日本で初めて「水素とバイオ燃料」を動力とする観光船が10日に運航開始する。このハイブリッド技術は、CO2排出削減に効果的で、船舶でのクリーンエネルギー利用の先駆けとなる。専門家は、環境への貢献と乗り心地の向上をもたらすとした上で、今後、船舶以外の様々な動力源に応用される展開にも期待を寄せた。

日本初の水素・バイオ燃料観光船

水素とバイオ燃料で動く日本初の観光船が、北九州市の港でお披露目された。10日から運行が始まる。

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北九州市の小倉港でお披露目された観光船「HANARIA(ハナリア)」は、水素燃料電池を装備し、水素とバイオ燃料で動く、日本で初めての商用運行船で全長は33メートル、定員は100人となっている。

北九州市では、3月26日から洋上風力発電施設まで、実際に人を乗せて運行する実証実験が行われ、問題ないことが確認された。

トヨタ自動車・濱村芳彦さん:
(実験が成功して)船の分野で水素を取り上げられると、本社にいるスタッフあるいは東富士研究所にいるスタッフは、すごく喜びが爆発していると思う。

ハナリアは4月10日から、小倉港と門司港を出発し、夜景などをめぐる4つのルートを運行する予定だ。

両動力源ともCO2排出削減に効果

早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
船舶での地球に優しいエネルギーの活用。長内さんは、どうご覧になりますか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
今回、「燃料電池」と「バイオディーゼル」のハイブリッドということですが、「燃料電池」とは、水素を酸素と反応させて電気を発生させるエネルギー源で、炭素が含まれないため、CO2を排出しないクリーンなエネルギー。

一方の「バイオディーゼル」は、植物油や家庭の廃油などを燃料にディーゼルエンジンを動かす仕組み。エンジン燃焼時に排出されるCO2は、材料の植物油が植物として成長する過程で、光合成によってCO2を吸収しているので相殺されることになり、こちらもCO2排出削減に効果があるとされています。

堤キャスター:
ハイブリッドというと、まず自動車が思い浮かびますが、船舶でも活用できるんですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
2つの異なる動力源で推進力を得るハイブリッド技術は“日本のお家芸”で、ハイブリッド自動車を通して積み重ねてきた、世界に誇れる技術が生かされてきたと思います。

さらに今回、船舶でのハイブリッド、異なる動力の組み合わせが行なわれている。

使用されている燃料電池と、バイオディーゼルは、どちらも日本で積極的に開発が進められている環境適応技術です。さらに、振動や騒音、排ガス臭も極めて少ないなど、乗り心地もいいというメリットもあります。

様々な動力源への応用を期待

堤キャスター:
暮らしが、より便利になり、環境にも配慮したエネルギーの活用が広がっていくといいですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
環境に良い技術を開発していくという目標自体は1つですが、そこに至る道のりは、まだまだ、様々なアイデアがあると思われます。

不確実性が高い技術開発だからこそ、色々な技術を探索的に開発することが必要です。燃料電池とバイオディーゼルのハイブリッドの技術も、今回のような船舶だけでなく、様々な動力源に応用されることが期待されます。

堤キャスター:
海は船、陸は車で、クリーンなエネルギーの活用を進めて、日本が世界に貢献できるといいですね。
(「Live News α」4月4日放送分より)

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