法律上「モノ」として扱われることが多い「動物」だが、判決は「かけがえのない家族の一員」と指摘した。
【動画】ペットは「家族の一員」踏み込んだ判断 不必要な手術して死なせた動物病院に損害賠償を命じる
ペットに不必要な手術を行い、死なせたとして、京都府の動物病院に、損害賠償を命じる判決が言い渡された。

飼い主 紀良明さん:子どもがいないので、抱っこするときとか、遊んでいるときは、心豊かな気分になって楽しかった。
5日、会見を開いた奈良市に住む紀良明さん夫妻は、家族として大切に飼っていた、メスのウサギ「しろ」(当時3歳)を必要のない手術で失った。
■「自分の子どもだったら今すぐ手術をする」と「手術をしなければ、見殺しするような感覚に」

2021年、しろがエサを食べられなくなったことなどから、2人は小動物専門の診療科がある、京都府精華町の動物病院を訪れ、しろに点滴治療をしてもらった。
しかし、後日、男性獣医師から「腸に異物が見つかった」として、手術を受けるよう説得を受けた。
男性獣医師:何もしなかったら、きょうの夕方には、腸管が破裂して死んでしまうかもしれない。自分の子どもだったら今すぐ手術をする。
その際、手術の内容や危険性についての説明がなく、2人は抵抗したが、獣医師が「死んでしまうかもしれない」と強調したことから手術を受けさせることに…。
紀さんの妻:手術に誘導される過程で、手術をしなければ、しろを見殺しするような感覚にまでさせられた。

その手術中にしろは心肺停止になり、術後、2人が再会した時には死んでいた。
他の動物病院で「点滴治療で治る」と言われたほか、獣医師にはこの手術の経験が一切なかったことなどが判明。
病院も手術の判断などに問題があったことを認めなかったため、約600万円の慰謝料を求める民事訴訟を起こしたのだ。
■京都地裁「かけがえのない家族の一員」と踏み込んだ判断

そして先週、京都地裁は、「手術の危険性を説明する義務を怠った」として、獣医師の過失を認定し「手術をしていなければ、しろが死ぬことはなかったと認められる」と指摘。
さらに「原告らにとってしろはかけがえのない家族の一員であり、今でも深い悲しみを背負い続けている」などとして、2人に合わせて66万円を支払うよう病院側に命じた。

飼い主 紀良明さん:大きくなっていくのが楽しみだったし、帰宅すると必ず出てきてくれて、子ども同然でした。
紀さんの妻:動物病院は命を守る医療機関だということを、心に刻んでほしいと思います。
判決を受け、獣医師は関西テレビの取材に対し「私個人では答えられません」と話した。

損害賠償が請求額の10分の1だったことについて、関西テレビの神崎博報道デスクは「裁判の世界ではペットはモノ扱いで、その時の市場価格で評価されることが多い。今回の判決では、『かけがえのない家族』『なみなみでない愛情を注ぎ大切に育ててきた』と書かれている。裁判所としてはかなり踏み込んで額の上積みをしている」と話した。
これから賠償額についての議論がされるのだろうか?
関西テレビ 神崎博報道デスク:原告がどう思うか。(今回の判決は)これでも裁判所は踏み込んでいると、一般的には思えますが、原告にとって、これでは足りないということもあると思うので、今後原告がどのように判断されるかだと思います。
このような医療ミスで大切な命が失われることは避けなくてはならない。
(関西テレビ「newsランナー」2024年4月5日放送)