身体を曲げられない、目が見えにくいなどの理由から「足の爪」が切れない高齢者は多いという。長年放置した爪は厚くなってしまい、骨折などのケガにつながる恐れも。
健康的な生活のためになくてはならない爪のケアを在宅で受けられるようにしようと、新たなサービスが宮城県内で始まっている。

リスクは2倍以上…爪が生活に影響も

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この写真は、およそ2年切っていなかった高齢者の足の爪だ。爪が伸びて指を覆ってしまっている。このような爪は、家庭用の爪切りでは切ることができない。
仙台市宮城野区にある皮膚科医院「小山皮フ科クリニック」の小山純医師は、こうした爪は生活に大きな支障をきたすという。
爪が厚くなってくると、爪の下に走っている神経が、少し押されただけで痛みを感じるようになる。元々筋力が弱っていて動くことがままならない状態で痛みを感じれば、転倒する、骨折するというリスクも。爪が厚くなると2.2倍ほどリスクが高くなるとも言われている。

潜在的な患者も多数

小山皮フ科クリニック 小山純医師
小山皮フ科クリニック 小山純医師

長年放置して厚くなり、自分自身で切るのが難しくなった爪は、皮膚科などの医療機関で切ってもらうことができる。しかし、高齢者は受診自体が難しいという。
小山医師は「年齢的な部分で家族が忙しくなると受診がままならない。股関節や膝関節、足の痛みなどがあると、なかなか受診したがらない」と話す。
潜在的な患者はかなりいるというが、そこに対してアプローチができていない現状があるという。

高齢者施設や個人宅へ「訪問爪ケア」ネイリストの挑戦

爪ケアをする小磯さん
爪ケアをする小磯さん

こうした現状を解決しようと、「訪問型の爪のケアサービス」を始めた女性がいる。
宮城県名取市でネイルサロンを営む小磯麻有さん(42)。ネイリストとして15年以上のキャリアがある。
2023年11月に、専用の器具で爪を削りきれいに整える、訪問型の爪ケアサービスを始め、個人宅や高齢者施設へ出向いて施術している。
きっかけは、高齢者施設で福祉ネイルをしている時だった。「足の爪はやらないの?」と以前から聞かれていたという小磯さん。偶然、施設利用者の爪を見せてもらった際、これまでに見たことが無いような状態になっている爪に驚いた。

爪切りは「医療行為」 連携シートで“解決”

困っていることがわかったら、爪のプロとしては役に立ちたい。そう決意した小磯さんに立ちはだかったのが医師法の壁だった。爪切りは医療行為にあたるのだ。
経済産業省の「グレーゾーン解消制度」を利用し、医師法に違反しない事業の進め方を確認。2023年9月、医師に爪切りしてよいかどうかを事前に判断してもらう「爪ケア連携シート」を使うことで、法律に違反しないという回答を、管轄する厚生労働省から得た。
「医療者や介護事業者とも連携し、お互いが他職種連携というところを目指しながら、1人1人のサポートができたら。」と小磯さんは言う。

「自分で爪を切れない」高齢者の自宅で訪問爪ケア

取材当日、小磯さんは宮城県名取市に住む82歳の男性の自宅を訪問し爪を整えた。
小磯さんの経験上、身体を曲げられなかったり目が見えにくかったりして、足の爪が切れない高齢者は多いという。男性の家族もどうすれば良いか困っていたそうだ。
「この頃この人歩けないんだよね。体力が落ちた。自分で(爪を)切れなくてさ。だけど、やっぱり看護師さんもなかなか難しいんだよね。だから助かります。」(男性の妻)

爪から生まれる健康を伝えたい

ネイリスト 小磯麻有さん
ネイリスト 小磯麻有さん

爪と向き合う仕事を続けてきた、小磯さんだからこそ感じた爪ケアの大切さと難しさ。小磯さんは訪問型のサービスを通じて、これからも爪の大切さを伝えていきたいと語る。
「爪があるから歩くことができるし、物をつかめることができるっていう、本当に大切な役割を担っているところなので。爪からも健康が生まれるんだよっていうことを伝えていきたい。」(ネイリスト・小磯麻有さん)

(仙台放送)

仙台放送
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