咳や鼻水が止まらないー。単なる風邪だと軽くみてはいけない。風邪ではなく「はしか(麻疹)」かもしれない。いま海外で流行している「はしか」が、今後国内で広まることが懸念されている。強い感染力を持つ「はしか」にどう対処すればよいのか、感染症の専門家に聞いた。
海外で流行 感染者数が30倍の地域も
新型コロナウイルスの水際対策が緩和され海外との交流が増える中、2024年2月、海外から日本に帰国した人がはしかに感染していたことが分かった。はしかの感染者数は日本国内で2023年は28人、2024年に入ってからは3月末までにすでに21人と、前の年の感染者数に迫りつつあり、今後も増える可能性もある。
その背景には「海外のはしか流行」があるとみられている。
厚生労働省によると、2024年に入り海外でのはしかの流行が報告され、特にヨーロッパ地域での症例報告数は前年度の30倍以上に急増し、入院を要する重症例や死亡例も確認されている。国は、国内での感染拡大を懸念して各自治体に注意喚起を行っている。
感染力はインフルエンザの10倍
では具体的には、はしかにどのように気を付ければよいのか。
2024年2月以降、大阪や東京、奈良などで感染が相次いで確認された「はしか」。
![提供:国立感染症研究所](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/9/700mw/img_59be7dd31017ab588cd5d60ee8d57acb57817.jpg)
風邪のような症状から始まり、その後、高熱や発疹が出るのが特徴で、重症化すると脳炎などを発症したり、1000人に1人が死亡するおそれがあるといわれている。
![提供:国立感染症研究所](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/700mw/img_63b00ed97999af19d5204b29e5da625c53886.jpg)
感染症の専門家である長崎大学病院の泉川公一教授は、感染力の強さを強調する。
長崎大学病院 泉川公一教授:
はしかのウイルスはものすごく感染力が強くて空気感染する。空気感染というのは密閉されたような部屋の中であれば、一定時間、同じ時間一緒にいて防護が特段なければみんなに感染してしまうおそれがある
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飛行機や新幹線といった乗り物やライブハウス、部屋の中など閉ざされた空間では、空気感染のリスクが高まるという。
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長崎大学病院 泉川公一教授:
密閉された空間かどうかはおいといて、1人感染した人がいて、そこから次の人に何人ぐらい感染するのかというと、12~18人が感染するぐらいの強さがある。インフルエンザよりも10倍ぐらい多い
はしかの感染経路は「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」で、ヒトからヒトへと感染が伝播し、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症すると言われている。感染すると、約10日の潜伏期間を経て、高熱や発疹などの症状が現れる。
さらにその他の合併症として、10万人に1人程度と割合は高くないものの、学童期に「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」と呼ばれる中枢神経疾患を発症することもある。「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」は学業成績低下、記憶力の低下、感情不安定などの症状が現れる。
予防には「ワクチン」接種を
空気感染をするはしかは手洗いやマスクの装着で感染を防ぐことはできない。特効薬もなく、熱を下げるなどの対処療法しかない。予防のカギとなるのが「ワクチン」だ。
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ワクチンは定期接種の場合は、1歳になったときと、小学校入学前のあわせて2回接種することが推奨されている。費用は、定期接種の対象年齢であれば国と自治体が全額負担する。定期接種の対象年齢ではない場合も、費用は自己負担となるが予防接種を受けることはできる。
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2000年4月以降に生まれた23歳以下の人は2回、1972年10月~2000年4月1日までに生まれた23歳~51歳の人は1回接種している人が多いものの、それ以前に生まれた51歳以上の人はワクチンを1回も接種していない可能性がある。
ワクチンを2回接種した人が95パーセントを超えると、集団免疫を獲得し、感染拡大を抑えることができるといわれている。厚生労働省によると、2022年度のワクチン接種率は、1回接種した人は95.4パーセント、2回接種した人は92.4パーセントだった。さらに3道県では、2回接種した人が90パーセントを下回っていた。(※県名は明らかにされていないとのこと)
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長崎大学病院 泉川公一教授:
2回ワクチンを接種されている、あるいは以前かかったことがある方はあんまり心配はいらない。今、世の中にいる皆さんの中ではしかにかかって一番問題になる方々というのはワクチンを打っていない子供たち
2024年1月、一部のワクチンが自主回収となったことから、現在、はしかと風疹の混合ワクチンしかなく、在庫が少なくなっている。
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泉川教授は「新型コロナのときのように全く免疫がなくて、何千、何万というような単位で感染が広がりパニックになるようなことはおそらくないと思う。しかし、ワクチンを打っていない、あるいは1回しか打っていない子供たちはり患してしまう可能性がある。1歳から2歳の間に打つと決まっているお子さんたちへのワクチン供給が足りなくなるというのが非常に問題となる。ワクチンを1回も打っていない人はワクチン接種を」と呼びかけている。ワクチンを打ったかどうかわからない人は母子手帳などで確認し、限られたワクチンを有効に使うことがいま求められる対策だ。接種歴や過去に感染したかどうかが分からない場合は、医療機関に相談して血液検査で抗体価を調べ、追加接種の必要があるか確認することもできる。
泉川教授は「はしかにかかったかもしれないと思ったら、感染拡大を防ぐためにも、医療機関を受診する前にその旨を電話で伝え、指示をあおいでほしい」と呼びかけている。
(テレビ長崎)