして必要な知識を定着することができる。

琉球通運 総務部 宮良永秀 部長:
あまり堅苦しくなく入りやすい、ゲームチックなところも交えながら安全面も含めて一緒になって考えて、少しでも働いているドライバーの負担が軽減できる形で行っていきたいと考えています

これらの取り組みによって琉球通運が目指すのは、労働時間の40パーセント削減。

労働生産性を高めることで、残業をしなくても賃金がアップする好循環を実現し、新たな人材の確保にもつなげたい考えだ。

琉球通運の喜納社長は、「物流業はエッセンシャルワーカーなので、人が生きている以上は、物は無くならない。我々はもっともっと若い人たちを取り入れて、働きやすい職場環境、良い会社にしていきたい」と語る。

食料品の輸送など私たちの暮らしに欠かせない物流業界。

働き方改革の実施後も安心・安全に荷物を届けるための取り組みが進められている。

取材後記:

AI配送にはさまざまなメリットがある。

データに基づいた配送はベテランの経験に依存しないため、若手や女性ドライバーの参入に繋がり、人手不足の解消が期待される。

また、長時間労働が続いているドライバーは、長距離の配送ルートから自動で除外するなど、労務管理上のメリットもある。

こうしたDXやAIを活用した事例が業界を問わず広がり、労働生産性の向上などに繋がることが期待される。

(沖縄テレビ)

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