「大衆演劇の殿堂」が新型コロナで存続の危機に

80年以上の歴史を誇る福岡・飯塚市の「嘉穂劇場」。「大衆演劇の灯」を灯し続ける昔ながらの芝居小屋だ。

その舞台には、過去に美空ひばりさんや中村勘三郎さんなど数々のスターが立ち、長年にわたり多くのファンたちに愛されてきた。

しかし、そんな「大衆演劇の殿堂」も、新型コロナの影響で「存続の危機」に直面している。
劇場のスタッフは、これまでに経験したことのない事態だと語る。

嘉穂劇場 伊藤真奈美さん:
ここって演じないと小屋が死んでしまうんですよ

嘉穂劇場では、2020年2月ごろから来場者が減り、約1200人分あった秋ごろまでの予約も全てキャンセルに。4月上旬から休館を余儀なくされている。

嘉穂劇場 伊藤真奈美さん:
演じる方たちも、本当に場所がなくて困ってると思うんですよ

地元の舞台製作会社とタッグ

再開のめどが立たない中、「ただ閉めていてもしょうがないと」思いついたのが、無観客を逆手に取った「夢舞台プロジェクト」。タッグを組んだのは、地元の舞台製作会社だった。

音響や照明機材の提供を受けて、演奏やダンスなどの「撮影収録」を望む人たちに舞台を格安で貸し出す取り組み。
通常、嘉穂劇場の貸し出し料は100万円ほどかかることもあるが、期間限定で、わずか10万円で利用できる。

嘉穂劇場 伊藤真奈美さん:
劇場そのものを活かし、そして最高の技術を提供し、演じることができなくなってるパフォーマーの方たちに場を提供するという

たとえ「無観客」であっても、感染対策に抜かりはない。舞台に上がることができるのは、出演者と関係者いずれも最大5人までで、ひとりひとりの体温を測定。
劇場内では、スタッフがこまめに窓を開けて換気をして、収録時間は3時間までに制限している。

無観客でも貴重な表現の場に

6月7日、地元を中心に活動するアマチュアバンドが、「夢舞台プロジェクト」を活用し、インターネット上で「生配信ライブ」を行った。
プロ、アマを問わず歴史ある嘉穂劇場の舞台に立つことができるのが、今回のプロジェクトの醍醐味。

出演者:
最高ですね、本当に。バンド10年やってきて続けてきて良かったなと思ってます。ありがたいですね

映像撮影や録音を目的にした無観客でのパフォーマンス。
それでも新型コロナの影響で発表の機会を失った演者やアーティストたちにとっては、貴重な表現の場となる。

出演者:
こういう感じで外に配信していただけるって、すごいことだと思うので、コロナ明けて、またパフォーマンス見に行きたいなって言ってくれる人が増えたらいいなと思ってます

嘉穂劇場 伊藤真奈美さん:
技術と舞台と演者、この3つがそろってのエンターテイメントですから。コロナウイルスの恐怖が完全に去って、本当に元の状態に戻れば、またここにお客さんがたくさん入って、温かい拍手がわ~と鳴り響く日が戻ってくればと思います

当面、新型コロナとの共存が求められる中、舞台芸術の世界でも「新しい様式」の模索が続いている。

(テレビ西日本)