きのう日本赤十字社に就職した天皇皇后両陛下の長女・愛子さま。就職にあたり寄せられた文書から垣間見えたのは、仕事への責任感や「自分の思い」を丁寧に伝えようとされる姿勢、そして「両親のように思いやれる関係が素敵」という愛子さまならではの結婚観でした。

入社から一夜明け、けさも日赤に出勤した愛子さまは就職にあたり、宮内庁を通じて文書で感想を寄せられました。

日本赤十字社に初出社した愛子さま 4月1日
日本赤十字社に初出社した愛子さま 4月1日
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大学卒業後の進路に就職を選択した理由について、「公務以外でも、様々な困難を抱えている方の力になれる仕事ができれば」との思いがあったと明かし、両陛下と共に日赤の活動について理解を深める中で「社会における役割の大きさを実感」し、「社会に直接貢献できる日赤の活動に魅力を感じた」と説明されました。

その上で、「職場の方々に御指導を頂きながら、社会人としての責任感を持って、様々なことを身に付け、なるべく早くお役に立てるようになるよう精進したい」と抱負を綴られました。

日赤職員から能登半島地震について説明を受けられた 2024年3月
日赤職員から能登半島地震について説明を受けられた 2024年3月

一方、本格的に取り組むことになる皇族としての公的な活動については、「仕事との両立には大変な面もあるかもしれません」とした上で、学習院で過ごした18年間に得た「学びも活かしつつ、多様な活動に携わることができれば」「周囲の方々の理解と助けを頂きながら、それぞれのお務めに誠心誠意取り組んでいきたい」と記されました。

学習院での学びも活かしながら公的活動に取り組まれるという
学習院での学びも活かしながら公的活動に取り組まれるという

また、成年にあたっての記者会見で「まだ先のことのように感じられ、今まで意識したことはございません」としていた結婚観についての質問には、「その頃と変わっておりません」「一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的」と綴られました。

両陛下からの具体的なアドバイスは無いとした上で、「両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵だなと感じます」と率直な思いも明かされました。

「両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵」 2023年12月撮影
「両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵」 2023年12月撮影

以前、結婚前の陛下が記者会見で度々質問を受けられていた「心を動かされる出会い」があったかどうかについては、直接の回答は控えた上で、「これまでの出会い全てが心を豊かにしてくれたかけがえのない宝物」と振り返り、「これからも様々な出会いに喜びを感じつつ、一つ一つの出会いを大切にしていきたい」と綴られました。

公務の担い手である皇族数が減っていることについての質問には「以前と比べて少なくなってきていることは承知しております」「制度に関わる事柄につきましては、私から発信することは控えさせていただければ」と回答するにとどめ、「そのような中で、一つ一つのお務めに丁寧に向きあい、天皇皇后両陛下や他の皇族方をお助けしていくことができれば」との思いを示されました。

「心を動かされる出会い」は?

結婚への意識や時期など、答えにくい質問にも丁寧に思いを綴られていました。この1年、リアルなキャンパスライフを経験し、様々な学生と実際に会うという大きな環境の変化がありました。

学習院大学にて 2023年4月
学習院大学にて 2023年4月

先日、三重県を訪問の際、皇族の女性の恋愛について「タブーですか」と質問された場面もあり、ご自身の将来の結婚について、思いを馳せることは当然おありだと思います。

陛下は結婚前、出会いがあったかどうか会見で質問される度に「あったかもしれないし、なかったかもしれない」と柔らかくかわされていました。

皇太子時代何度も結婚について質問されていた 1988年
皇太子時代何度も結婚について質問されていた 1988年

また愛子さまにとっておばにあたる黒田清子さんは、大学卒業時の記者会見で兄の陛下のやりとりを引用し『心動かされる男性との出会い』について「先輩(=陛下)の言葉に従って、そのようなことが『あったかもしれないし、なかったかもしれない』とユーモアを交えて答えていました。

黒田清子さんは“先輩”の言葉を引用してユーモアたっぷりに質問をかわした 1990年
黒田清子さんは“先輩”の言葉を引用してユーモアたっぷりに質問をかわした 1990年

今回、愛子さまは、あえてそのやりとりには触れず、「これまでの出会い全てがかけがえのない宝物」と回答し、「両親のような思いやれる関係性」を築くことができるお相手との出会いがこれまでにあったかどうかは明かされませんでした。

幼い頃から、何事にも集中し、全力で取り組まれるご様子を拝見してきた記者として、今は結婚よりも、皇族としての活動を通して両陛下をお支えすること、早く職場に慣れ、日赤の一員として社会の役に立つこと、この2つを最優先と考えられているのではないかと感じました。

自分の気持ちが伝わるよう一生懸命推敲

3月後半に大学の卒業式、初めてのお一人での地方訪問など様々な行事の準備や本番が続くタイトスケジュールの中、就職にあたる文書回答の作成にも取り組まれていたという愛子さま。

ある側近は、「ご自分のお気持ちが伝わるよう、一生懸命ご自分の言葉で推敲を重ねられた」と話していました。

成年会見では原稿を見ずに答えられた事が話題に 2022年3月
成年会見では原稿を見ずに答えられた事が話題に 2022年3月

成年の記者会見でも、「なるべく具体的に自分の言葉で自分の思いを皆さんに知っていただけるように伝えたいと思って準備してまいりました」と話されていて、会見や文書などを通じて、自分の思いをきちんと伝える機会として、会見や文書に丁寧に向き合われていることが改めて伝わってきました。

陛下「私は就職した経験が無いので」

両陛下と愛子さまは、日々ご家族で色々な話をし、相談されていて、愛子さまは記者会見前には陛下から「お一人お一人の顔を見ながら、目を合わせつつ、自分の伝えようという気持ちを持って話していく」のが「緊張を和らげるコツ」とのアドバイスがあったと明かされていました。

初出勤の朝、「頑張っていってらっしゃい」と送り出された両陛下は、忙しい中で文書の作成に取り組む愛子さまを、相談があればフォローする、という形で温かく見守られたのではないかと思います。

両陛下が愛子さまにアドバイスされることも 2023年8月撮影
両陛下が愛子さまにアドバイスされることも 2023年8月撮影

最近、陛下は「私は就職した経験が無いので」と周囲に話されていたそうです。職場にどうやって慣れていけばよいのか、社会人としての生活については、元外交官として経験がある皇后さまがアドバイスをされていたのかもしれません。

多くの社会人一年生と同じように、愛子さまも新たな環境の中で、緊張や戸惑いを繰り返す日々が続くこととと思います。公務でも、公務以外でも、「困難を抱えている方の力になりたい」という思いで就職された愛子さま。仕事にも公務にも心を尽くし、経験の幅を広げていかれる歩みを、一人の記者としてゆっくり拝見していきたいと思っています。

(執筆:フジテレビ宮内庁クラブキャップ兼解説委員 宮﨑千歳)

宮﨑千歳
宮﨑千歳

天皇皇后両陛下や皇族方が日々取り組まれる様々なご活動をより分かりやすく、現場で感じた交流の温かさもお伝えできるような発信を心がけています。
宮内庁クラブキャップ兼解説委員。1995年フジテレビジョン入社。報道局社会部で警視庁クラブなどを経て、2004年から宮内庁を担当。上皇ご夫妻のサイパン慰霊の旅、両陛下の英エリザベス女王国葬参列などに同行。皇室取材歴20年。2児の母。