斎藤経産相は、次世代半導体の国内開発企業ラピダスに対し、追加で最大5900億円支援することを発表した。
ラピダスは、先端半導体の研究開発と量産化を進め、2027年の量産開始を目指す。
専門家は、この取り組みが日本の半導体産業の復活に貢献する可能性があると指摘する。

ラピダスに5900億円追加支援を発表

斎藤経産相は、次世代半導体の国産化を目指すラピダスに、追加で最大5900億円を支援すると明らかにした。

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斎藤経産相は、ラピダスが開発を進める次世代半導体を、「日本産業全体の競争力のカギを握るキーテクノロジー」と評し、新たに最大5900億円の支援を発表した。

経産省はすでに3300億円の補助を決定しており、あわせて1兆円近い支援になる。

一方、ラピダスはこの追加支援を受け、21日午後4時ごろに記者会見を行い、研究開発や工場建設がスケジュール通りに進捗(しんちょく)していると強調した。

さらに、これまで取り組んできた半導体の回路の微細化に加え、半導体の部品を組み合わせ、完成させる後工程においても、低コスト高性能化を実現する研究を開始すると明らかにした。

ラピダスは2027年をめどに、次世代半導体を量産することを目指すとしている。

「オールジャパン」から国際協力へ

「Live News α」では、経済アナリストの馬渕磨理子(まぶち・まりこ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 半導体復活のための支援、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本経済の競争力の強化、さらに経済安全保障の観点からも、国内で半導体を作れることは、とても重要です。熊本に誘致された台湾のTSMCは、主に自動車などに使われる大きいサイズの半導体を作ります。

一方のラピダスは、AI(人工知能)などに使われる微細化により、コンパクトでありながら、省エネに優れた先端半導体へのチャレンジを行います。

さらに、先端半導体をつくる前工程から、後工程まで一貫生産する体制を目指していて、世界でどこの企業も手がけていない試みを行います。

堤キャスター:
── 馬渕さんは、ラピダスの小池淳義
社長を取材されたことがあるそうですね?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
2023年の暮れに、インタビューさせていただきました。そこで印象深かったのは、“日の丸半導体”、“オールジャパン”にこだわった過去の失敗からの学びとして、「すべて日本だけでやる時代は終わった」という言葉でした。

「2ナノ」という微細化したコンパクトな半導体をラピダスが作れるのか?という声がありますが、「2ナノ」のレシピは、すでにIBMが持っています。そのレシピを使って、ラピダスが量産化することになります。

技術継承・供給強化の最後の機会

堤キャスター:
再び、日本の半導体が、世界で存在感を示せるといいですね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本が半導体産業の世界シェア50%だったころに、半導体の技術者だった方々が、いまラピダスに集まってきています。これが数年遅ければ、半導体の技術者がもう日本にはいなくなっていたかもしれません。

半導体の技術は、そう簡単に培うことはできません。日本にとって、今が半導体製造の技術を受け継ぐ最後の機会であり、供給力のアップを図るギリギリのタイミングなんです。

不景気・デフレ下での需要と供給では、需要を吹かすことに焦点が当たりがちです。しかし、工場の新設・誘致は、圧倒的な供給力のアップ、つまり経済のパイの拡大につながります。

日本は経済への影響が大きい半導体で、供給力のアップに向かっています。デフレからの脱却する今のタイミングと重なっていることに、大きな意味があると思います。

堤キャスター:
資金はもちろん、産業を担う人材の獲得や、育成なども含め、さまざまな角度から先を見据えて行動する必要があるように思います。
(「Live News α」4月2日放送分より)

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